
執筆者: OUR訪問看護ステーション 看護・リハビリチーム 監修者: 中田富久(認定作業療法士・OUR代表)
「調子が良いときの言動が信じられないほど派手で、落ち込むと何日も布団から出られない」「薬を飲み続けているのに波がおさまらない」「家族だけではもう限界に近い」。双極性障害のある方を支えるご家族からOURに届く相談の多くが、こうした言葉から始まります。
双極性障害の在宅ケアは、「今この瞬間の症状への対応」だけでなく、長期的な波の管理が必要です。躁とうつが繰り返す中で、一定の生活を維持するための支援は、本人・家族だけでは担いきれません。訪問看護師がこの「波乗り」を一緒に続けることで、再入院を防ぎながら在宅生活を支えることができます。
この記事でわかること:
- 双極性障害の躁・うつの特徴と在宅で起きやすいこと
- 訪問看護師が行う気分の波の早期発見・服薬管理
- 睡眠・生活リズムのモニタリング方法
- 家族との関係調整と訪問看護師の役割
- OURが双極性障害の方に提供できること
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
“あなたらしい”在宅生活を、24時間・365日サポートします
☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時
双極性障害の在宅ケアとは。躁・うつの波を「波乗り」するような長期的な支援
双極性障害の在宅ケアとは、躁状態とうつ状態が繰り返す中で、波の振れ幅を小さくしながら在宅生活を継続するための継続的な支援であり、服薬管理・睡眠モニタリング・早期サインの察知・家族との連携を柱とします。
双極性障害(旧称:躁うつ病)は、気分が高揚し活動的になる「躁状態」と、気力・意欲が著しく低下する「うつ状態」が交互に現れる精神疾患です。波の程度・周期・持続時間には個人差が大きく、症状が完全に落ち着いている「寛解期」がある一方で、突然の再燃も起きやすい。
OURのスタッフが双極性障害の方の訪問を続ける中で感じるのは、「この病気は長距離マラソンのケアが必要だ」ということです。一回の入院で「治った」と思われやすいのですが、退院後も気分の波は続き、それを本人・家族だけで管理することは非常に難しい。訪問看護師が「一緒に波に乗り続ける」役割を担うことが、在宅生活を安定させるうえで大きな意味を持ちます。
双極性障害Ⅰ型とⅡ型の違い
双極性障害には「Ⅰ型」と「Ⅱ型」があります。
Ⅰ型は入院が必要なほど重篤な躁状態が現れることが特徴です。Ⅱ型は重篤な躁状態はなく、「軽躁状態」とうつ状態が繰り返されます。Ⅱ型はⅠ型より目立ちにくいため、「うつ病」として診断されてしまうケースもあります。
在宅ケアではどちらのタイプかによって支援の重点が変わります。Ⅰ型は躁状態への早期対応が特に重要で、Ⅱ型は「軽躁なのか通常なのか」の見極めが訪問看護師の腕の見せどころです。
詳しくは精神科訪問看護とは?対象疾患・利用条件・費用と自立支援医療の使い方を解説でも説明しています。
躁状態・うつ状態のサインと、訪問看護師が早期に気づく方法
双極性障害の早期発見で最も重要なのは、本人が「いつもと違う自分」に気づきにくいという特性を前提に、訪問看護師・家族が客観的なサインを見逃さないことです。
躁状態の早期サイン
躁状態は本人にとって「調子が良い」と感じるため、異変に気づきにくいのが特徴です。しかし周囲から見ると、以下のような変化が現れてきます。
| サイン | 具体的な変化 |
| 睡眠の変化 | 3〜4時間しか眠らなくても元気に活動している |
| 金銭行動 | 大きな買い物・複数の契約・突然の大金の出入り |
| 言動の変化 | しゃべり続ける・アイデアが次々浮かんで止まらない |
| 計画の肥大化 | 現実的でない事業計画・突然の旅行計画 |
| 対人関係 | 突然親しくなる・怒りっぽくなる |
訪問看護師は毎回の訪問で「最近よく眠れているか」「気になることはないか」を確認しながら、前回訪問との差を観察します。「今日はいつもより話すテンポが速いな」という直感的な気づきも、経験を積んだ看護師には重要な情報です。
うつ状態の早期サイン
