
「親の家、このままだと転びそうで心配」「手すりをつけた方がいいのか、それとも歩行器を使った方がいいのか分からない」在宅生活を続けるうえで、住まいの環境は本人の安全と自立に直結します。
この記事では、訪問看護の作業療法士(OT)が行う「住環境の提案」とは具体的に何をすることなのか、介護保険で使える制度と合わせて解説します。
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住環境の提案とは、身体機能に合わせて自宅の動線・段差・用具を見直す作業療法士の専門的な視点です
住環境の提案は、単に「手すりをつける」「段差をなくす」ということではありません。その方の身体機能(筋力・バランス・可動域)、動作の特徴、生活パターンを踏まえたうえで、「どこに」「どのような形で」環境を整えると安全かつ自立した生活が続けられるかを専門的に評価し提案するものです。
たとえば同じ「手すりが必要」という状況でも、麻痺がある方と、単に筋力が低下している方とでは、適した手すりの高さや角度、握り方が異なります。作業療法士は、実際の動作を見ながらミリ単位で位置を調整することもあります。
自宅でよく見直される場所は、トイレ・浴室・そして寝室からリビングまでの動線の3つです
トイレ
立ち座りの動作、便座の高さ、手すりの位置がポイントになります。和式から洋式への便器の取替えは、介護保険の住宅改修の対象工事にも含まれます。
また、トイレットペーパーホルダーや呼び鈴の位置も、実際に座った姿勢から無理なく手が届くかを確認します。設置後に「位置が使いにくい」と分かるケースを防ぐため、可能であれば実際に座って試すことをお勧めします。
浴室
またぎ動作のある浴槽の縁の高さ、洗い場の滑りやすさ、シャワーチェアの高さなどを確認します。転倒が起きやすい場所のひとつです。
寝室からリビングまでの動線
夜間トイレに行く際の通路の明るさ、段差、手すりの連続性を確認します。日中はほとんど問題なくても、夜間や体調不良時にリスクが高まる動線です。
フットライトの設置や、ベッドサイドにポータブルトイレを置くといった工夫も、夜間の転倒リスクを下げる有効な選択肢です。工事を伴わないため、まず試してみやすい対策のひとつです。
介護保険の住宅改修は、要介護度にかかわらず支給限度基準額20万円まで利用できます
要介護・要支援認定を受けている方は、介護保険の住宅改修費支給制度を利用できます。支給限度基準額は原則として要介護度にかかわらず20万円で、費用の7〜9割(所得に応じた自己負担割合による)が支給されます。対象となる工事は、手すりの取付け、段差の解消、床材の変更、扉の取替え(引き戸化など)、洋式便器への取替えなどです。
複数の工事を組み合わせる場合、優先順位を決めることが大切です。転倒リスクが高い場所から着手する、といった考え方で、限られた予算内でも効果を実感しやすい改修になります。
なお、要介護状態区分が3段階以上上がった場合や、転居した場合には、再度20万円分の支給限度額が設定される仕組みになっています。
一度の改修で予算を使い切らず、まず優先度の高い箇所から着手し、状態の変化に応じて残りの予算を使うという計画的な進め方をお勧めすることもあります。
福祉用具貸与では、車椅子・特殊寝台・歩行器などの用具を月単位のレンタルで利用できます
介護保険の福祉用具貸与では、車椅子、特殊寝台(介護ベッド)、床ずれ防止用具、体位変換器、手すり、スロープ、歩行器、歩行補助つえなどをレンタルで利用できます。要介護度によって貸与できる用具の種類に制限がある点には注意が必要です。購入が必要な用具(腰掛便座など)は「特定福祉用具販売」という別の枠組みになります。
要支援・要介護1の方は、原則として車椅子や特殊寝台の貸与対象外となりますが、状態によっては例外的に利用できる場合があります。該当するかどうかはケアマネジャーが確認します。
住宅改修は、いきなり工事を依頼せず「まず相談」から始めるのが失敗しない進め方です
住宅改修は、事前申請が必要で、工事後に市区町村へ完了報告をする流れになります。いきなり業者に工事を依頼するのではなく、まずケアマネジャーに相談し、作業療法士による自宅での動作評価を受けたうえで、本当に必要な改修内容を絞り込むことをおすすめします。工事してから「思っていたのと違った」となるケースを防ぐためです。
リフォームより先に、工事を伴わない「置くだけ」の工夫から試すこともあります
すぐに大掛かりな改修をするのではなく、突っ張り棒タイプの手すりや滑り止めマット、ポータブルトイレなど、工事を伴わない福祉用具から試してみて、実際の生活の中でどこまで効果があるかを確認してから住宅改修を検討する、という進め方も少なくありません。
よくある質問
住宅改修は賃貸住宅でも利用できますか?
利用できます。ただし、原状回復の観点から大家さんや管理会社の承諾が必要になる場合が多いため、事前の確認が必要です。
住宅改修の費用は後から戻ってくるのですか?
多くの市区町村では、いったん全額を立て替えて支払い、工事後に申請して自己負担分を除いた金額が払い戻される「償還払い」が基本です。自治体によっては、自己負担分のみを業者に支払う「受領委任払い」に対応している場合もあります。
福祉用具はレンタルと購入、どちらがいいのですか?
車椅子や介護ベッドなど、体格や状態の変化に応じて交換が必要になりやすい用具はレンタルが基本です。腰掛便座や入浴用いすなど、衛生面から他人との共用になじまない用具は購入(特定福祉用具販売)の対象になります。
作業療法士の自宅評価には何を準備しておけばいいですか?
特別な準備は不要です。普段どおりの生活の様子(いつも使っているトイレや浴室の動線、椅子の高さなど)を見せていただくことが、最も参考になります。
まとめ
今日できる一歩:住まいの中で「ここが不便・危ない」と感じる場所があれば、写真に撮っておいてください。次回の訪問時にPT・OTへ見せていただくと、具体的な提案がしやすくなります。
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参考文献一覧
- 居宅介護住宅改修費(介護予防住宅改修費)とは(厚生労働省 老企第42号通知に基づく制度)
- 福祉用具貸与・特定福祉用具販売の対象種目(厚生労働省 介護保険制度)
- 生活行為向上マネジメント(MTDLP)とは(一般社団法人 日本作業療法士協会)
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