
「訪問看護は給料がいいと聞いたけど、本当?」「同じ訪問看護でも事業所によって給料が違うのはなぜ?」。転職サイトで年収の目安を見ても、なぜその金額になるのかまでは分かりにくいものです。
訪問看護師の給料は、個人の頑張りだけで決まるわけではありません。国が決めた「診療報酬・介護報酬」という価格表に基づいてステーションに入るお金(報酬)があり、そこから給料や教育費、設備費などが支払われています。この記事では、訪問看護の報酬がどういう仕組みになっているのか、転職を考えている方にも、すでに訪問看護で働いている方にも分かるように解説します。
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訪問看護の報酬とは、国が決めた価格表(診療報酬・介護報酬)に基づいて、1件の訪問ごとにステーションへ支払われるお金のこと

訪問看護は、利用者さんから直接いただく料金ではなく、医療保険または介護保険からステーションに支払われる「報酬」によって成り立っています。この報酬の金額は、訪問看護ステーションが自由に決めているわけではなく、国が定める診療報酬・介護報酬という価格表(公定価格)に基づいています。
たとえば2026年度の診療報酬改定では、医療保険の訪問看護基本療養費(Ⅰ)は、看護師等による訪問の場合、週3日目までが5,550円、週4日目以降が6,550円と定められています。介護保険では、訪問時間に応じて20分未満314単位、30分未満471単位、30分以上1時間未満823単位といった単位数が決まっています。
つまり、訪問看護師が1件訪問すると、あらかじめ決まった金額がステーションに入ってくる、という仕組みです。これは病院のように自由診療で価格を設定できる業態とは異なり、「労働集約型」で「公定価格」というビジネスモデルの特徴です。
医療保険と介護保険、どちらが適用されるか
利用者さんの年齢や病状によって、医療保険と介護保険のどちらが適用されるかが決まります。訪問看護の医療保険と介護保険の使い分けで詳しく解説していますが、どちらの保険が適用されるかによって、基本療養費の単価や算定できる加算の種類が変わります。
基本報酬に「加算」が乗ることで、ステーションの収益、そして給与の原資が変わる
基本療養費・基本報酬だけでは、24時間対応や重症度の高い利用者さんへの対応など、手厚い体制を維持するための原資が十分ではありません。そこで、体制や対応内容に応じて「加算」が上乗せされる仕組みになっています。
主な加算の例
| 加算の種類 | 評価する内容 | 目安 |
| 24時間対応体制加算(医療保険)/緊急時訪問看護加算(介護保険) | 利用者・家族からの相談に24時間対応できる体制 | 月6,400円前後(医療保険) |
| 特別管理加算 | 医療依存度の高い利用者への計画的な管理 | 状態により算定 |
| 看護体制強化加算 | ターミナルケアや重症者対応の実績 | 一定の実績要件あり |
| 機能強化型訪問看護管理療養費 | 人員体制・重症者対応実績が高い水準のステーション | 届出制、管理療養費が上乗せ |
訪問看護の加算一覧では、こうした加算の種類と算定条件をより詳しく整理しています。ステーションがどれだけ加算を算定できているかは、そのステーションがどれだけ手厚い体制・実績を持っているかの一つの目安にもなります。転職先を検討する際、「24時間対応体制加算を取っているか」「機能強化型の届出をしているか」を確認すると、そのステーションの体制の充実度がうかがえます。
2026年6月、訪問看護も「処遇改善加算」の対象になった
これまで訪問看護は、介護職員等処遇改善加算の対象外とされてきました。訪問看護は医療保険にまたがるサービスであり、介護職員を対象とした処遇改善の枠組みとは別に扱われていたためです。
この状況が、令和8年度(2026年度)介護報酬改定で変わりました。2026年6月1日から、訪問看護も新たに処遇改善加算の対象に加わり、加算率1.8%が設定されています。
処遇改善加算は、どうやって給与に結びつくのか
処遇改善加算は、ステーションが算定した加算分を、賃金の改善(基本給の引き上げ・手当の新設・ボーナスの増額など)として職員に配分することが義務づけられている加算です。つまり、ステーションの売上がそのまま給与に直結するわけではありませんが、この加算に関しては「職員の賃金を上げるために使う」という使途が制度上定められています。
訪問看護の介護職員等処遇改善加算とは?では、算定要件や計算方法をより詳しく解説しています。転職を考えている方は、応募先のステーションがこの加算を算定しているかを確認することで、賃金改善への取り組み姿勢を知る手がかりになります。
給与はどう決まる?基本給・手当・ボーナスの内訳

ステーションに入る報酬(基本療養費+加算)は、給与だけに使われるわけではありません。教育費、設備・ICT投資、採用コスト、建物の維持費など、良い支援を続けるための原資として使われます。そのうえで、給与は基本給に加えて、いくつかの手当によって構成されます。
- 基本給:経験年数・資格・役職などに応じて決まる土台部分
- オンコール手当:夜間・休日の電話対応や緊急訪問に備える待機に対する手当
- 訪問件数に応じた手当・インセンティブ:事業所によって、訪問件数や対応内容に応じた手当が設定される場合がある
- 資格手当:専門看護師・認定看護師など、特定の資格に対する手当
- ボーナス(賞与):事業所の業績や個人の評価に応じて支給
