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ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

がんの家族を在宅でケアするために|介護者が知っておくべき準備と訪問看護の活用

在宅でがん患者を介護する家族が、一人ですべてを抱え込む必要はありません。訪問看護・訪問介護・レスパイトサービスを組み合わせることで、介護者が無理なくケアを続けられる体制が作れます。

厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業」では、介護者の負担軽減と支援体制の構築を在宅医療の重要課題として位置づけています。また、がん患者の家族介護者における介護負担は在宅療養継続の主要な障壁であることが、緩和ケア領域の研究(Zhang Y, et al. *J Clin Nurs*, 2023)でも示されています。専門職と役割を分担することは、本人により良いケアを届けるための合理的な選択です。

参考:厚生労働省「地域包括ケアシステム(在宅医療・介護連携)」Zhang Y, et al. J Clin Nurs. 2023(PubMed)

この記事では、在宅がん介護で家族がすべき準備・よくある悩みへの対処・訪問看護の活用法を、宮崎市で24時間対応するOUR(アワー)訪問看護ステーションが解説します。

宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応

“あなたらしい”在宅生活を、24時間・365日サポートします

☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時

在宅がん介護で家族が担う役割と限界

家族が実際にしていること

在宅でがん患者を介護する家族は、医療的なケアと日常的なケアの両方を担います。

医療補助的なケア(訪問看護師の指導のもと家族が行うもの):

  • 体温・血圧・SpO₂(酸素飽和度)の測定と記録
  • 内服薬の管理・介助(飲み忘れ防止、食後か否かの確認)
  • 医療用麻薬(オピオイド)のレスキュー薬の準備・確認
  • フェンタニルパッチの交換(訓練を受けた場合)
  • 点滴・経管栄養の補助(専門家の指導後)
  • 体調変化の観察・記録と訪問看護師への報告

日常生活ケア:

  • 食事の準備・介助(飲み込みやすい形態への工夫)
  • 入浴・清拭・排泄の介助
  • 体位変換(床ずれ予防のための寝返りの手伝い)
  • 外出・通院の付き添い
  • 精神的なサポート・会話・傾聴

これらをすべて一人の家族が担い続けることは、現実的には非常に困難です。「できることとできないことを整理し、専門職に任せる部分を明確にする」ことが持続可能な介護の第一歩です。

介護者が陥りやすい「燃え尽き(バーンアウト)」

介護者の精神的・身体的消耗は「介護者疲労(Caregiver Fatigue)」と呼ばれ、研究でもその深刻さが示されています(Zhang Y, et al. Caregiver burden among family caregivers of patients with advanced cancer in a palliative context. *J Clin Nurs*, 2023)。

介護者バーンアウトのサイン:

  • 睡眠が十分に取れず、常に疲れている
  • 「もう限界」「逃げ出したい」という気持ちが続く
  • 介護される本人に対してイライラ・怒りが出てしまう
  • 自分の食事・健康管理が後回しになっている
  • 「自分がいなければ何もできない」という思い込みが強くなっている
  • 趣味や他者との交流がなくなっている

これらは「怠けている」のではなく、心身が限界に近づいているサインです。「まだ頑張れる」と無理を続けることで、うつ状態・体調不良・介護放棄につながるリスクがあります。

重要: 介護者自身に健康上の異変(強い落ち込み・不眠・食欲低下・希死念慮)が続く場合は、かかりつけ医・精神科・心療内科への相談を優先してください。

「罪悪感を持たない」ことが介護継続の条件

「ショートステイを使うと本人がかわいそう」「訪問看護に頼るのは親に申し訳ない」という罪悪感から、専門職の支援を断ってしまう家族がいます。しかしこの罪悪感は、介護者の燃え尽きを加速させます。

大切な考え方の転換:

> 専門職に任せることは「介護から逃げること」ではなく、「本人により良いケアを提供するための選択」です。

看護師やリハビリ職は医療の専門家であり、家族にはできないケアを提供できます。家族にしかできないことは「そばにいること」「話を聞くこと」「日常の関係性を続けること」です。役割を分担することで、家族の時間とエネルギーを「家族にしかできないこと」に向けられるようになります。

在宅がん介護の実際|よくある場面と対応法

夜間の対応をどうするか

夜間の疼痛増強・呼吸困難・不穏(混乱・興奮)は、在宅がん介護で最も家族の負担になる場面の一つです。

夜間対応の基本的な準備:

  1. レスキュー薬(頓服の鎮痛薬)を手の届く場所に置く
  2. 訪問看護ステーションの24時間電話番号を枕元・冷蔵庫など目立つ場所に貼る
  3. 「こういう状態になったら電話する」という基準を訪問看護師と事前に確認しておく
  4. 夜間に家族が一人になる場合のバックアップ体制(他の家族・親族への連絡方法)を決める

「夜中の電話は迷惑では」という遠慮は不要です。24時間対応の訪問看護ステーションは、そのために体制を整えています。

次の状態が出た場合はすぐに電話:

