
「おむつを使い始めたけれど、どれが合っているのかわからない」「皮膚が赤くなってきた」「においが気になって外出も怖くなった」。訪問看護の現場では、尿失禁にまつわるこうした困りごとを毎日のように耳にします。この記事では、尿失禁の種類と原因、おむつ・パッドの選び方・当て方、皮膚トラブルの予防と対処法、そしてOURの看護師が実際の訪問でどう対応しているかを、現場目線でわかりやすく解説します。
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
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尿失禁とは「意図せず尿が漏れる状態」を指し、原因の種類によってケアのアプローチが全く異なる
尿失禁とは、自分の意思に反して尿が漏れてしまう状態のことです。「年だから仕方ない」と放置されがちですが、原因を正しく把握すれば、多くのケースでコントロールや改善が期待できます。
尿失禁の主な5つのタイプ
| タイプ | 特徴 | 代表的な原因 |
|---|---|---|
| 腹圧性尿失禁 | 咳・くしゃみ・運動時に漏れる | 骨盤底筋の弱体化(出産・加齢) |
| 切迫性尿失禁 | 急に強い尿意が来て間に合わない | 過活動膀胱・脳卒中後遺症 |
| 溢流性尿失禁 | 少量がダラダラ漏れ続ける | 前立腺肥大・神経因性膀胱 |
| 機能性尿失禁 | 尿意はあるが移動やADLの問題で間に合わない | 認知症・運動障害 |
| 混合性尿失禁 | 腹圧性+切迫性が混在 | 多因子(高齢女性に多い) |
OURが訪問する宮崎市・国富町・高岡町・綾町のご利用者のなかでも、脳梗塞後の切迫性尿失禁や、認知症と運動障害が重なった機能性尿失禁が特に多く見られます。タイプを見誤ると、おむつの選択や排泄誘導のタイミングがズレてしまい、かえって皮膚トラブルが悪化することがあります。
在宅でまず確認すべき3点
- 漏れるタイミング:咳・尿意・移動中など、いつ漏れるかを1週間記録する「排泄日誌」が有効です。
- 1日の尿回数と量:1日8回以上・夜間2回以上が頻尿の目安です。
- 内服薬の影響:利尿薬・降圧薬・抗精神病薬などは失禁を増悪させる場合があります。
おむつ・パッドの種類と選び方。「量・体型・活動量」の3軸で選ぶのが基本
おむつの選び方を誤ると、蒸れ・ズレ・漏れが重なり、本人の自尊心を傷つけるだけでなく皮膚トラブルの温床になります。
主な製品カテゴリーと適応
| 製品 | 適応 | 特徴 |
|---|---|---|
| 尿パッド(少量用) | 腹圧性・軽度の切迫性 | 下着に装着。日中の外出にも使いやすい |
| 尿パッド(中〜多量用) | 中等度の失禁 | 紙パンツの中に重ねて使用することが多い |
| 紙パンツ(パンツ型) | 自立歩行〜軽度介助 | トイレでの脱着が可能。活動的な方向き |
| テープ型おむつ | 全介助・臥床傾向 | 寝た状態での交換が可能。背中漏れに強い |
| 布製リユース型 | 軽度失禁・環境配慮 | 繰り返し洗って使う。コスト削減にも |
3軸で選ぶチェックリスト
軸①:漏れる量
- 少量(下着が少し濡れる程度)→ 軽量パッド
- 中量(1回で100〜200mL程度)→ 中量パッド+紙パンツ
- 多量(1回200mL超・夜間含む)→ 多量パッド+テープ型おむつ
軸②:体型・ウエスト
- Lサイズのおむつでも薄い体型ならMサイズのほうが密着する場合があります。試着なしで判断するのは禁物です。
軸③:活動量と介助の有無
- 自力でトイレへ行ける→ 紙パンツ+パッドの「二度履き」が漏れ予防に有効
- 移動が困難→ テープ型おむつで介護者の負担も軽減
OURの看護師は初回訪問時に「どの製品を使っているか・何時間おきに交換しているか」を必ず確認します。「病院で勧められたまま使っているが実は合っていない」というケースは想像以上に多く、製品の見直しだけで皮膚トラブルが劇的に改善した経験が複数あります。
おむつの正しい当て方と交換手順。「陰部の前→後ろ」「ギャザーを立てる」が二大ポイント
正しい手順でおむつを当てることは、漏れ防止と皮膚保護の両方に直結します。
テープ型おむつの当て方(6ステップ)
- おむつを広げ、中心線が背骨の真上に来るように仰向けで敷く。
- 陰部にパッドを当て、前から後ろへ(尿道口→会陰→肛門の方向)に沿わせる。
- 前側のおむつを引き上げ、鼠径部に沿わせる(お腹を強く締めすぎない)。
- 内側のギャザー(立体部分)を必ず立てる。ここを倒したまま留めると横漏れの原因になります。
- テープは左右均等に、下から上へ斜め上向きに貼る。