具体的な年収の目安や、病院勤務との比較については、訪問看護師の給与・年収で詳しく解説しています。この記事では「いくらもらえるか」ではなく、「なぜその金額になるのか」という仕組みの部分を中心にお伝えしています。
具体的な数字で見る、訪問看護師の給与モデルケース
言葉で「基本給+各種手当」と説明されても、実際の金額感はイメージしにくいものです。ここでは、OURの採用情報に公開されている給与体系をもとに、正看護師(経験数年・標準的な働き方)を想定した仮のモデルケースで、支給額の積み上がり方を見てみます。
> このモデルケースは、OUR公式の募集要項の数値をもとに、説明のために作成した仮定の例です。実在する特定スタッフの給与を示すものではなく、オンコール回数・残業時間・扶養状況などにより実際の金額は変動します。
OURの募集要項(正看護師)に記載されている給与体系
| 項目 | 内容 |
| 基本給 | 200,000円〜(試用期間6ヵ月は190,000円) |
| 資格手当(正看護師) | 20,000円 |
| 身だしなみ手当 | 5,000円 |
| 職能手当 | 0〜35,000円(ラダー評価に連動、半期または年1回見直し) |
| オンコール手当 | 待機1,500円/日、実働訪問5,000円/回+時間外手当 |
| 通勤手当 | 実費支給(上限30,000円) |
| 賞与 | 年1回 |
モデルケース:月の支給額を積み上げてみる
職能手当を中間程度(15,000円)、オンコール待機を月10日、実働訪問を2回、残業を月20時間と仮定すると、支給額はおおよそ次のように積み上がります。
| 項目 | 金額(円) | 計算の根拠(仮定) |
| 基本給 | 200,000 | 募集要項の基本給 |
| 職能手当 | 15,000 | ラダー評価0〜35,000円の中間値と仮定 |
| 資格手当 | 20,000 | 正看護師 |
| 身だしなみ手当 | 5,000 | 一律支給 |
| オンコール手当(待機) | 15,000 | 1,500円×10日と仮定 |
| オンコール手当(実働) | 10,000 | 5,000円×2回と仮定 |
| 通勤手当 | 5,000 | 実費の一例として仮定 |
| 残業手当 | 約34,500 | 基礎賃金から時間単価を算出し、月20時間の残業と仮定して計算 |
| 支給合計(目安) | 約304,500 |
ここからさらに、処遇改善加算やベースアップ評価料による手当が上乗せされる場合があります。配分額はステーションの体制や算定状況によって異なるため、金額は一律ではありません。
手取り額の目安
支給合計から、健康保険・厚生年金・雇用保険といった社会保険料、所得税・住民税が控除されます。一般的に、控除額は支給額のおよそ15%前後になることが多く、このモデルケースでは手取り額の目安はおよそ25万円台後半になります。扶養家族の有無や居住地の住民税率によっても変わるため、あくまで目安として捉えてください。
このモデルケースから分かること
- 基本給だけを見ると見劣りしても、資格手当・職能手当・オンコール手当を合わせると、支給額はまとまった金額になる
- オンコール待機・実働の回数によって、月々の支給額は変動する
- 残業時間や処遇改善手当の配分方法は事業所によって異なるため、面接・見学時に確認することが大切
転職を検討する際は、基本給の金額だけで比較するのではなく、「どんな手当があるか」「それぞれどのくらいの頻度・金額で発生するか」まで確認すると、実際の手取りイメージに近づきます。
転職を考えている方へ:求人の給与額だけでなく、報酬の仕組みも見ておきたい理由
転職先を比較するとき、提示された給与額だけを見比べるのは自然なことです。ただ、その給与がどのような報酬構造のうえに成り立っているかを知っておくと、将来の見通しも立てやすくなります。
- 加算の算定状況(24時間対応体制加算・機能強化型管理療養費など)は、そのステーションの体制の充実度を示す
- 処遇改善加算を算定しているかどうかは、賃金改善への取り組み姿勢を示す
- オンコール体制がどう設計されているか(交代制か、特定の人に偏っていないか)は、長く働き続けられるかに直結する
面接や見学の際に、「どんな加算を算定していますか」「処遇改善加算はどう配分されていますか」と質問することは、決して失礼なことではありません。むしろ、事業所の体制を正しく理解しようとする姿勢として、歓迎されることが多いはずです。
今働いているスタッフへ:自分の訪問・記録が、報酬という形で組織に戻ってくる
すでに訪問看護で働いている方にとって、報酬の仕組みを理解することには別の意味があります。日々の訪問、記録、ケアマネジャーや主治医との連携といった一つひとつの仕事が、報酬という形でステーションに戻り、それがまた次の採用・教育・設備投資、そして自分たちの給与に還元されていく、という循環があります。
OURでは、報酬や加算の仕組みを経営側だけが把握するものにせず、スタッフと一緒に理解していくことを大切にしています。良い訪問看護を提供することと、適切な報酬を得ることは対立するものではありません。報酬の仕組みを知ることは、自分たちの仕事がどう評価され、それがどう生活や職場環境に結びついているかを理解する手がかりになります。
こんな方は、まずお気軽にご相談ください。
- 訪問看護への転職を考えているが、給与の仕組みがよく分からない
- 今のステーションの加算の取り方や給与体系に疑問がある
- OURの採用・見学について詳しく聞きたい
FAQ
Q1. 訪問看護師の給料は、なぜ事業所によって差が出るのですか?