うつ状態はそれ自体が苦しい状態ですが、特に双極性障害のうつでは「自殺リスク」への注意が必要です。
- 食欲・睡眠の著しい変化
- 「消えてしまいたい」という言葉が出てくる
- 身の回りのことができなくなる
- 主治医への受診を嫌がるようになる
うつ状態が深刻な場合、訪問看護師は即座に主治医に連絡し、緊急対応の検討を行います。24時間・365日対応のOURでは、夜間・休日でも緊急の相談を受け付けています。
服薬管理の難しさ:「気分が良いから飲まなくていい」が最も危険な思い込み
双極性障害の服薬管理における最大の課題は、「気分が良いときほど薬をやめたくなる」という症状の特性にあり、これが再発の引き金になりやすいことを本人・家族が理解することが第一歩です。
なぜ「気分が良いとき」が危ないのか
双極性障害の治療薬(気分安定薬・非定型抗精神病薬など)は「症状が落ち着いているとき」も継続して飲む必要があります。「今は症状がないから薬は必要ない」という判断は、気分安定薬が血中濃度を維持することで安定を保っているという仕組みを無視したものです。
OURの看護師が現場でよく経験するのは、軽躁状態のとき(本人は「絶好調」と感じているとき)に「こんな薬は必要ない」と自己判断でやめてしまい、数週間後に重篤な躁状態や落差の激しいうつ状態に陥るというパターンです。
服薬継続のための訪問看護師の関わり方
服薬をやめたいという気持ちを「あなたは間違っている」と否定するのではなく、「そう感じるのはわかる。でも今の安定は薬が支えてくれているからかもしれない」と、本人の気持ちを受け止めながら薬の意義を一緒に考えます。
また、具体的な工夫として以下を行います。
- 服薬カレンダーで「飲んだか飲まなかったか」を本人が自分で記録する
- 残薬を訪問のたびに確認する
- 薬の副作用で困っていることを聞いて、主治医に伝える橋渡しをする
- 「薬をやめたいと思ったらまず看護師に相談してほしい」と事前に伝えておく
気分安定薬のリチウムと血中濃度管理
気分安定薬として使われる炭酸リチウム(リーマス)は、有効な血中濃度と中毒域の差が小さいため、定期的な採血による濃度確認が必要です。訪問看護師は主治医の指示のもと、採血の準備・受診のサポートを行い、腎機能・甲状腺機能のモニタリングもあわせて確認します。
睡眠・生活リズムのモニタリング:双極性障害の再発予防の基本
双極性障害における睡眠の乱れは、躁・うつ双方の引き金になることが研究でも確認されており、「睡眠が乱れたとき=警戒が必要なとき」と考えて生活リズムのモニタリングを継続することが再発予防の基本です。
なぜ睡眠が最重要なのか
双極性障害の再発研究では、再発前の最も早期のサインとして「睡眠の変化」が頻繁に挙げられています。躁状態では「眠らなくても大丈夫」、うつ状態では「朝起きられない・過眠」という形で現れます。
訪問看護師は毎回「昨夜は何時間眠れたか」「眠りの質はどうか」を確認します。これを継続することで「通常の睡眠パターン」を把握でき、変化があったときに「最近いつもと違うな」と気づけます。
気分グラフの活用
双極性障害のセルフモニタリングに有効なツールとして「気分グラフ」があります。毎日の気分・睡眠時間・服薬状況を簡単に記録する表で、波のパターンを本人と一緒に振り返ることができます。
訪問看護師は気分グラフの記録を励まし、変化があったときに一緒に見返すことで、「自分の波に気づく力」を育てます。これは長期的に双極性障害と付き合うために欠かせないスキルです。
日中の活動量と社会参加
うつ状態では引きこもりがちになりますが、完全な安静より「軽い活動を続けること」の方が回復に良い影響を与えるとされています。訪問看護師は本人の状態を見ながら、近所の散歩・デイケアの利用・買い物への同行など、無理のない活動を提案します。
また、就労継続支援施設・地域活動支援センターへのつなぎも行い、社会との接点を少しずつ保てるよう支援します。費用については訪問看護の料金はいくら?も参考にしてください。
家族との関係調整:感情的なぶつかりを減らし、中立的な視点を入れる役割
