
「最近、足がもつれる気がする」「段差でつまずくことが増えた」そんな変化を感じていませんか。転倒は骨折や寝たきりのきっかけになりやすく、高齢者にとって深刻なリスクです。この記事では、OURの理学療法士(PT)が実際の訪問現場で指導している「家でできる5分間の転倒予防体操」を、宮崎の在宅ケア現場で得た視点とともに解説します。道具不要・椅子1脚でできる内容なので、今日からすぐに始められます。
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高齢者が転倒しやすい理由は、筋力・バランス・環境の三つが複合的に重なるためです
転倒は「うっかり滑った」だけで起きるわけではありません。加齢にともなう身体機能の変化が積み重なり、ちょっとした段差や方向転換でバランスを崩します。OURの訪問現場でも、「トイレに起きたとき」「玄関の上がり框(かまち)」「風呂場の出入り口」での転倒事例を数多く経験してきました。
転倒リスクを高める主な要因
| 要因 | 具体的な変化 |
| 筋力低下 | 太もも・ふくらはぎの筋肉が細くなり、踏ん張りが利かなくなる |
| バランス機能の低下 | 足裏の感覚が鈍り、重心のズレを感知しにくくなる |
| 関節の柔軟性低下 | 股関節・足首が硬くなり、すり足歩行になりやすい |
| 視力・深度感覚の変化 | 段差の高さを誤認しやすくなる |
| 薬の影響 | 睡眠薬・降圧薬などがふらつきを引き起こすことがある |
| 環境要因 | 電気コード・カーペットの端・暗い廊下など |
厚生労働省の報告では、65歳以上の約20〜25%が1年間に1回以上転倒を経験するとされています。さらに転倒した方の約10%が骨折に至り、その後の入院・入所につながるケースも少なくありません。宮崎市で在宅ケアを提供しているOURでも、退院後に訪問を開始したご利用者の中で「転倒・骨折がきっかけだった」という方は決して珍しくないのが現実です。
転倒予防体操の効果は「筋力」と「神経系への刺激」の両方から得られます
体操で転倒を予防できる理由は、筋肉を鍛えるだけではありません。反復する動きが脳と筋肉のつながりを強化し、とっさのバランス回復力(反応性)も高めます。OURのPT・OTが在宅リハビリで重視しているのも、この「神経筋協調性」の回復です。
転倒予防に特に重要な筋肉部位
- 大腿四頭筋(太もも前面): 立ち上がり・階段昇降の主力筋。ここが弱ると膝折れしやすい
- ハムストリングス(太もも裏面): 歩行中の踏み出しを安定させる
- 腓腹筋・ヒラメ筋(ふくらはぎ): 地面を蹴り出す力と、バランスの微調整を担う
- 股関節外転筋(臀部外側): 片脚立ちで骨盤を安定させる
- 体幹筋: 全方向のバランスの土台になる
これらを「座ったまま」「立ったまま椅子を持って」の2パターンで鍛えられる体操を次章で紹介します。毎日5分の積み重ねが、数週間後には「つまずかなくなった」「立ち上がりが楽になった」という変化につながります。
今日から始める「5分間転倒予防体操」の手順をPTが解説します
準備するものは椅子1脚だけです。背もたれのある安定した椅子(できれば肘掛けなし)を壁に沿って置いてください。体調が優れないとき・強い痛みがあるときは無理をせず休みましょう。
ウォームアップ(1分):足首まわしと深呼吸
やり方:
- 椅子に浅く腰かけ、背筋を軽く伸ばす
- 右足をゆっくり持ち上げ、足首を内回りに5回・外回りに5回まわす
- 左足も同様に行う
- 鼻から息を吸い、口からゆっくり吐く深呼吸を3回
ポイント: 足首の血流を高め、体操中の足首ひねり予防になります。
体操1「椅子スクワット」(1分):太もも強化

やり方:
- 椅子の前に立ち、背もたれに軽く手を添える
- ゆっくり椅子に座るように腰を下ろし、座面に軽く触れたら立ち上がる
- 「降りる3秒・上がる2秒」のペースで5〜10回繰り返す
ポイント: 膝をつま先より前に出しすぎないよう注意。痛みがある場合は浅くて構いません。OURの訪問リハビリでも最初は「3回から」始めるご利用者が多く、1か月後には10回できるようになるケースが多いです。
体操2「かかと上げ・つま先上げ」(1分):ふくらはぎ・すねの強化