- ウエスト部分に指2本分の余裕を確認する。
交換のタイミングと頻度
- 尿の量が多い方:2〜3時間ごとを目安に。放置すると皮膚がふやけてADの(失禁関連皮膚炎)リスクが上がります。
- 夜間:高吸収パッドを活用しつつ、夜中0時・早朝5時の2回交換が多くの在宅現場での現実的なラインです。
- 便が混入した場合は即交換が鉄則です。便のpHは皮膚への刺激が強く、30分以内でも発赤が生じることがあります。
皮膚トラブル予防と失禁関連皮膚炎(IAD)対策。OURの看護師が訪問で実践していること
失禁関連皮膚炎(IAD:Incontinence Associated Dermatitis)は、尿・便の湿潤刺激で陰部周囲の皮膚が赤く、びらん状になる状態です。おむつを使う方の在宅ケアで最も頻度が高い皮膚トラブルのひとつです。
IADの予防3原則
原則①:洗浄(清潔) おむつ交換のたびに石けんや弱酸性の泡洗浄剤で陰部を洗い流すのが理想的です。ただし、強くこすることは皮膚を傷つけます。泡を乗せて、やさしく流すイメージを心がけます。石けんが残るとアルカリ刺激になるため、十分なすすぎが重要です。
原則②:保湿 洗浄後、皮膚が乾いていることを確認してから撥水性の保護クリーム(ジメチコン含有・酸化亜鉛系など)を塗布します。「保湿」より「バリア保護」の概念で選ぶと効果的です。
原則③:保護(刺激からの遮断) 撥水クリームや皮膚保護パウダーを使い、尿・便が直接皮膚に触れる時間を最小化します。浸出液が多い場合は皮膚保護材(創傷被覆材)の使用を主治医・訪問看護師に相談します。
OURが宮崎の現場で実践している工夫
OURのスタッフが訪問時に特に意識しているのは、「皮膚の観察をケアのたびにルーティン化すること」です。陰部・鼠径部・仙骨部・大腿内側を必ず観察し、発赤のグレード(発赤のみ/びらん/潰瘍)を毎回記録します。家族や介護者への指導では、「写真を撮って比較する習慣」を提案しています。スマートフォンで日付入り写真を撮っておくと、悪化や改善が一目でわかり、主治医への報告もスムーズになります。
宮崎市内のあるご利用者(80代女性、脳梗塞後)では、既製品の撥水クリームを使っていたにもかかわらず皮膚炎が繰り返していました。観察を続けた結果、夜間の便失禁が間欠的に起きていることが判明。夜間の巡回タイミングを見直し、家族への夜間チェックの方法を指導することで、発赤の再発頻度が大幅に減少しました。
また、OURには精神科病院での経験を持つ看護師が在籍しており、尿失禁に伴う「恥ずかしさ」「自己嫌悪」といった心理的ダメージにも配慮したコミュニケーションを大切にしています。全スタッフが厚生労働省の精神保健研修を修了しており、失禁による気力の低下・引きこもりに気づいたときは、心理的サポートも並行して行っています。
骨盤底筋トレーニングと排泄誘導。おむつに頼りすぎない在宅リハビリのすすめ
おむつは必要なケアですが、「おむつがあるから大丈夫」と安易に依存すると、残存機能が低下する場合があります。
骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)
腹圧性・混合性尿失禁に効果が期待できます。仰向けで膝を立て、肛門と膣(男性は肛門)をゆっくり締めて5〜10秒保持し、緩めます。これを10回1セット、1日3セットを目安に続けます。OURのPT・OTが訪問リハビリで個別に指導することも可能です。
排泄誘導のタイミング設定
機能性尿失禁には、排泄日誌をもとに「2〜3時間ごとにトイレへ誘う」定時排泄誘導が有効です。認知症の方でも、声かけのタイミングと環境(トイレまでの導線・手すり・照明)を整えることで自立排泄を維持できる可能性が高まります。
環境調整のポイント
- トイレまでの動線に手すりを設置する。
- 夜間はセンサーライトを活用し、転倒リスクを下げる。
- ポータブルトイレをベッドサイドに置くことで間に合う確率が上がる。
OURの理学療法士・作業療法士が訪問し、住環境の評価と福祉用具の提案も含めた包括的なアドバイスを提供しています。
よくある質問
尿失禁は病院を受診したほうがよいですか?
尿失禁は「加齢のせい」として我慢されがちですが、背景に前立腺肥大・過活動膀胱・神経因性膀胱・尿路感染症などの治療可能な疾患が潜んでいることがあります。特に「急に悪化した」「血尿も混じる」「残尿感が強い」場合は早めの受診が重要です。泌尿器科・婦人科・かかりつけ医に相談することで、内服薬の調整や理学療法の紹介を受けられる場合があります。訪問看護師は主治医との連携窓口になることができますので、受診の相談も気軽にしていただければと思います。
おむつ代に介護保険は使えますか?