双極性障害の在宅ケアにおける家族支援とは、繰り返す波の中で傷つき疲弊した家族関係を調整し、訪問看護師が「感情的な圧力なく本人と話せる第三者」として機能することです。
双極性障害が家族関係に与える影響
躁状態での言動(借金・浮気・大きな意思決定・暴言)は、家族に深い傷を残します。うつ状態では「また繰り返すのか」という恐怖と怒りが家族に積み重なっていきます。
「なんで薬を飲まないの」「また繰り返すの」という家族の言葉は、気持ちとしては当然ですが、本人にとっては責められているように感じられ、関係をより悪化させることがあります。
訪問看護師が定期的に訪問することで、「本人と家族の間に入って話をまとめる人」が存在するようになります。これが家族全体のストレスを下げることにつながります。
家族への心理教育と感情的サポート
訪問看護師は家族に対しても、双極性障害の特性・家族がやってはいけない関わり方・再発サインの見分け方を定期的に説明します。
特に重要なのは「高感情表出(High Expressed Emotion)」への対応です。家族が過度に批判的・過干渉・感情的になる状態(高感情表出)は、双極性障害の再発率を高めることが研究で示されています。家族がこの状態に陥らないよう、訪問看護師は家族の話を丁寧に聞き、疲弊しているときは受診同席・ショートステイの提案も行います。
統合失調症の家族ケアとの共通点
精神疾患全般を通じた家族ケアの考え方については統合失調症の在宅生活。訪問看護師ができる服薬管理・生活支援を解説も合わせてご覧ください。認知症の家族ケアと重なる視点も多く、認知症の在宅ケアに訪問看護は使える?も参考になります。
OURの精神科訪問看護が双極性障害の方に提供できること
OUR訪問看護ステーションは、精神科病院経験を持つ看護師と厚生労働省の精神保健研修を修了したスタッフ全員が連携する体制で、双極性障害の方の在宅生活を24時間・365日サポートします。
OURが双極性障害のケアに強い理由
双極性障害のケアには、長期にわたる関係性の構築が不可欠です。OURでは担当看護師を基本的に固定し、「この看護師とはいつも話せる」という安心感を作ることを大切にしています。
精神科病院での勤務経験を持つ看護師は、「躁状態の初期サインをどう読むか」「うつ状態のどの言葉に注意すべきか」「薬の調整をどのタイミングで医師に提案するか」というような実践的な判断力を持っています。これは在宅での精神科ケアにおいて、大きな強みになります。
24時間・365日のオンコール体制
双極性障害は夜間・休日に症状が急変することも少なくありません。「急に躁状態になって止められない」「夜中に死にたいと言い出した」。こうした緊急場面でも、OURの24時間オンコール体制ではスタッフに直接連絡でき、対応の判断をともに行うことができます。
こんな方はOURにご相談ください
- 双極性障害の診断を受けて退院したばかりの方・そのご家族
- 薬をやめてしまうことが繰り返されている方
- 躁状態になったときの対応に家族が疲弊している方
- 宮崎市・国富町・高岡町・綾町で精神科訪問看護を探している方
- 「うちの場合は訪問看護を使えるか」と迷っている方
まとめ
- 双極性障害の在宅ケアは「波乗り」のような長期的な支援が必要
- 躁・うつの早期サインを観察し、主治医への情報提供を迅速に行う
- 服薬管理の最大の課題は「気分が良いとき」の自己中断を防ぐこと
- 睡眠・生活リズムのモニタリングが再発予防の基本
- 家族への心理教育と感情的サポートも訪問看護師の役割
- OURには精神科病院経験看護師と厚労省研修修了スタッフが在籍し24時間対応
今日できる一歩:「双極性障害の家族を在宅で支えているが不安」という状況でも、まずはOURにお電話ください。どのようなサポートができるかを一緒に考えます(☎ 0985-77-8266、受付9時〜17時)。
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
“あなたらしい”在宅生活を、24時間・365日サポートします
☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時
FAQ:よくある質問
双極性障害でも訪問看護は使えますか?
