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ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

食べなくなった高齢の親への対応。低栄養・食欲不振の原因と在宅ケアを訪問看護師が解説

「最近、食が細くなってきた」「体重が落ちている気がする」高齢の親を持つ方から、OURへの相談で最も多い内容のひとつです。食欲不振は「老化だから仕方ない」と見過ごされがちですが、放置すると筋力低下・免疫低下・転倒・肺炎のリスクが高まります。

この記事では、高齢者の食欲不振の原因・低栄養のサインの見分け方・在宅でできる具体的な対応を、宮崎市OUR訪問看護ステーションの看護師・作業療法士の現場経験をもとに解説します。

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高齢者の低栄養とは。食欲不振がなぜ危険なのか

高齢者の低栄養とは、必要なエネルギー・タンパク質・ビタミン・ミネラルが慢性的に不足した状態です。食欲不振はその入口であり、気づかずに放置すると筋肉量の低下(サルコペニア)・免疫低下・皮膚トラブル・認知機能低下へと進行します。

高齢者の体は筋肉の予備が少なく、若い人と比べて短期間の食事量低下でも急速に筋力が失われます。入院中のわずか1週間でほとんど食べられなかった場合、若い人の数週間分に相当する筋肉量が失われることがあります。

また、タンパク質不足は免疫力を低下させ、傷の治りを遅らせます。訪問看護師として在宅療養者を支援する中で、「食欲不振が2〜3か月続いた後に肺炎で入院」という経過をたびたび経験してきました。「食べなくなってきた」というサインを早期に捉えることが、その後の経過を大きく左右します。

低栄養の判断に使われる主な基準

医療・介護の現場では、以下の指標で低栄養を評価します。

指標低栄養の目安
BMI18.5未満(高齢者は20未満で注意)
体重減少率3か月で3%以上、または6か月で5%以上
血液検査(アルブミン)3.5g/dL未満
MNA-SF(簡易栄養評価)11点以下でリスクあり

50kgの方なら、3か月で1.5kg減ったら受診のサインです。体重は毎週同じ条件で測ることを習慣にしてください。


食欲不振の主な原因。疾患・薬・うつ・孤食が複合して食欲を奪う

高齢者の食欲不振は、ひとつの原因だけで起きることは少ない。身体的・精神的・社会的な要因が絡み合って食べる意欲を奪います。「老化だから」と片付ける前に、原因を探ることが大切です。

身体的な原因

  • 口腔トラブル:義歯の不具合・口内炎・歯痛。噛めない・痛いと食べる気力が失われます
  • 消化器症状:便秘・胃もたれ・逆流性食道炎。お腹が苦しいと食欲はわきません
  • 嚥下機能の低下:飲み込みにくさが「食べること=つらいこと」になる
  • 疾患の影響:心不全・腎臓病・COPD・がんは食欲を著しく低下させる
  • 甲状腺機能低下症:見逃されやすいが、食欲不振・倦怠感の原因になりやすい

薬の副作用が原因になることが多い

複数の薬を服用している高齢者では、薬の副作用が食欲不振を引き起こすことがあります。特に注意が必要なのは以下の薬剤です。

  • 抗生物質(吐き気・下痢)
  • 非ステロイド性消炎鎮痛薬・NSAIDs(胃への刺激)
  • ジゴキシン(吐き気・食欲低下)
  • メトホルミン(消化器症状)
  • 一部の降圧薬・抗うつ薬

「新しい薬が増えた頃から食欲が落ちた」という場合は、主治医または訪問看護師に相談してください。自己判断で薬をやめることは危険ですが、医師に副作用の可能性を伝えることは重要です。

精神的・社会的な原因

  • うつ状態:高齢者のうつは「悲しい」より「食べたくない」「何もしたくない」という形で現れやすい
  • 孤食:一人で食べると食事量が落ちることが研究で示されています。誰かと一緒に食べることが最もシンプルな改善策のひとつです
  • 認知機能の低下:「食べたことを忘れる」「調理できなくなる」「食器の使い方がわからなくなる」という問題も起きます
  • 宮崎の夏の暑さ:気温が高い時期は食欲が落ちやすく、知らず知らずに脱水が進んでいるケースも多い

OURのスタッフは訪問のたびに「今日は何を食べましたか」と自然に確認しています。「昨日から何も食べていない」という事実が、その会話で初めて発覚することは珍しくありません。一人暮らしの方は特に、見えないところで食事をとれていないことがあります。


低栄養・食欲不振のサインを家族が確認するチェックリスト

以下の項目で、現在の状況を確認してください。

体重・見た目のサイン

  • 衣服がだぶついてきた、ベルトの穴が変わった
  • 3か月以内に2kg以上体重が落ちた
  • ほおがこけた、腕や足が細くなった
  • 皮膚が乾燥・薄くなり、傷が治りにくくなった

