
「退院してから、食事のたびにむせるようになった」「とろみをつけなければ飲み込めないと言われた」「誤嚥性肺炎を繰り返すのが怖くて、食事が怖い」脳梗塞や脳出血の後、こうした声を多く聞きます。
脳卒中後に起こる「嚥下障害(えんげしょうがい)」は、食べることや飲み込むことが難しくなる状態です。見えにくい後遺症のひとつですが、誤嚥性肺炎・栄養不足・脱水につながるため、早期からの対応が非常に重要です。
この記事では、嚥下障害の仕組み・在宅で起きやすい問題・誤嚥性肺炎の予防・訪問看護でできるケアについて、宮崎市のOUR(アワー)訪問看護ステーションが詳しく解説します。
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脳卒中後に嚥下障害が起きる理由
よくある質問
「飲み込む」は脳が制御している
食べ物や飲み物を口から胃へ送り込む「嚥下(えんげ)」は、一見単純な動作のように見えますが、実際には脳・口・のど・食道が連動した複雑な動作です。舌で食べ物をまとめ、のどの奥へ送り、気管に入らないよう蓋をしながら食道へ流すこの一連の動作を、脳が神経を通じてコントロールしています。
脳梗塞や脳出血によって脳のダメージが生じると、この制御がうまく働かなくなります。その結果、「のどに残る」「むせる」「うまく飲み込めない」という嚥下障害が現れます。脳卒中後の嚥下障害は、発症直後には約50〜70%の方に見られるとされており、非常に頻度の高い後遺症です。
嚥下障害の主な症状
嚥下障害の現れ方は人によって異なります。以下のような症状が見られる場合は、嚥下障害が疑われます。
食事中・食事後のむせ
食事中にむせるのは、食べ物や液体が気管に入りかけているサインです。ただし、「むせない誤嚥(不顕性誤嚥)」といって、むせずに少しずつ気管に入ってしまうケースもあります。特に睡眠中に口腔内の唾液や分泌物が気管に流れ込む「夜間誤嚥」は気づかれにくく、注意が必要です。
食事に時間がかかる・疲れやすくなった
一口ずつ時間をかけなければ飲み込めない、食事の途中で疲れてしまう、食べられる量が減ったという変化も、嚥下機能の低下のサインです。
声がかれた・声がにごった(湿性嗄声)
食後に声がかれたり、のどに何かからんだような声になる場合、食べ物や液体がのどに残っているサインです。「ゴロゴロした声」「水っぽい声」と表現されることがあります。
体重減少・脱水
食べられる量が減ることで栄養不足や脱水が生じます。退院後に体重が急に落ちた、水分をとりたがらないといった変化にも注意が必要です。
在宅で怖い「誤嚥性肺炎」:繰り返さないための考え方
誤嚥性肺炎はなぜ起きるか
誤嚥性肺炎は、食べ物・液体・唾液などが気管や肺に入り込み、細菌が繁殖することで起きる肺炎です。脳卒中後の方は嚥下機能の低下に加え、免疫力の低下・口腔内の細菌増殖・咳の力の弱まりなど、複数のリスクが重なるため、誤嚥性肺炎を繰り返しやすい状態にあります。
誤嚥性肺炎は一度起きると体力を大きく消耗し、回復に時間がかかります。繰り返すたびに全身状態が悪化し、在宅生活の継続が難しくなるケースもあります。「肺炎を繰り返させない」ことが、在宅生活を長く続けるための重要な柱のひとつです。
食事形態の調整:とろみ・きざみ食の役割
嚥下障害がある場合、食事の形態を調整することで誤嚥のリスクを下げられます。
水やお茶などサラサラした液体は気管に流れ込みやすいため、とろみをつけることで飲み込みやすくなります。とろみの濃度は症状の程度に合わせて調整が必要です。濃すぎると口の中でまとまらず、逆に飲み込みにくくなることもあります。
固形物については、きざみ食・ミキサー食・ソフト食など、ひとりひとりの嚥下能力に合った形態を選びます。「のどごしのよいもの」「べたつかないもの」「ばらけないもの」が、嚥下しやすい食事の基本です。どの形態が適切かは、専門家(言語聴覚士・医師・看護師)のアセスメントをもとに判断します。
口腔ケアが誤嚥性肺炎を防ぐ
誤嚥性肺炎の予防に、口腔ケアは非常に効果的です。口の中を清潔に保つことで、誤嚥したとしても肺に入る細菌の量を減らすことができます。
食後の歯磨き・義歯の手入れ・口腔粘膜の保湿を習慣にすることが基本です。麻痺がある場合は磨きにくい部分が出るため、電動歯ブラシや口腔ケア専用のスポンジブラシを活用します。唾液の分泌を促すマッサージも、口腔内環境を整えるうえで有効です。
体位・食事の姿勢:見落とされがちなポイント
嚥下しやすい姿勢は、座って足底が床についた状態で、体幹をまっすぐ保つことが基本です。ベッドで食事をとる場合は、できるだけ頭を上げ(30〜45度以上)、あごを少し引いた姿勢にすることで、気管への流れ込みを防ぎやすくなります。
