
「何か言いたそうなのに、言葉が出てこない」「話しかけても理解していないのか、反応が薄い」「本人が一番つらそうで、どう関わればいいかわからない」脳梗塞・脳出血の後に「失語症」が現れた場合、本人だけでなく家族も深く戸惑います。
失語症は、脳のダメージによって「言葉を話す・理解する・読む・書く」という機能が障害された状態です。知能の低下ではなく、言語という道具が使いにくくなった状態です。本人は思っていること・感じていることがあっても、それを言葉にできないもどかしさを抱えています。
この記事では、失語症の種類・家族がとまどいやすい場面・コミュニケーションの工夫・訪問看護でできる関わり方について、宮崎市のOUR(アワー)訪問看護ステーションが詳しく解説します。
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☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時
失語症とはどういう状態か
言葉の4つの機能が障害される
失語症は、脳の「言語野」と呼ばれる領域がダメージを受けることで起きます。左脳の前方(ブローカ野)・後方(ウェルニッケ野)などが主に関わっており、障害される場所によって症状のパターンが変わります。
言葉には「話す・聞いて理解する・読む・書く」という4つの機能があります。失語症ではこれらのうち一つまたは複数が障害されます。「話せない」だけでなく、「言っていることがわからない」「字が読めなくなった」「書けなくなった」といった形でも現れます。
代表的な失語症の種類
運動性失語(ブローカ失語)
言葉は理解できるが、話すことが難しい状態です。「言いたいことはあるのに言葉が出てこない」「一言二言は出るがうまく文章にならない」という形で現れます。「はい」「いいえ」の返事はできても、詳しい説明ができないケースも多く見られます。
感覚性失語(ウェルニッケ失語)
話すことは比較的できるが、聞いて理解することが難しい状態です。言葉はよく出てくるが、内容がかみ合わなかったり、意味のない言葉が混じったりすることがあります。話しかけても反応が薄いのは「聞こえていない」のではなく、「言葉の意味が処理できない」ためです。
全失語
話す・理解する・読む・書くすべてが高度に障害された状態です。重篤な失語症で、コミュニケーション手段が非常に限られますが、表情・視線・身振りで気持ちを伝えることは可能です。
これらは大まかな分類であり、実際は症状が混在することが多く、重さも人によって大きく異なります。
「認知症ではない」「知能は低下していない」
失語症は言語の道具が使いにくくなっているのであって、思考力・感情・本人の人格は保たれています。「言葉が出てこないから何もわからない人」と誤解されることがありますが、本人は感じ・考え・理解しようとしています。
失語症と認知症は別の状態です。脳卒中後に両方が現れるケースもありますが、「言葉が出ない=認知症」ではありません。
家族が困りやすい場面と対応のコツ
「はい・いいえ」がうまく出ないとき
運動性失語では、「はい」「いいえ」が混乱したり、正しく使えないことがあります。「お腹すいた?」と聞いて「はい」と答えたのに実は違う、というすれ違いが起きやすいです。
この場合、選択式の質問を使うことが有効です。「ご飯とパン、どちらがいいですか?」と二択にすることで、うなずきや指差しで答えられるようにします。また、「今どんな気持ち?」のように答えの幅が広すぎる質問より、「痛い?」「眠い?」のようにひとつの事柄を確認する質問にすると伝わりやすくなります。
同じ言葉しか出てこないとき
「はい」や「ありがとう」など、決まった言葉しか出ない(反復言語・常同言語)状態になることがあります。本人は「違うことを言いたいのに、その言葉しか出ない」というもどかしさを感じていることがあります。
言葉にこだわりすぎず、表情・目線・手の動きなど言葉以外のサインも一緒に読み取るようにします。「この言葉しか出ないから何も伝えられない」ではなく、「いろんな手がかりを総合して理解しようとする」姿勢が大切です。
話しかけても反応が薄いとき
感覚性失語では、言葉の意味の処理が難しいため、話しかけてもぼんやりした反応になることがあります。「わかっているのに無視している」のではなく、「言葉の信号が処理しにくい」状態です。
短い言葉でゆっくり話す・実物や写真を見せながら話す・文字カードを使う、といった方法で理解しやすくなることがあります。声の大きさより、情報量を減らすことが重要です。
言葉が突然出たり出なかったりするとき
失語症は「状態が一定しない」という特徴があります。調子のいいときは比較的話せるのに、疲れているときや緊張しているときはまったく言葉が出ない、ということがあります。
「さっきはできたのに」と責めず、「今日は調子が違う日もある」と受け入れることが、お互いのストレスを減らします。食事・入浴・活動の後など疲れやすいタイミングには、コミュニケーションを求めすぎないようにすることも大切です。
在宅でのコミュニケーションを助ける工夫