おむつそのものの購入費は介護保険の給付対象外です。ただし、自治体によっては紙おむつの現物支給・購入費補助を行っている場合があります。宮崎市でも一定の要件を満たす方に対して福祉用具関連の補助制度があります。また、医療的な理由(褥瘡処置中など)でおむつが必要な場合は医療費控除の対象になることがあります。詳しくは宮崎市の地域包括支援センターやケアマネジャーに確認することをおすすめします。OURの看護師も制度活用の情報提供をしています。
パッドとおむつを重ねる「二度履き」は体に悪いですか?
適切に行えば問題ありません。「二度履き」とは紙パンツの中に尿パッドを重ねて使う方法で、吸収量を増やしながらパンツ型の着脱しやすさを維持できる方法として広く活用されています。ただし、パッドが折れたり位置がズレると局所的な蒸れや圧迫が生じるため、当てた後に鼠径部と陰部の間にパッドが沿っているかを確認することが大切です。吸収量の異なるパッドを複数重ねすぎると厚みが出て不快感や転倒リスクにつながる場合もあります。
夜間の尿失禁で朝方にシーツが濡れているのを防ぐには?
夜間向けの高吸収パッド(吸収量500〜1,000mL対応)を使うことがまず有効です。加えて、防水シーツやおねしょシーツをマットレスに敷くことで洗濯の手間が大幅に減ります。テープ型おむつの場合は、横漏れ防止のためギャザーをしっかり立てること、左右テープを均等に貼ることを再確認してください。それでも漏れる場合は、朝の漏れる時間帯に夜間の交換を1回追加するか、就寝前の水分を見直すことも選択肢になります(ただし過度な水分制限は脱水につながるため注意が必要です)。
皮膚が赤くなってきたとき、家庭でできる応急処置は?
まず、赤くなった部位に尿・便が長時間触れないよう、交換頻度を上げてください。洗浄はやさしく泡で行い、こすらないことが重要です。乾かしてから亜鉛華単軟膏や撥水クリームを薄く塗布することで保護できます。市販の保湿剤(ワセリンなど)も代替になります。赤みがびらん(皮膚が剥けている)・潰瘍(深く傷ついている)に進行している場合は自己処置に限界があるため、早急に訪問看護師または主治医に連絡してください。OURでは24時間・365日のオンコール対応を行っており、夜間でも電話相談が可能です。
男性のおむつの当て方で女性と違う点はありますか?
男性は陰茎・陰嚢の形状があるため、パッドをカップ状にして陰茎を包むように当てることが漏れ防止の基本です。陰茎が上向き・下向きのどちらを向いているかでパッドの当て方が変わります。夜間は腹側(上向き)にして固定するほうが漏れにくい場合が多いです。また、男性用専用パッド(筒状・袋状のもの)も市販されており、形状に合わせた製品選びが有効です。前立腺肥大の術後などで尿の出方が変化している場合は、泌尿器科と訪問看護師が連携して製品選定を行うことを推奨します。
認知症の方が自分でおむつを外してしまう場合はどうすればよいですか?
おむつを外す行動は「不快感の表現」であることが多く、おむつが濡れている・サイズが合っていない・締めすぎなどの原因を探ることが先決です。外しやすい環境を変える工夫(テープ型から前開きのつなぎ型パジャマへの変更など)が有効な場合もありますが、制限的な対処は尊厳の観点から慎重に行う必要があります。排泄誘導で定時にトイレへ連れていき、失禁が起きにくい状況をつくることが根本的な対策です。OURの看護師は認知症ケアの視点からも排泄支援を行っており、ご家族への具体的な声かけ方法の指導も行っています。
まとめ
- 尿失禁には5つのタイプがあり、タイプに合ったケアを選ぶことで改善や皮膚トラブルの予防が期待できる。
- おむつ・パッドは「漏れる量・体型・活動量」の3軸で選び、ギャザーを立てること・交換頻度を守ることが皮膚保護の基本。
- 失禁関連皮膚炎(IAD)の予防には「洗浄・保湿・保護」の3原則を毎回のケアで実践することが大切。
- 骨盤底筋トレーニングや排泄誘導・環境調整を組み合わせることで、おむつへの依存度を下げ残存機能を活かすアプローチが可能。
今日できる一歩:今夜のおむつ交換時に、陰部から鼠径部・仙骨部をスマートフォンで写真に撮り、日付とともに保存してみてください。「見える化」が皮膚トラブルの早期発見と悪化防止につながります。
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参考文献一覧
- 「排泄ケアガイドライン」(日本創傷・オストミー・失禁管理学会、2019年)
- 「失禁関連皮膚炎(IAD)の予防と管理に関するベストプラクティス」(WOCN・MASD国際コンセンサスドキュメント日本語版、2018年)
- 「高齢者の排尿障害診療ガイドライン」(日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会、2020年)
- 「訪問看護実践ガイドライン」(日本看護協会、2022年)
- 厚生労働省「在宅医療・介護の推進について」(https://www.mhlw.go.jp/)
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