  • 呼びかけに反応しない・意識が薄れている
  • 呼吸が極端に遅い(1分間に8回以下)、または苦しそう
  • 体温38℃以上(特に化学療法中)
  • 強い痛みでレスキューを使っても30分以上改善しない

これらは医学的に緊急性が高い状態です(日本緩和医療学会「がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2020年版」参照)。夜間でも即時対応が必要です。

食事・栄養管理の工夫

がんの進行に伴い、食欲低下・嚥下障害・吐き気が重なって「食べさせること」が介護者の大きな課題になります。

食事介助で気をつけること:

  • 無理に食べさせない(誤嚥性肺炎のリスクが高まる)
  • 少量を複数回に分けて提供する
  • 本人が食べたいものを優先する(栄養バランスよりも「食べる意欲」を大切に)
  • とろみ剤の使用・刻み食など、飲み込みやすい形態に調整する
  • 市販の栄養補助飲料(エンシュアなど)も選択肢に入れる

重要: 嚥下機能が低下している方への食事介助を誤ると、誤嚥性肺炎を引き起こす危険があります。「どのくらいのとろみが必要か」「どんな食形態が適切か」は、訪問看護師や言語聴覚士(ST)に確認してから実践してください。自己判断での形態変更は避けてください。

医療用麻薬(オピオイド)の管理で家族が注意すること

医療用麻薬の管理は、在宅がん介護で特に慎重さが求められる場面です。

家族が絶対にしてはいけないこと:

  • 医師の指示なく薬の量を増やす・変える
  • 余った薬を自己判断で廃棄する(麻薬及び向精神薬取締法により禁止)
  • 他の家族・第三者に薬を渡す

家族が行ってよいこと(訓練・説明を受けた上で):

  • 決められた時刻に定期薬を渡す・確認する
  • 痛みが強くなったときにレスキュー薬を渡す
  • 使用記録をつける
  • 副作用(眠気・便秘・吐き気)の状態を観察・記録する

医療用麻薬の具体的な使い方・管理方法は「がんの痛みは在宅でコントロールできる|医療用麻薬の管理と訪問看護の役割」で詳しく解説しています。

介護者自身を守る|レスパイトケアの活用

レスパイトケアとは

レスパイト(respite)とは「休息・一時的な休み」を意味します。レスパイトケアとは、介護者が一時的に介護から離れて休める時間・場所を確保するための支援を指します。

「介護者が休む」ことは、持続可能なケアを続けるために医療・介護の専門家が強く推奨していることです(厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業」においても介護者支援の重要性が明記されています)。

在宅がん介護で使えるレスパイト手段:

サービス内容保険
ショートステイ施設に短期間入所して介護を代替介護保険
デイサービス日中だけ施設でのケア・入浴・食事介護保険
訪問介護(ホームヘルパー)家事・身体介護を専門職が代替介護保険
訪問看護の頻度増加訪問頻度を増やして介護負担を軽減医療保険/介護保険
緩和ケア病棟への一時入院症状コントロールのための短期入院医療保険

「自宅で看取ると決めた」場合でも、途中でショートステイや一時入院を使うことは可能です。「施設に預けると在宅に戻れなくなる」という心配は不要で、体制を整えれば在宅に戻ることができます。

介護保険の申請と活用

在宅がん介護でレスパイトサービスを使うには、介護保険の要介護認定が必要です。がん患者の場合、末期がんと診断されると「特定疾病」として40歳以上から介護保険が使えます(通常は65歳以上)。

介護保険申請の流れ:

  1. 市区町村の介護保険窓口またはかかりつけ医・病院の相談員に申請の意向を伝える
  2. 認定調査員が自宅を訪問して心身の状態を調査する
  3. 主治医が意見書を作成する
  4. 審査・判定を経て「要介護度」が決定される(申請から約1か月)

がんの場合、状態が急に悪化することがあるため、「まだ大丈夫」と思っているうちに早めに申請することが重要です。認定が下りる前に状態が悪化して使えなかった、というケースを避けるために、在宅療養が始まったタイミングで申請することをお勧めします。

ケアマネジャー(介護支援専門員)が決まれば、サービスの調整・スケジュール管理を一手に引き受けてくれます。

宮崎市でのがん家族介護支援|OURのサポート

家族への指導・相談対応

OURでは、訪問時に患者本人だけでなく介護をしている家族への指導・相談対応を行っています。

家族向けに行っていること:

  • 副作用の観察ポイントと緊急時の判断基準の説明
  • 医療用麻薬・フェンタニルパッチの管理方法の指導
  • 食事形態・口腔ケアの具体的な方法の指導
  • 「これは緊急か・様子を見ていいか」の判断基準の共有
  • 介護者の体調・精神的な状態の確認と相談対応

