
「仕事や通院に車が欠かせない」「運転できないと生活が立ち行かない」高次脳機能障害からの回復過程で、運転再開は多くの方にとって切実な関心事です。一方で、注意力や判断力に影響が残る場合、安全に運転できるかどうかを慎重に見極める必要があります。
この記事では、日本作業療法士協会や日本高次脳機能障害学会が示す基準をもとに、運転再開までの一般的な流れと判断のポイントを解説します。
運転再開の可否は、最終的に公安委員会が診断書をもとに判断します
道路交通法では、一定の病気等にかかっている場合の運転免許の可否について定められており、脳卒中や頭部外傷などによる後遺症がある場合も対象となり得ます。医療機関は診断書の作成を担いますが、運転の許可そのものを判断するのは公安委員会です。自己判断で運転を再開することは、事故のリスクだけでなく法的な問題にもつながるため避ける必要があります。
運転再開までは、机上検査・シミュレーター評価・実車評価という段階を踏むのが一般的です
日本作業療法士協会の運転再開支援に関する資料では、まず神経心理学的検査などの机上評価を行い、次にドライビングシミュレーターで反応時間や危険場面での判断を確認し、可能であれば実際の車を用いた評価・訓練を行うという段階的な流れが示されています。すべての医療機関でこの一連の評価ができるわけではないため、対応可能な医療機関を確認することも必要です。
評価では、注意力・処理速度・危険予測などの能力が特に重視されます
日本高次脳機能障害学会が示す運転に関する神経心理学的検査の適応と判断についての資料では、注意機能や処理速度、視空間認知、遂行機能などが、安全運転に関わる重要な能力として評価の対象になるとされています。単に「体が動く」だけでなく、複数の情報を同時に処理し、とっさの状況に対応できるかが問われます。
再開の判断には、病状の安定性や発作の有無も重要な条件になります
運転再開の判断においては、原因疾患の再発リスクが低く症状が安定していること、てんかん発作などの既往がないこと、視力・視野に問題がないことなども条件として挙げられています。高次脳機能障害の症状だけでなく、身体面・医学的な安定性も含めて総合的に判断されます。
「運転できない」と判断された場合も、移動手段を段階的に検討することができます
すぐに運転再開が難しいと判断された場合でも、それで終わりではありません。公共交通機関、家族による送迎、福祉タクシー、移動支援サービスなど、地域の資源を組み合わせて生活の移動手段を確保する方法を、ケアマネジャーや訪問看護と一緒に検討することができます。宮崎市内でも地域によって利用できる移動支援に差があるため、早めに相談しておくと安心です。
運転再開を焦らないことも、安全のためには大切な視点です
「早く運転を再開したい」という気持ちは自然なものですが、焦って自己判断で運転し、事故につながってしまっては元も子もありません。評価を受けること自体が、安全に運転を再開するための、そして万が一のときにご本人と周囲を守るための重要なステップだと理解しておくことが大切です。
よくある質問
運転再開の評価はどこで受けられますか?
医療機関によって対応状況が異なります。まずは主治医やリハビリテーション科に、運転再開支援に対応しているかを確認してください。対応していない場合は、対応可能な専門機関を紹介してもらえることがあります。
評価にはどのくらいの期間がかかりますか?
症状の程度や医療機関の体制によって異なりますが、机上検査から実車評価まで含めると、数週間から数か月かかることも珍しくありません。余裕を持ったスケジュールで臨むことをお勧めします。
一度「運転不可」と判断されたら、その後もずっと運転できませんか?
そうとは限りません。リハビリによって注意力や処理速度が改善した場合、再評価によって運転再開が可能になることもあります。時間を置いて再度相談することも選択肢のひとつです。
家族が「運転してほしくない」と感じている場合、どう伝えればいいですか?
本人の自尊心に配慮しつつ、「安全に運転を再開するために、まず専門機関で評価を受けてほしい」という形で伝えると、対立を避けながら受診につなげやすくなります。
まとめ
今日できる一歩:運転再開を希望している場合は、自己判断で運転を再開する前に、まず主治医に「運転再開の評価を受けたい」と伝えて相談することから始めてください。
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
“あなたらしい”在宅生活を、24時間・365日サポートします
☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時
参考文献一覧
- 押さえておきたい!運転再開支援の基礎(一般社団法人日本作業療法士協会 運転と作業療法委員会)
- 脳卒中,脳外傷等により高次脳機能障害が疑われる場合の自動車運転に関する神経心理学的検査法の適応と判断(日本高次脳機能障害学会、2022年)
- 「高次脳機能障害」診断基準(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部、国立障害者リハビリテーションセンター)
次に読まれている記事
- 高次脳機能障害の症状とは?記憶障害・注意障害・遂行機能障害を種類別に解説:症状の種類と具体例を詳しく解説
- 高次脳機能障害のリハビリと訪問看護:自宅でできる訓練とOT/PT/STの役割
- 高次脳機能障害の検査方法とは?診断に使われる神経心理学的検査を解説:診断に使われる検査の種類を解説
- 高次脳機能障害で使える制度まとめ:障害者手帳・障害年金の申請方法
- 訪問看護のリハビリとは?理学療法士・作業療法士ができること完全ガイド:PT・OTが行うリハビリ全体の内容を解説
この記事を監修した人
TEAM
OUR訪問看護ステーション
看護・リハビリチーム
看護師7名・理学療法士1名・作業療法士3名 / 宮崎市
宮崎市を中心に24時間・365日の訪問看護を提供。在宅透析・人工呼吸器・CV管理などの高度医療処置から生活期リハビリまで対応。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、認定作業療法士・中田富久が代表を務め、医師・ケアマネジャーと連携し利用者一人ひとりの在宅生活を支援している。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。