食事・生活のサイン

  • 1日2食以下が2週間以上続いている
  • 食事の量が以前の半分以下になった
  • 「食欲がない」「食べてもおいしくない」を繰り返し言う
  • 食事を自分で準備できなくなってきた
  • ゴミ箱に食品が捨てられていることが増えた

4項目以上当てはまる場合は、かかりつけ医または訪問看護ステーションへの相談を急いでください。

受診時に確認してもらうこと

定期受診の際に「栄養状態を確認したい」と伝えると、アルブミン・総タンパク・ヘモグロビン・コレステロールなどを調べてもらえます。これらの数値が基準を下回っている場合は、医療的な介入が必要な段階です。


在宅でできる食事の工夫。「食べさせる」より「食べたくなる」環境を作る

食欲不振への在宅対応で最も大切なのは、「無理に食べさせない」ことです。強制すると食事そのものへの拒否感が強まります。少量でも食べてもらうための環境・工夫に焦点を当ててください。

少量・高栄養・食べやすい形状に変える

  • 少量で高カロリー:全粥に卵・バター・チーズを加えるだけで栄養密度が上がります。同じ量でとれるカロリーを増やすことが基本です
  • 食べやすい硬さ:硬い食品は柔らかく調理する(煮魚・蒸し野菜・クリームスープ)
  • 1回量を減らして回数を増やす:一度に多く出すと食欲が消える。小皿に少量を1日5〜6回に分けて

食欲を高めるための工夫

  • 食前に軽く体を動かす:短い散歩や体操が消化酵素の分泌を促し、食欲につながります
  • 好きなものを優先する:栄養バランスより「食べる意欲」を優先する時期があります。好物を出すことで食事への前向きな気持ちを取り戻せることがあります
  • においと温度を意識する:温かい食事のにおいは食欲を刺激します。冷たいものより温かいものを
  • 誰かと一緒に食べる機会を作る:孤食を減らすだけで食事量が改善するケースは多い。配食サービスのスタッフとの短い会話も、食べる動機になります

栄養補助食品の選び方と使い方

食事量をすぐに増やすことが難しい場合の補助として、栄養補助食品(経口補水栄養剤)を活用できます。

種類特徴向いているケース
高カロリーゼリー少量で高カロリー、飲み込みやすい食事量が極端に少ない方
プロテイン飲料タンパク質を手軽に補える筋力低下が気になる方
とろみ付き飲料飲み込みにくい方向け嚥下障害がある方
経口補水液脱水・夏バテの補助水分不足が心配な方

どれを選ぶかは、飲み込みの状態・好み・必要なカロリー量によって変わります。訪問看護師や薬局の薬剤師に相談すると、その方に合ったものを提案してもらえます。


訪問看護師・在宅医・管理栄養士が連携してサポートできること

食欲不振・低栄養への対応は、家族だけで抱え込まずに医療・介護チームと連携することが重要です。それぞれの専門職にできることが違います。

訪問看護師の役割

訪問のたびに体重・皮膚・表情・食事内容を観察し、変化を主治医に報告します。OURでは体重測定を訪問時の標準チェック項目に位置づけており、「先週より800g落ちた」という変化をリアルタイムで在宅医と共有しています。

具体的なサポート内容:

  • 口腔ケアの指導(義歯の清潔・口内炎への対処)
  • 食事姿勢の確認と調整
  • 嚥下練習・嚥下の評価
  • 服薬管理の見直し提案(副作用を主治医に伝える)
  • 家族への食事の工夫の指導

こんなときは訪問看護師に相談してください:

  • 「食欲はないけれど、なぜ食べないかわからない」
  • 「食事の工夫をしても食べてくれない」
  • 「体重が落ち続けている」

在宅医・かかりつけ医の役割

食欲不振の原因となる疾患の治療・薬の調整・血液検査・在宅輸液(点滴)の検討など、医学的な介入を担います。「水分もとれなくなってきた」「ぐったりしている」という場合は、在宅医への連絡を優先してください。

管理栄養士・介護サービスの活用

ケアマネジャーに相談することで、訪問栄養指導(管理栄養士が自宅を訪問)につなげることができます。栄養補助食品の選定・食形態の調整・家族への調理指導を専門家が行います。

また、配食サービスは食事の確保と安否確認を兼ねられる有効なサービスです。宮崎市でも複数の事業者が対応しており、ケアマネジャーに紹介してもらえます。


宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応

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よくある質問(FAQ)

高齢者の食欲不振はどこに相談すればよいですか?

かかりつけ医・ケアマネジャー・訪問看護ステーションのどこに相談しても動いてもらえます。「最近食べなくなった」「体重が落ちた」という一言で十分です。

まだ医療・介護サービスを利用していない方は、市区町村の地域包括支援センターに相談すると、適切なサービスにつないでもらえます。宮崎市の場合は各地域の包括支援センターまたはOURに直接ご連絡ください。早めの相談が、その後の回復に大きな差をつけます。

体重がどのくらい減ったら受診すべきですか?