言葉以外の手段を積極的に使う
失語症のある方とのコミュニケーションは、言葉だけに頼る必要はありません。表情・うなずき・首振り・手のジェスチャー・指差し・絵や写真・文字ボードなど、さまざまな手段を組み合わせます。
「コミュニケーションノート」と呼ばれる、よく使う言葉・場所・人物・食べ物などの写真や絵が載ったノートを用意しておくと、指差しで意思を伝えやすくなります。
スマートフォンのアプリでも、50音表・絵カード・テキスト読み上げなどを活用できるものがあります。
話すプレッシャーを減らす環境づくり
「早く言って」「もう一回」「違う?」など、訂正や催促が重なると、本人のストレスが高まり、ますます言葉が出にくくなることがあります。
伝えたいことが出てこないときは、焦らず待つことが基本です。「伝わらなくてもいい。話してくれるだけで十分」という雰囲気が、本人の安心感につながります。
また、大勢が一度に話しかけたり、テレビをつけたまま会話したりすると、処理する情報量が増えて混乱しやすくなります。静かな環境・一対一での会話が基本です。
訂正よりも「受け取る」
「ご飯が食べたい」を「ご、ごはん……」と言いかけて止まったとき、「ご飯?」と優しく確認するだけで十分です。言い直させようとしたり、「ちゃんと言って」と促したりすることは、本人にとってプレッシャーになります。
「伝わった」という経験を積み重ねることが、本人のコミュニケーションへの意欲を支えます。
訪問看護でできること:失語症への関わり
毎回の訪問でコミュニケーションを評価・支援
訪問看護師は、毎回の訪問時に失語症の状態を観察します。「先週より言葉が出るようになった」「最近反応が薄い日が増えた」という変化を継続的に把握し、主治医への報告・リハビリ専門職との連携に活かします。
また、医療的なケア(バイタル測定・内服確認・傷の処置など)を行うなかで、失語症のある方に対して伝わりやすいコミュニケーション方法を実践します。
家族への具体的なコミュニケーション指導
「どう話しかければいいか」「何を工夫すればいいか」を、実際の会話場面を見ながら家族に伝えます。「こう言うと伝わりやすい」「このタイミングは避けたほうがいい」という具体的なアドバイスが、家族の毎日の関わりを楽にします。
言語聴覚士(ST)との連携
失語症に対する専門的なリハビリは言語聴覚士(ST)が担います。在宅でSTによる訓練を受けるには、訪問リハビリテーションや通所リハビリテーションなどを利用する方法があります。OURでは、STによるリハビリが必要と判断した場合、主治医・ケアマネジャーと連携して利用できる場所の調整をサポートします。
本人の「伝えたい気持ち」を守る
失語症のある方は、言葉が出ないことで「わかってもらえない」「役に立てない」という孤独感・無力感を感じやすい状態にあります。訪問看護師は毎回の訪問で「伝わっている」という体験を積み重ね、本人が自分の気持ちを表現することをあきらめないよう、寄り添い続けます。
宮崎市でのサポート:OUR訪問看護ステーション
OUR訪問看護ステーションでは、失語症のある方への訪問看護に対応しています。失語症があっても、本人が何を求めているか・何が不安かを丁寧に読み取りながら関わります。
また、看護師・PT・OTのチーム体制で、失語症に加えて麻痺・高次脳機能障害など複数の後遺症が重なる状況にも対応できます。「言葉の問題だけでなく、体全体を診てほしい」という場合も、ぜひご相談ください。宮崎市内の医療機関・言語聴覚士との連携実績もあり、必要なサービスへのつなぎも行っています。
よくある質問
脳卒中後の失語症は、話す・理解する・読む・書くという言語機能が障害された状態で、知能や感情が失われたわけではありません。家族ができる工夫として、短い言葉でゆっくり話す・二択の質問を使う・絵や指差しなど言葉以外の手段を活用することが有効です。訪問看護では、失語症の状態の継続観察・家族へのコミュニケーション指導・言語聴覚士との連携をサポートします。「どう接すればいいかわからない」と感じている家族の方は、OUR訪問看護ステーションにお気軽にご相談ください。
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この記事を監修した人
株式会社OUR 代表取締役
中田 富久
認定作業療法士
昼は工場、夜は専門学校という4年間を経て作業療法士に。総合病院のICU・SCUから回復期、地域包括ケア病棟まで10年以上、脳卒中・難病・整形疾患の患者さんに関わり続けた。学会発表・座長を複数経験し、宮崎県内でも数名しかいない認定作業療法士として地域ケア会議やフレイル予防の場でも活動中。「病院を出ても、その人らしく生きてほしい」——その思いが、2022年のOUR設立につながった。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、妻(看護師)とともに宮崎市で24時間365日の在宅ケアを届けている。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。