やり方:
- 椅子の背もたれに両手を軽く添えて立つ
- かかとをゆっくり上げ(つま先立ち)2秒キープ、ゆっくり下ろす。10回
- 続いてつま先を上げ(かかと立ち)2秒キープ、ゆっくり下ろす。10回
ポイント: 「ふくらはぎのポンプ」として血流改善にもなります。むくみが気になる方にも有効です。すねの筋肉(前脛骨筋)を鍛えることで、すり足を改善しつまずき予防に直結します。
体操3「片脚立ち10秒」(1分):バランス強化

やり方:
- 椅子の背もたれに片手を添えて立つ
- 右足を床から2〜3cm浮かせ、10秒キープ
- 左足も同様に行う
- 左右各2〜3セット
ポイント: 「浮かせる高さは関係ない」と宮崎の現場でもよくお伝えします。大切なのは軸足で体重をしっかり支え続けること。最初は3秒しか立てなくても問題ありません。慣れてきたら目を閉じて行うと難易度が上がります。
体操4「座ったまま膝伸ばし」(1分):大腿四頭筋強化

やり方:
- 椅子に深く腰かけ、背筋を伸ばす
- 右膝をゆっくり伸ばし、床と平行になるまで上げる。3秒キープ
- ゆっくり下ろす。10回行ったら左足も同様
- 余裕があればつま先を手前に引いた状態で行うとハムストリングスも伸びる
ポイント: 椅子に座ったまま行えるため、膝や腰に不安のある方でも取り組みやすい体操です。OURでは人工膝関節置換術後のご利用者にも、角度を調整しながら類似の運動を提供しています。
クールダウン(1分):太もも裏・ふくらはぎのストレッチ

