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ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

高次脳機能障害の症状とは?記憶障害・注意障害・遂行機能障害を種類別に解説

「怪我や病気は治ったはずなのに、以前と様子が違う」「物忘れがひどくなった、怒りっぽくなった」脳卒中や頭部外傷の後、体は回復してきたのに、こうした変化に戸惑うご家族は少なくありません。これらは高次脳機能障害の症状である可能性があります。

この記事では、国立障害者リハビリテーションセンターが示す診断基準をもとに、高次脳機能障害の代表的な症状を種類別に、具体的な生活場面の例とともに解説します。

高次脳機能障害とは、脳の損傷によって記憶・注意・判断などの認知機能が障害された状態を指します

厚生労働省・国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害診断基準では、「高次脳機能障害」は学術用語としては脳損傷に起因する認知障害全般を指すとされ、失語・失行・失認といった巣症状のほか、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれると定義されています。診断には、事故や疾病による脳の損傷が確認されていること、日常生活や社会生活に制約があり、その主な原因が認知障害であること、MRIやCTなどで脳の器質的病変が確認されていることが必要とされています。

外見上は身体の麻痺などが目立たないため、「見た目には分からない障害」と言われることもあります。周囲から症状が理解されにくく、本人も自覚しづらいことが、生活上の困難につながりやすい特徴です。

高次脳機能障害は、交通事故や転倒による頭部外傷、脳卒中(脳梗塞・脳出血・くも膜下出血)、低酸素脳症などが主な原因となります。厚生労働省の調査では、脳血管障害が原因の大部分を占めるとされており、高齢者だけでなく働き盛りの世代にも起こりうる障害です。

記憶障害は、新しいことを覚えられない、最近の出来事を忘れてしまう症状です

新しく体験したことを覚えられなくなる、少し前に聞いたことをすぐに忘れてしまう、約束を忘れる、同じ話を繰り返す、といった症状が代表的です。昔の記憶(発症前の出来事)は比較的保たれることが多く、「新しいことを覚える力」が特に影響を受けやすいとされています。

生活の場面では、「薬を飲んだこと自体を忘れる」「訪問看護師が来たことを覚えていない」といった形で現れることがあります。メモやカレンダー、リマインダーアプリなど、記憶を外部に残す工夫が有効な対応のひとつです。

OURの訪問看護でも、服薬カレンダーや訪問予定表を目につく場所に貼るなど、記憶に頼らずに生活が回る仕組みづくりを、ご本人・ご家族と一緒に考えることがあります。

注意障害は、一つのことに集中できない、複数のことを同時に処理できない症状です

会話の途中で気が散る、テレビや周囲の音が気になって作業が続かない、複数の作業を並行して行うと混乱する、長時間集中できないといった症状が含まれます。注意障害は、記憶障害や遂行機能障害の背景にも影響していることが多く、リハビリでは注意機能そのものを鍛える訓練が行われることもあります。

注意障害には、特定の対象に注意を向け続ける「持続性注意」、複数の情報から必要なものを選ぶ「選択性注意」、複数の作業を同時に行う「配分性注意」など、いくつかの種類があるとされています。

生活の中では、静かで刺激の少ない環境を用意する、一度に一つの作業だけに取り組んでもらう、といった環境調整が症状の影響を軽減する助けになります。

遂行機能障害は、物事の計画を立てて順序立てて実行することが難しくなる症状です

献立を考えて料理を作る、外出の準備をする、仕事の段取りを組むといった、目的に向かって計画・実行・修正するプロセスがうまくいかなくなります。一つひとつの動作はできても、全体の手順を組み立てることが難しく、「何から手をつければよいか分からない」状態になることがあります。

対応としては、手順を紙に書き出して順番に示す、一度にたくさんの指示を出さず一つずつ伝える、といった工夫が有効とされています。

社会的行動障害は、感情のコントロールが難しくなり対人関係に影響が出る症状です

些細なことで怒りやすくなる(易怒性)、意欲が低下してぼんやりしていることが多くなる、周囲の状況を考えずに発言・行動してしまう、逆に自発性が乏しくなるといった症状が含まれます。性格が変わったように見えることから、ご家族が最も戸惑いやすい症状のひとつです。

「怒りっぽくなった」「人が変わったようだ」と感じるご家族の声は少なくありません。これは本人の人格そのものが変わったのではなく、脳損傷による症状であるという理解が、家族の負担を軽くする第一歩になります。

感情的な反応の背景に「疲れやすさ」や「見通しの立たない不安」が隠れていることも多く、頭ごなしに注意するのではなく、原因となっている状況を取り除く関わり方が求められます。

失語症・失行・失認も高次脳機能障害に含まれる代表的な巣症状です

失語症は言葉を話す・理解する・読む・書くことが難しくなる症状、失行は運動機能に問題がないのに目的動作(道具の使用など)がうまくできなくなる症状、失認は視力に問題がないのに対象を認識できなくなる症状です。これらは脳の損傷部位によって現れ方が異なります。

症状は本人が自覚しにくく、家族や周囲が気づいて医療機関につなぐことが重要です

高次脳機能障害は、身体機能の回復に比べて周囲から気づかれにくく、本人も「なぜうまくいかないのか分からない」という戸惑いを抱えていることがあります。「以前と様子が違う」と感じた場合は、退院後であっても主治医やかかりつけ医、あるいは訪問看護に相談することで、必要な評価やリハビリにつなげることができます。

よくある質問

高次脳機能障害の症状は時間が経てば自然に良くなりますか?

受傷・発症からの期間や損傷部位、リハビリの取り組み方によって経過は異なります。急性期を過ぎてから回復が進むこともあれば、症状が固定することもあります。個人差が大きいため、定期的な評価とリハビリの継続が大切です。

認知症の症状とどう違うのですか?

高次脳機能障害は脳卒中や頭部外傷など特定の脳損傷が原因で、多くは症状が急激に始まり、その後は比較的安定する経過をたどります。一方、認知症の多くは緩やかに進行する点が異なります。詳しくは別記事で解説しています。

症状に気づいたら何科を受診すればいいですか?

脳神経外科・神経内科・リハビリテーション科などが窓口になります。すでに訪問看護やリハビリを利用している場合は、担当のスタッフに相談することで、必要な受診や検査につないでもらうこともできます。

在宅で症状に気づいたとき、家族はどう対応すればいいですか?

叱ったり無理に正そうとしたりせず、まず「本人にも困っている自覚がある」ことを念頭に置いて接することが大切です。具体的な対応方法は、訪問看護師やリハビリ専門職と一緒に、症状の種類に応じて考えていきます。

まとめ

今日できる一歩:「以前と様子が違う」と感じることがあれば、いつ・どんな場面でその変化に気づいたかをメモしておいてください。受診や相談の際に、症状を具体的に伝える手がかりになります。

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参考文献一覧

  • 「高次脳機能障害」診断基準(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部、国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 高次脳機能障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 認知症疾患診療ガイドライン2026(日本神経学会監修、2026年)

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この記事を監修した人

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OUR訪問看護ステーション

看護・リハビリチーム

看護師7名・理学療法士1名・作業療法士3名 / 宮崎市

宮崎市を中心に24時間・365日の訪問看護を提供。在宅透析・人工呼吸器・CV管理などの高度医療処置から生活期リハビリまで対応。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、認定作業療法士・中田富久が代表を務め、医師・ケアマネジャーと連携し利用者一人ひとりの在宅生活を支援している。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。