「こんな細かいことを聞いていいのか」という遠慮なく、何でも相談してください。介護者が安心して動けるように情報を提供することが、訪問看護師の大切な役割の一つです。

多職種チームとの連携

在宅がん介護をより安心して続けるために、訪問診療医・ケアマネジャー・薬剤師・管理栄養士などと連携して対応します。

「訪問看護だけでは解決できない問題」が出てきたとき(嚥下評価が必要・栄養管理を強化したい・緩和ケア専門医の介入が必要など)、適切な専門職につなぐことがOURの役割の一つです。

在宅看取りを含めた在宅がん療養全体については「がん患者が自宅で療養するには?退院後の訪問看護の役割と準備」、看取りの準備については「がんで自宅での看取りを選ぶには?準備と訪問看護の役割をわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。

訪問看護の費用については「訪問看護の料金はいくら?医療保険・介護保険別の費用と自己負担の目安を解説」をご参照ください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 仕事をしながらがん介護を続けることはできますか?

できます。ただし、訪問看護・訪問介護・デイサービスなどのサービスを組み合わせて、「働いている時間帯の介護をどう補うか」を設計することが重要です。介護休業(最大93日)・介護休暇(年5日)などの制度も活用できます(育児・介護休業法)。まずはケアマネジャーと現在の状況を共有し、サービス計画を組み立ててください。

Q2. 介護で自分が精神的につらくなっています。どこに相談すればいいですか?

訪問看護師・ケアマネジャーへの相談が最初の入口です。精神的な消耗が強い場合は、かかりつけ医・心療内科・精神科への相談も検討してください。宮崎市では「宮崎市地域包括支援センター」が介護者の相談窓口としても機能しています。「自分がつらい」と感じたときは、早めに声を上げることが最善の対処です。

Q3. 介護のやり方が正しいかどうか自信がありません。

訪問看護師が訪問するたびに確認・指導します。「これで合っているか不安」という点があればそのまま伝えてください。介護の方法に「完璧」はなく、「本人が安全で苦痛が少ない状態を保てているか」が基準です。

Q4. 夜中に何度も起こされて睡眠不足が続いています。どうすればいいですか?

睡眠不足が続くことは、介護者の健康・判断力・情緒に深刻な影響を与えます。夜間訪問看護の活用・家族で夜間当番を交替する・ショートステイで一時的に施設に預けるなどの方法を検討してください。「夜間だけ誰かに頼みたい」という相談もOURで受け付けています。

Q5. 本人が「迷惑をかけたくない」と言って助けを求めません。どう接すればいいですか?

「迷惑をかけたくない」という気持ちは、多くのがん患者が抱えます。「あなたのそばにいたい」「一緒にいる時間が大切」という気持ちを言葉にして伝えることが、本人の心の負担を軽くする助けになります。訪問看護師が入ることで「プロに任せている部分がある」と本人も感じやすくなり、家族への遠慮が和らぐことがあります。

Q6. 遠方に住んでいて介護に来られる日が限られています。どうすればいいですか?

「遠距離介護」は現代の在宅介護で非常に多いケースです。訪問看護・訪問介護・訪問診療が密に入ることで、家族が毎日いなくても在宅療養を維持できるケースは多くあります。OURでは「来られないときの緊急連絡先」として家族に登録していただき、状態の変化があった際に即時連絡しています。

Q7. 介護保険と医療保険、どちらが使えますか?

末期がんと診断された場合、訪問看護は原則として医療保険が適用され、週の訪問回数制限がありません。介護保険の認定を受けていても、末期がんの場合は医療保険が優先されます。費用の詳細は「訪問看護の料金はいくら?医療保険・介護保険別の費用と自己負担の目安を解説」をご参照ください。

Q8. OURに相談するタイミングはいつでもいいですか?

「まだ早い」「もう少し様子を見てから」は不要です。「在宅がん療養を考えている」という段階でのご相談が、最も余裕を持った体制づくりができます。病院への入院中・退院前のタイミングでもご相談いただけます。

まとめ

在宅がん介護で最も大切なことは、「介護者が一人で抱え込まないこと」です。訪問看護・訪問介護・レスパイトサービスを組み合わせることで、家族の負担を分散しながら在宅療養を続けられます。

「限界になってから相談する」では遅すぎることがあります。「少し疲れてきた」「このままでいいか不安」という段階で、訪問看護師やケアマネジャーに声をかけてください。

宮崎市での在宅がん介護について、OURにご相談ください。

この記事を監修した人

OUR
TEAM

OUR訪問看護ステーション

看護・リハビリチーム

看護師7名・理学療法士1名・作業療法士3名 / 宮崎市

宮崎市を中心に24時間・365日の訪問看護を提供。在宅透析・人工呼吸器・CV管理などの高度医療処置から生活期リハビリまで対応。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、認定作業療法士・中田富久が代表を務め、医師・ケアマネジャーと連携し利用者一人ひとりの在宅生活を支援している。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。

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