3か月で体重の3%以上または6か月で5%以上の減少が受診の目安です。50kgの方なら3か月で1.5kgの減少がサインです。期間に関係なく1週間で2kg以上急に落ちた場合、水分もとれなくなってきた場合は早急に受診してください。

体重はできれば毎週、同じ時間帯・同じ条件で測る習慣をつけましょう。記録をつけておくと医師や訪問看護師に変化を正確に伝えられます。

食欲がないときに栄養補助食品は使えますか?

使えます。食事量が減っているが完全にゼロではない段階では、栄養補助食品は有効な選択肢です。種類が多く選びにくい場合は訪問看護師や薬局に相談してください。飲み込みの状態・好み・必要なカロリーに合わせて提案してもらえます。

ただし栄養補助食品はあくまで補助です。食欲不振の原因を探ることと並行して使うことが大切で、補助食品だけで様子を見続けることは避けてください。

無理に食べさせると逆効果ですか?

逆効果になることがあります。高齢者の「食べたくない」には疾患・薬の副作用・うつ状態など明確な理由がある場合が多く、強制すると食事への拒否感が強まります。「少しでいい」「今日は好きなものだけでいい」という柔軟な関わりが、長期的に食事量を維持するコツです。

ただし、脱水や急激な体力低下が見られる場合は家族の工夫だけでは対応できません。点滴や経腸栄養など医療的な介入が必要なサインですので、早めに医師や訪問看護師に連絡してください。

訪問看護師は食欲不振にどのように関わりますか?

毎回の訪問で体重・皮膚・表情・食事記録を確認し、変化を在宅医に報告します。口腔ケアの指導・食事姿勢の確認・嚥下練習・服薬管理の見直し提案など、「食べる機能」を総合的にサポートします。

ご家族向けには「何をどのように食べさせると良いか」を具体的に説明します。「食べてくれない」と一人で悩まず、訪問看護師に相談することで解決策が見えやすくなります。

一人暮らしの親が食事をとれているか遠くから確認する方法はありますか?

以下を組み合わせるのが効果的です。

  • 電話・ビデオ通話:「今日何食べた?」を習慣的に聞く
  • 配食サービス:毎日届けてもらうことで食事量の確保と安否確認を兼ねられる
  • 訪問看護・介護サービス:専門職が定期的に訪問し、食事状況を客観的に確認する
  • IoTデバイス:冷蔵庫の開閉センサーや見守りカメラなどで間接的に生活を確認

宮崎市の配食サービスや訪問サービスについては、ケアマネジャーまたはOURにお問い合わせください。「遠くに住んでいて様子が心配」という相談も歓迎しています。

食欲不振と認知症は関係がありますか?

関係があります。認知症が進行すると、「食べ方がわからなくなる(失行)」「食べたことを忘れる」「味覚・嗅覚の変化で食欲が下がる」といった問題が起きやすくなります。

また逆に、低栄養が認知機能を悪化させることも研究でわかっています。食欲不振と認知機能の変化が重なっているときは、在宅医・訪問看護師への相談を急いでください。認知症の進行状況によっては、食事の支援方法そのものを変える必要があります。


まとめ

  • 高齢者の食欲不振を「老化だから仕方ない」と放置すると、筋力低下・免疫低下・転倒・肺炎リスクが高まる
  • 体重変化(3か月で3%以上の減少)を毎週記録して変化を早期に捉える
  • 原因は疾患・薬の副作用・うつ・孤食など複合的なため、まず原因を探ることが大切
  • 在宅ケアは「少量・高栄養・好きなもの優先」を基本に、栄養補助食品も活用する
  • 訪問看護師・在宅医・管理栄養士が連携してサポートできるので、一人で抱え込まない

今日できる一歩:体重を測って記録し、「最近食べなくなってきた」と感じたらかかりつけ医かOURに電話してください。

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参考文献一覧

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html
  • 厚生労働省「介護予防マニュアル(改訂版:平成24年3月)」https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/tp0501-1.html
  • 日本老年医学会「フレイル診療ガイド2018年版」(日本老年医学会・2018年)
  • 国立長寿医療研究センター https://www.ncgg.go.jp/

この記事を監修した人

OUR
TEAM

OUR訪問看護ステーション

看護・リハビリチーム

看護師7名・理学療法士1名・作業療法士3名 / 宮崎市

宮崎市を中心に24時間・365日の訪問看護を提供。在宅透析・人工呼吸器・CV管理などの高度医療処置から生活期リハビリまで対応。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、認定作業療法士・中田富久が代表を務め、医師・ケアマネジャーと連携し利用者一人ひとりの在宅生活を支援している。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。