事業所が算定している加算の種類や数、処遇改善加算の配分方法、オンコール手当の設計などが異なるためです。同じ「訪問看護」でも、体制が手厚い事業所ほど加算による収益が大きく、給与に反映しやすい傾向があります。
Q2. 処遇改善加算は、必ず給与に反映されるのですか?
処遇改善加算は、職員の賃金改善に使うことが制度上義務づけられている加算です。ただし、配分方法(基本給に組み込むか、手当として別に支給するか等)は事業所によって異なります。気になる場合は、面接や見学の際に確認することをお勧めします。
Q3. 訪問件数が多いほど給料は上がりますか?
事業所によって異なります。訪問件数に応じた手当やインセンティブを設定している事業所もありますが、基本給や固定の手当を中心とする事業所もあります。給与の仕組みは事業所ごとに違うため、求人情報だけでなく面接時に確認することが大切です。
Q4. 医療保険と介護保険、どちらの利用者を担当するかで給料は変わりますか?
直接給料が変わるわけではありませんが、医療保険・介護保険それぞれで算定できる加算の種類や単価が異なるため、事業所の収益構造には影響します。個人の給与に直結するかどうかは、事業所の給与制度によります。
Q5. 24時間対応体制加算を取っている事業所は、オンコールの負担が大きいということですか?
必ずしもそうとは限りません。24時間対応体制加算は「対応できる体制を整えていること」への評価であり、オンコールをどう分担するか(交代制の人数、バックアップ体制など)は事業所の運営方法によって異なります。見学時に、オンコールの実際の頻度や体制について確認することをお勧めします。
Q6. OURではどのように報酬の仕組みを考えていますか?
OURでは、報酬を得ることと良い訪問看護を提供することは対立しないと考えています。加算の算定状況や処遇改善加算の配分についても、スタッフに共有しながら運営しています。見学・面接の際には、給与の仕組みについて遠慮なく質問していただければと思います。
Q7. 記事中のモデルケースは、実際にもらえる金額として保証されますか?
いいえ。本文中のモデルケースは、OUR公式の募集要項に記載された給与体系をもとに、仕組みを理解しやすくするために仮定の条件(オンコール回数・残業時間など)を設定して作成した試算です。実際の支給額は、個人の経験・資格・勤務状況によって変動します。正確な金額は、面接・見学時にご確認ください。
まとめ:訪問看護の給与は、公定価格による「報酬」の上に成り立っている
- 訪問看護の収入は、国が定める診療報酬・介護報酬という公定価格に基づく「報酬」によって成り立っている
- 基本療養費に加えて、24時間対応体制加算・特別管理加算・機能強化型管理療養費などの「加算」が、体制の充実度に応じて上乗せされる
- 2026年6月から、訪問看護も介護職員等処遇改善加算(加算率1.8%)の対象になった
- 給与は基本給・オンコール手当・資格手当・ボーナスなどで構成され、事業所の報酬構造によって内容が異なる
- OURの募集要項をもとにしたモデルケースでは、基本給に各種手当が積み上がることで、支給額はまとまった金額になる
- 転職を考える際は、給与額だけでなく、加算の算定状況や処遇改善加算の配分方法も確認すると、事業所の体制が見えてくる
今日できる一歩:転職を考えている方は、気になる事業所に「どんな加算を算定していますか」と質問してみましょう。今働いている方は、自分の訪問や記録がどのように報酬という形で組織に反映されているかを、一度管理者に聞いてみるのもよいかもしれません。
OUR訪問看護ステーション|宮崎市・採用情報
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参考文献一覧
- 令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】厚生労働省保険局医療課 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001226864.pdf
- 訪問看護における退院時共同指導加算、特別管理指導加算、退院支援指導加算(介護保険・医療保険)カイポケ訪問看護マガジン https://houkan.kaipoke.biz/magazine/addition-subtraction/leave-hospital.html
- 介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順について(厚生労働省・令和8年3月)
- OUR訪問看護ステーション 採用情報(給与体系) https://our-co.jp/recruit/
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- 訪問看護の医療保険と介護保険の使い分け:どちらが適用されるか判断する方法
- 訪問看護への転職を考えたら読む:病院との違い・給与・1日の流れを解説
監修:中田富久(認定作業療法士・OUR代表) 執筆:OUR訪問看護ステーション 看護・リハビリチーム