食後すぐに横になると逆流が起きやすくなります。食後30分〜1時間は座位または半座位を保つことが推奨されます。
訪問看護でできる嚥下ケアのこと
看護師による嚥下評価と観察
訪問看護師は、食事場面の観察を通じてむせの頻度・食事にかかる時間・食後の声の変化・食べられる量の変化などを継続的に評価します。「先週より食べるのに時間がかかっている」「むせる頻度が増えた」という変化を早期に把握し、主治医への報告・食事形態の見直しにつなげます。
嚥下機能の詳しい評価(嚥下造影・嚥下内視鏡など)は医療機関で行いますが、在宅では看護師が繰り返し観察することで変化をつかむことが重要です。
口腔ケアの実施と家族への指導
口腔ケアが適切に行われているか確認し、必要に応じて訪問時に実施します。麻痺で自分では磨けない部分を中心にケアし、唾液腺マッサージや口腔体操(パタカラ体操など)を取り入れることもあります。
また、家族が毎日の口腔ケアを正しく行えるよう、ケアの手順・道具の選び方・よくある誤りを具体的に指導します。「正しいケアを毎日続ける」ことが誤嚥性肺炎の予防に直結するためです。
食事場面の同席と姿勢・環境の確認
実際の食事場面に同席し、姿勢・食べるペース・むせの状況・介助の方法を確認します。「ベッドの角度が低すぎる」「一口量が多い」「食べさせるスピードが速い」など、改善できるポイントを家族と一緒に確認します。
食事介助の仕方ひとつで誤嚥のリスクが大きく変わります。「どのくらいの量をどのペースで」「一口食べたら次の一口まで少し待つ」といった、具体的な介助の方法を丁寧に伝えます。
主治医・ケアマネジャーとの連携
嚥下機能の低下が続く場合や誤嚥性肺炎の兆候がある場合は、主治医への報告・受診調整を行います。言語聴覚士(ST)によるリハビリが必要と判断される場合は、医療機関や訪問リハビリとの連携を調整します。
栄養不足が心配な場合は、管理栄養士・ケアマネジャーとも連携し、栄養補助食品の活用・訪問栄養指導の導入なども検討します。
宮崎市でのサポート:OUR訪問看護ステーション
24時間対応と緊急時の安心感
嚥下障害がある方の在宅生活では、夜間の誤嚥・急な発熱(肺炎の始まりのサイン)など、夜中に不安になる場面があります。OURは24時間365日のオンコール体制を整えており、夜間でも電話相談・緊急訪問に対応しています。「何かあったらすぐ連絡できる」という安心感が、在宅での療養を続けるための支えになります。
看護師・PT・OTのチームで総合的に支える
嚥下障害は、食べることだけの問題ではありません。姿勢を保つ体幹の力・腕を使って食器を持つ上肢の機能・食事に集中できる認知機能:これらが嚥下に関係しています。OURでは看護師が嚥下・口腔ケア・体調管理を担いながら、PT(理学療法士)が姿勢・体幹のリハビリを、OT(作業療法士)が食事動作・道具の工夫をそれぞれ担い、チームで関わります。
繰り返す誤嚥性肺炎で困っている方へ
「肺炎で入退院を繰り返している」「このまま在宅を続けられるか不安」という状況でも、ご相談ください。現状の評価・食事形態の見直し・口腔ケアの強化・主治医との連携など、できることを一緒に整理します。
脳卒中後の嚥下障害は、むせ・食事に時間がかかる・声がかれるといった形で現れ、誤嚥性肺炎・栄養不足のリスクにつながります。食事形態の調整・口腔ケア・姿勢の確認が予防の基本です。訪問看護では、食事場面の観察・口腔ケアの実施と指導・主治医やケアマネジャーとの連携を通じて、在宅での安全な食生活を支えます。宮崎市で脳卒中後の嚥下ケアについて相談したい方は、OUR訪問看護ステーションにお気軽にご連絡ください。
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この記事を監修した人
株式会社OUR 代表取締役
中田 富久
認定作業療法士
昼は工場、夜は専門学校という4年間を経て作業療法士に。総合病院のICU・SCUから回復期、地域包括ケア病棟まで10年以上、脳卒中・難病・整形疾患の患者さんに関わり続けた。学会発表・座長を複数経験し、宮崎県内でも数名しかいない認定作業療法士として地域ケア会議やフレイル予防の場でも活動中。「病院を出ても、その人らしく生きてほしい」——その思いが、2022年のOUR設立につながった。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、妻(看護師)とともに宮崎市で24時間365日の在宅ケアを届けている。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。