はい。双極性障害(Ⅰ型・Ⅱ型とも)は精神科訪問看護の対象疾患です。精神科または心療内科の主治医から「精神科訪問看護指示書」を発行してもらえれば、医療保険で利用できます。自立支援医療(精神通院医療)の認定を受けていれば自己負担が1割になります。「通院はしているが在宅でのサポートがない」という方にこそ、利用していただきたいサービスです。
躁状態のとき、本人が訪問を拒否したらどうなりますか?
躁状態では「自分は問題ない」という感覚が強くなり、支援者の訪問を嫌がることがあります。そのような場合、OURでは無理に関係を壊さず、家族を通じた情報収集・主治医への早急な連絡・緊急の受診調整などを行います。あらかじめ「躁状態のときはこう対応する」という危機計画(クライシスプラン)を作成しておくことが有効で、OURの看護師はこの作成を一緒に行います。
訪問看護師はどのくらいの頻度で来てもらえますか?
医療保険の精神科訪問看護では、基本的に週3回まで(特定の状態では週4回以上も可能)、1回30〜90分の訪問が可能です。状態の不安定な時期・退院直後・服薬調整中などは主治医の指示で頻度を増やすことができます。具体的な訪問回数はOURと主治医が相談のうえ決定します。
家族が精神的に疲れています。家族のサポートもしてもらえますか?
はい。OURでは訪問の中で家族への心理教育・対応方法のアドバイス・「家族の気持ちを聞く時間」を設けています。「本人への訪問なのに家族の相談もしていいのか?」と遠慮される方も多いのですが、家族が倒れてしまうと在宅ケアは成り立ちません。家族のケアは在宅支援の柱の一つです。必要に応じてショートステイ・家族会・相談窓口の案内も行います。
宮崎市で双極性障害の訪問看護を提供している事業所はありますか?
OURは宮崎市全域・国富町・高岡町・綾町を対応エリアとし、精神科訪問看護を提供しています。精神科病院経験のある看護師と厚労省精神保健研修修了スタッフが在籍し、24時間・365日の対応体制があります。まずはお電話(☎ 0985-77-8266)でご相談ください。
双極性障害の方が在宅で「やってはいけないこと」はありますか?
家族が「やってはいけないこと」として特に注意が必要なのは、躁状態のときに本人の計画に同調してしまうことと、批判・叱責・過度な干渉です。躁状態を止めようとして感情的に対立するより、「主治医に一緒に行こう」と提案するほうが効果的です。OURの看護師は訪問を通じて、こうした対応の具体的な練習(ロールプレイ)を家族と一緒に行うこともあります。
参考文献一覧
- 双極性障害(躁うつ病)の診断と治療(日本うつ病学会 双極性障害委員会)
- 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)(アメリカ精神医学会)
- 精神科訪問看護の実践ガイド(公益財団法人日本訪問看護財団)
- 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築について(厚生労働省)
- 睡眠と双極性障害の関係に関する研究(日本睡眠学会誌)
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スラッグ:sokyokusei-shougai-houmonkango 公開予定日:2026-08-22 監修者:中田富久(認定作業療法士・OUR代表)