
「自転車で次の利用者宅に向かう途中、頭がクラクラしてきた」「エアコンのない部屋でケアをしていたら、自分が先にぐったりしてしまった」訪問看護師が夏に直面する熱中症リスクは、一般的に思われている以上に深刻です。病院勤務と違い、屋外移動・利用者宅の温度環境・制服の暑さという3つのリスクが同時にかかってきます。OUR訪問看護ステーションでは毎年夏になると、スタッフの体調管理を最優先の課題として取り組んでいます。この記事では、訪問看護師が今日から使える熱中症対策グッズ10選と、利用者宅での暑さ確認のポイントを、現場の経験をもとに解説します。
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訪問看護師が夏に抱える熱中症リスクは「移動・制服・密室」の3つが重なります。
訪問看護師の夏の熱中症リスクが高い理由は、病院勤務の看護師とは構造的に異なります。
訪問看護師特有の3つのリスク
① 屋外移動のリスク 訪問と訪問の間、自転車や徒歩で移動します。宮崎市の夏は気温33〜36℃になる日が続くため、10〜15分の移動だけで体温が急上昇します。車移動の場合も、駐車後すぐに屋外に出る際の温度差が大きい。
② 制服・白衣の暑さ 白衣・スクラブは通気性が比較的高いとはいえ、夏の直射日光の下では熱がこもります。防護エプロンや手袋着用が必要な処置中は特に蒸れやすい。
③ 利用者宅の温度環境 「本人がエアコンを嫌がる」「エアコンが古くて効かない」「窓を開けているだけ」という環境で30〜60分のケアを行うことがあります。体を動かしながらのケア(体位変換・清拭・リハビリ)は想像以上に発熱します。
熱中症リスクを高めるその他の要因
- 水分補給の機会が少ない:訪問中は手が離せないため、こまめな水分補給がしにくい
- 昼食時間が不規則:炎天下の移動が続き、昼食・休憩のタイミングがずれる
- 自覚しにくい:「次の訪問に行かなければ」というプレッシャーから、初期症状を見逃しやすい
移動中の熱中症対策グッズ5選。今日から使えるアイテム。
① ネッククーラー(首掛け型冷却デバイス)
2024〜2026年に最も普及した夏の必需品です。首の頸動脈を直接冷やすことで体幹温度の上昇を効率的に抑えます。
| タイプ | 特徴 | 価格目安 |
| PCM(相変化素材)型 | 28℃以下になると固化し持続冷却。充電不要 | 2,000〜5,000円 |
| 電動ファン型 | USB充電・風で蒸発冷却。屋外より屋内向き | 3,000〜8,000円 |
| 保冷剤交換型 | 軽量・コストゼロ。保冷剤の持参が必要 | 1,000〜2,000円 |
訪問看護師向けポイント: PCM型は移動中の屋外向きで白衣の首元に収まりやすい。電動ファン型は処置中に騒音が出るため訪問中は不向きなケースもあります。
② 冷却スプレー・ミストスプレー
移動後に体表面を素早く冷やします。首・脇・手首に吹きかけることで体感温度を下げられます。衣類用(冷感スプレー)と肌用(ミスト)を分けて携帯すると便利です。持ち運びは100ml以下のサイズがポケットに入ります。
③ 保冷ボトル(真空断熱・大容量)
訪問看護師が1日に飲む水分量の目安は、夏場で1.5〜2リットル以上です。真空断熱の500〜800mlボトルを2本持参し、午前・午後で補充する体制が理想的です。冷たい飲料が口から胃を通ることで体幹温度が効率的に下がります。
おすすめの工夫: 経口補水液(OS-1など)と水を交互に飲む。塩分・糖分が含まれた飲料を選ぶ(水だけでは低ナトリウム血症のリスク)。
④ 日傘・UVカット帽子(屋外移動時)
直射日光を遮るだけで、体感温度は3〜5℃下がるといわれています。自転車での移動が多い場合は、ヘルメット着用が前提となるため、麻素材・通気性の高い素材の帽子をヘルメットの下に着用する方法もあります。
⑤ 携帯用塩分タブレット・塩飴
水分補給と同時に塩分を補給することで熱中症の予防効果が高まります。訪問バッグのポケットに常備しておき、移動中・訪問前後にこまめに摂取する習慣をつけることがポイントです。甘さ控えめのタブレットタイプが携帯しやすく、業務中でも摂取しやすいです。
訪問中の熱中症対策グッズ5選。利用者ケア中の自己管理。
⑥ 小型携帯扇風機(ハンディファン)
処置の合間、訪問前後の水分補給時に自分の顔・首に向けて使います。訪問先でのケア中は利用者に直接当てることも可能で、一石二鳥の活用ができます。USBで充電するタイプを記録用タブレットと同じモバイルバッテリーで充電できると便利。
注意: 呼吸器ケア・創傷処置の際は飛散防止のためファンを止める。
⑦ 冷却シート・冷感パッド(おでこ・首用)
ケア中に自分で使いにくい状況でも、処置前に首や額に貼っておくことで一定時間の冷却効果が持続します。「子ども用熱冷まシート」の大人用・首用タイプを選ぶと剥がれにくい。
⑧ 訪問先用「暑さ確認ツールキット」
自分のためでもあり、利用者のためでもあるのが温湿度計の携帯です。訪問時に部屋の温度をすぐに確認できる小型デジタル温湿度計(2,000〜3,000円)を訪問バッグに入れておくと、「今日は28℃で良好」「33℃で危険」という客観的な判断ができます。
| 数値 | 判断 |
| 28℃未満・湿度60%以下 | 安全圏 |
| 28〜30℃ | 注意。エアコン設定確認・水分促し |
| 30〜33℃ | 危険。すぐにエアコン調整。記録・報告 |
| 33℃超 | 即対応。ケアより先にエアコン・水分補給 |
⑨ 電解質ドリンク(自分用+利用者用)