やり方:
- 椅子に浅く腰かけ、右足を前に伸ばしかかとを床につける
- 背筋を伸ばしたまま上体を軽く前に傾け、太もも裏に伸びを感じたら20秒キープ
- 左足も同様
- 最後に足首を左右に軽く動かして終了
ポイント: 運動後の筋肉をほぐすことで翌日の疲労感を減らし、体操を習慣化しやすくなります。
OURの訪問現場で見えてきた、体操を続けるための三つの工夫
OUR訪問看護ステーションでは、理学療法士が在宅リハビリとして転倒予防の体操指導を行うとともに、看護師が日々の様子を定期的に確認しています。現場で感じるのは「体操の効果は確かにある、しかし続けることが最大の壁」だということです。
工夫1:「ついで体操」にする
テレビを見ながら、朝の歯磨きのついでに、昼食前の1分間に——「何かのついで」にすることで習慣化しやすくなります。宮崎市内のあるご利用者は「朝の連続テレビ小説を見ながらかかと上げをする」習慣をつけ、3か月で立ち上がり動作が安定したとご家族から報告をいただきました。
工夫2:記録表で「見える化」する
カレンダーに「できた日に丸をつけるだけ」という方法を提案しています。OURのPT・OTが訪問時に記録表を持参し、次の訪問までの取り組みを一緒に振り返ることで、モチベーション維持につながっています。
工夫3:家族・介護者も一緒に行う
体操は一人でするより、家族が横で見守るか一緒に行うほうが安全で継続率も上がります。OURでは家族への体操指導も訪問の中で実施しており、「転倒させたくない」という家族の不安軽減にもつながっています。転倒予防は本人だけの問題ではなく、環境整備や見守り体制も含めた包括的な支援です。
よくある質問
体操中に転倒しないか心配です。安全に行うには?
必ず安定した椅子の背もたれか、壁・固定された家具を支えにして行ってください。片脚立ちなどのバランス運動は、最初から壁に手をついても構いません。靴下は滑りやすいので、室内履きか素足で行うと安全です。運動中にふらつきや息切れ、胸の痛みを感じた場合はすぐに中止し、ひどい場合は医師や訪問看護師に相談してください。OURでは初回の訪問リハビリ時に、ご自宅の中でどの場所で行うのが安全かを必ず確認しています。
膝や腰が痛くても体操できますか?
痛みの原因・程度によって異なります。軽い筋肉疲労程度であれば、痛みが出ない範囲で行うことに問題はありません。しかし、膝関節症・腰椎圧迫骨折・変形性関節症など診断がある場合は、必ず担当医や理学療法士に相談してから始めてください。この記事で紹介した「座ったまま膝伸ばし」や「かかと上げ」は比較的負担が少ない体操ですが、個人の状態によって適した運動は異なります。OURではご利用者一人ひとりの身体状況を評価したうえで、適切な体操メニューを提案しています。
体操はいつ行うのが効果的ですか?
決まった時間に行うことが習慣化の観点から重要ですが、体操の効果という面では特に時間帯の差はありません。ただし、起床直後は血圧変動が大きく転倒リスクがやや高いため、朝食後や午前中の落ち着いた時間が取り組みやすいでしょう。OURの在宅リハビリ担当PTも、「いつでもいいから毎日」をまず目標にすることをお勧めしています。週3回以上継続することで、おおむね4〜8週間後に効果を実感できるケースが多いです。
どれくらいで効果が出ますか?
個人差はありますが、週3〜5回の継続で4〜8週間後に「立ち上がりが楽になった」「つまずく回数が減った」と感じる方が多いです。筋肉そのものが増えるには3か月程度かかるとされていますが、神経系の改善(動作の正確さ・反応の速さ)は比較的早い段階から起きます。「転倒ゼロを保証する」体操はありませんが、継続的な運動習慣は転倒リスクを有意に下げることが複数の研究で示されています。OURでは3か月ごとにリハビリの評価を行い、体操内容を適宜見直しています。
訪問リハビリと自主トレはどう使い分ければよいですか?
訪問リハビリ(PTやOTが自宅を訪問する専門的なリハビリ)と自主トレは、車の両輪のような関係です。訪問リハビリでは身体評価・動作分析・環境調整・メニュー作成を行い、自主トレでそれを日々の生活の中で定着させます。専門職が週1〜2回訪問し、残り5〜6日は自主トレで維持・向上を図るイメージです。OURでは訪問時に自主トレの実施状況を確認し、難しすぎる・簡単すぎると感じる場合は内容を調整しています。転倒リスクが高い方は早めにケアマネジャーや訪問看護ステーションに相談されることをお勧めします。
家族がいない一人暮らしですが、安全に続けられますか?
一人暮らしの方でも、安全に行うための工夫で継続できます。椅子を壁に固定・背もたれを必ず使う・携帯電話を手の届く場所に置いておく、などの準備が有効です。また、転倒した場合にすぐ助けを呼べるよう、緊急通報端末(宮崎市の見守りサービスなど)の導入も検討してください。OURでは一人暮らしのご利用者が安全に体操を行えるよう、訪問時に環境設定を一緒に行っています。24時間・365日オンコール体制を整えているため、体操中の急な不調でもすぐに相談いただける環境です。
訪問看護は体操の指導もしてくれますか?
はい、OUR訪問看護ステーションでは看護師による健康管理・生活指導のほか、理学療法士(PT)・作業療法士(OT)による在宅リハビリも提供しています。転倒予防の体操指導はリハビリ職の専門領域ですが、看護師との連携により転倒リスクの早期把握から環境整備・服薬確認まで総合的にサポートできます。宮崎市・国富町・高岡町・綾町にお住まいの方は、まずケアマネジャーか当ステーションに直接ご相談ください。
まとめ
- 転倒は筋力・バランス・環境の複合要因で起きる。体操は「筋力強化」と「神経筋協調性の向上」の両面に働く
- 「椅子スクワット・かかと上げ・片脚立ち・膝伸ばし」の4種類を5分でこなせる。道具不要で今日から始められる
- 「ついで体操・記録表・家族と一緒」の三つの工夫が継続のカギ。週3回以上・4〜8週間継続で効果を実感しやすい
- 痛みや持病がある場合は自己判断せず、訪問リハビリや訪問看護を活用して専門職と一緒に取り組むことが安全で効果的
今日できる一歩:まず「椅子に深く座って、右膝を伸ばして3秒キープ」を1回だけやってみてください。それが5分間体操の出発点です。
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参考文献一覧
- 「高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン第2版」(厚生労働省・2019年)
- 「介護予防マニュアル改訂版」(厚生労働省・2012年)
- 「転倒予防のための運動介入に関するエビデンス」日本老年医学会雑誌(日本老年医学会)
- 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(厚生労働省・2024年)https://www.mhlw.go.jp/
- 「地域における保健師等による在宅療養支援の手引き」(厚生労働省)
この記事を監修した人
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
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