水分補給の声かけは「一緒に飲みましょう」が最も効果的です。利用者が「飲まない」と言うとき、看護師が自分のボトルを飲みながら「私も飲みますね」と自然に促すと受け入れてもらいやすいです。OURのスタッフは訪問バッグに個別パックの経口補水液を1〜2本常備しています。
⑩ 記録用の軽量クーラーバッグ(保冷)
薬・検査物・コールドパックなどを持ち運ぶクーラーバッグは、スタッフの昼食・飲料の保冷にも兼用できます。普通の保冷袋と異なり、内部温度が安定するため、炎天下でも2〜3時間冷たさを保ちます。
訪問先で「熱中症危険アラート」を出す判断基準。OURの現場ルール。
OURでは以下の基準に沿って訪問時の環境確認を行い、危険と判断した場合はその日のうちに事業所・ケアマネに報告しています。
チェック項目(到着時に30秒で確認)
環境
- 室温が30℃を超えていないか
- エアコンが稼働しているか(設定温度も確認)
- 窓が開いているだけでカーテン・すだれがない
本人の状態
- 顔が赤い・皮膚が乾燥して汗をかいていない
- 言動がいつもより緩慢・ぼんやりしている
- 「水を飲んだ」と言うが摂取量が少ない(200ml以下/半日など)
報告のタイミング
- 室温33℃超:訪問中に家族に連絡
- 本人に初期症状の疑い:事業所に報告し、当日のモニタリング強化
- エアコンが壊れている・古い:ケアマネを通じて修繕・補助制度の確認を依頼
OUR訪問看護ステーションの夏の取り組み。スタッフが安心して働ける環境づくり。

「夏の訪問看護は過酷」というイメージを変えることが、採用・定着の観点からも重要だとOURは考えています。
OURが取り組んでいること
- 訪問時間の分散:10時〜14時の炎天下の時間帯はできる限り訪問を集中させず、朝早め・夕方の訪問を増やす工夫
- スタッフへのグッズ補助:ネッククーラー・冷感スプレー・電解質タブレットの一部を事業所として用意
- 移動手段の選択肢:徒歩・自転車・車の組み合わせをスタッフが選べる体制
- 水分補給の文化化:「移動後はまず水分補給してから記録する」というルールを全スタッフで共有
- 熱中症チェックの声かけ:朝礼・終礼でスタッフ同士が互いに体調を確認
訪問看護師は利用者の命を守る仕事ですが、自分自身が倒れては誰も助けられません。OURでは「スタッフが安全に働ける環境こそが、最高のケアの前提」という方針のもと、夏季の体調管理を制度として組み込んでいます。
よくある質問
訪問看護師が熱中症になりやすい時間帯はいつですか?
最もリスクが高いのは11時〜15時の移動時間です。この時間帯は気温・日射量がともにピークを迎え、短時間の屋外移動でも体温が上昇しやすい。次にリスクが高いのは、エアコンのない・または効きが悪い利用者宅でのケア中(30〜60分)です。OURでは可能な限りこの時間帯の訪問スケジュールを分散し、炎天下の移動が連続しないよう配慮しています。
白衣・スクラブで夏を乗り切る工夫はありますか?
接触冷感素材・吸湿速乾素材を使ったスクラブが有効です。ユニフォームを選べる場合は夏用素材を選択することを検討してください。下着は吸湿・速乾・抗菌の機能性インナーを選ぶと不快感が減ります。また、白衣は白やライトカラーが熱を反射しやすいため、黒・濃紺系より暑さを感じにくいです。(当ステーションも夏用のスクラブを考えてます)
利用者宅の室温が高く、本人がエアコンを嫌がる場合はどうすればいいですか?
「エアコン嫌い」の背景には電気代・冷えすぎ・音などの理由があります。「一緒に設定しましょう」と声かけして温度を28℃・静音モードに調整したり、扇風機との併用で「エアコン直当たり」を避ける方法を提案すると受け入れてもらいやすいです。また「先週より顔色が良くないですね」と体調との関連を具体的に伝えると、本人の意識が変わることがあります。繰り返し嫌がる場合は家族・ケアマネに状況を報告し、連携して環境改善を図ります。
訪問看護師への就職・転職を考えています。夏の過酷さが心配です。
確かに夏の訪問は病院勤務より体力を使います。ただし、OURでは炎天下の連続移動を減らすスケジュール設計、グッズ補助、スタッフ間の体調確認文化が整っています。訪問看護の良さは「一人の利用者と深く関われる」「自分のペースで動ける」という点で、暑さという課題はグッズと仕組みで十分カバーできます。夏の訪問に不安がある方は、ぜひOURに一度相談してください。見学・実習も受け付けています。
熱中症の初期症状が出たときの対処法を教えてください。
めまい・立ちくらみ・大量の発汗・頭痛・吐き気が初期症状です。これらが出たら、すぐに涼しい場所に移動し、座って水分と塩分を補給してください。10〜15分休んで回復する場合は軽症です。意識がぼんやりする・体が熱いのに汗をかいていない・自分で水を飲めない場合は重症の可能性があるため、すぐに119番か同僚・事業所に連絡してください。「少し休めば大丈夫」と判断して訪問を続けることは、利用者への安全にも関わるため絶対に避けてください。
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参考文献一覧
- 熱中症環境保健マニュアル2022(環境省)https://www.wbgt.env.go.jp/pdf/manual/heatillness_manual_full.pdf
- 職場における熱中症予防基本対策要綱(厚生労働省 2021年)https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000793011.pdf
- 熱中症予防情報サイト(環境省)https://www.wbgt.env.go.jp/
この記事を監修した人