
「令和8年度の診療報酬改定で『訪問看護医療情報連携加算』が新設されたと聞いたけど、うちのステーションは算定できるの?」「在宅患者連携指導加算とは何が違うのか、両方取れるのか」「ICTツールを導入すれば自動的に算定できると思っていたが、実際は何が必要なのか」令和8年度改定の施行後、訪問看護ステーションの管理者やケアマネジャーからこうした疑問が多く寄せられています。
制度の名称が長く、似たような加算が複数あることから、混乱してしまうのは無理のないことです。この記事では、厚生労働省の公式資料をもとに、訪問看護医療情報連携加算の概要・算定要件・施設基準・具体的な運用フローまでを、どこよりもわかりやすく整理します。「自分のステーションが算定できるかどうか」を確認しながら読み進めてください。
本記事は厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】(令和8年3月10日版)」をはじめとする公式資料をもとに作成しています。
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
“あなたらしい”在宅生活を、24時間・365日サポートします
☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時
訪問看護医療情報連携加算とは?新設の背景と意義
令和8年度改定で新設された理由
訪問看護医療情報連携加算は、令和8年度(2026年)診療報酬改定で新設された加算です。令和8年4月1日より算定可能となりました。
加算の設計思想は、在宅医療における多職種連携の「質」を上げることにあります。これまでの訪問看護現場では、医師・ケアマネジャー・薬剤師・病院との情報共有が、電話・FAX・紙の連絡帳を中心に行われてきました。こうした方法でも情報共有自体は可能ですが、リアルタイムに状況が変化する在宅療養利用者の情報を「タイムリーに・正確に・多職種で共有する」には限界がありました。
厚生労働省はこの課題を受け、ICT(情報通信技術)を活用した診療情報共有の仕組みを診療報酬上で評価することとしました。訪問看護医療情報連携加算はその中核に位置する新設加算であり、「訪問看護ステーションが地域包括ケアシステムの情報ハブとして機能する」ことへの政策的な期待を体現しています。

この加算で何が変わるか
一言でいうと、ICTを通じて連携相手の情報を能動的に取りに行き、それを訪問看護計画に活かしたことを評価する仕組みです。
従来の「在宅患者連携指導加算」は、医師・歯科医師・薬剤師・ケアマネジャーと「文書」で情報共有した場合に算定するものでした。今回新設された訪問看護医療情報連携加算はこれを発展させ、文書ではなく「ICT」を使った情報共有・活用を評価します。
似ている加算との整理
同じ「連携系加算」として混同しやすいものを整理しておきます。
| 加算名 | 算定主体 | 算定額 | ICT要件 |
|---|---|---|---|
| 訪問看護医療情報連携加算(令和8年新設) | 訪問看護ステーション | 月1回 1,000円 | ICT必須 |
| 在宅患者連携指導加算 | 訪問看護ステーション | 月1回 3,000円 | 文書ベース |
| 在宅医療情報連携加算 | 医療機関(医師) | 月1回 100点 | ICT必須 |
重要なのは、訪問看護医療情報連携加算と在宅患者連携指導加算は同月に重複算定できない点です。また、医師が在宅医療情報連携加算を算定している月も、訪問看護側は算定不可です(後述)。
算定できると思って落とし穴にはまりやすい3つの誤解
誤解①「ICTツールを導入していれば自動的に算定できる」
LINE WORKSやMCSなどの多職種連携ツールを導入しているからといって、それだけでは算定要件を満たしません。算定には「利用者の同意取得」「連携先が記録した情報の確認・活用」「計画的な管理の実施」という3つのアクションがすべて揃う必要があります。
ツールの導入は「体制を整備する」ための手段であり、ゴールではありません。連携相手(医師・ケアマネ・薬剤師など)も同じICTシステムを使っていること、そのシステム上に記録された情報を実際に訪問看護計画に活かしていることが求められます。
誤解②「在宅患者連携指導加算と両方取れる」
できません。訪問看護医療情報連携加算と在宅患者連携指導加算は同じ月に重複算定不可です。
また、主治医が在宅医療情報連携加算(在宅時医学総合管理料または在宅がん医療総合診療料の加算として算定するもの)を算定している月も、訪問看護側の訪問看護医療情報連携加算は算定できません。
ステーションとして「どちらを算定するか」を整理する必要があります。月額に換算すると、在宅患者連携指導加算(3,000円)の方が高いため、すでに文書による連携体制が構築されているケースでは、必ずしも新加算への切り替えが有利とは限りません。利用者ごとに連携方法・算定の最適化を検討してください。
誤解③「准看護師でも算定できる」
できません。算定できる職員は看護師等(准看護師は除く)と明記されています。准看護師のみが訪問したケースでは算定不可です。この点は施設基準の届出時にも確認が求められます。
算定要件・施設基準・届出の全手順
算定要件:3つのステップを満たす
厚生労働省の資料では、算定要件を以下のように定義しています。
ステップ1:利用者の同意取得 在宅で療養を行っている通院困難な利用者に対して、ICTを用いた連携について書面等で同意を得ること。同意は算定の都度ではなく、初回に包括的に取得することが一般的です。
ステップ2:連携職種がICTに記録した情報の確認・活用 連携する以下の職種がICTを用いて記録した診療情報等を、訪問看護師が実際に確認すること。
- 保険医(主治医)
- 歯科医師
- 保険薬剤師(薬局)
- 管理栄養士
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 相談支援専門員
- その他、当該利用者の医療・ケアに携わる職種
確認した情報をメモするだけでは不十分です。「確認した上で訪問看護計画の管理に活かした」というエビデンスが記録上求められます。
ステップ3:情報を踏まえた計画的な管理 確認した情報をもとに、指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行うこと。訪問看護計画書・看護記録等に、ICTで取得した情報を反映した形跡が残っていることが重要です。
施設基準:届出に必要な5項目
訪問看護医療情報連携加算を算定するには、地方厚生局長等への届出が必要です。届出に際して、以下の5つの施設基準を満たしている必要があります。
① ICTによる診療情報の常時確認体制 在宅療養利用者の診療情報を、ICTを用いて常時確認できる体制を有していること。具体的には、MCS・LINE WORKS・Chatworkなど、法人管理のもとで多職種が情報を共有・記録できるシステムが稼働していることが前提です。
② 関係機関との平時からの連携体制 急変時だけでなく、日常的(平時)に関係機関と連携できる体制が構築されていること。「何かあれば連絡を取る」程度では不十分で、日頃からICTを通じた情報交換が行われている実態が求められます。
③ 計画的管理のための十分な体制整備 ICTで取得した情報を訪問看護計画に反映するための、スタッフ教育・運用マニュアル・記録方法などの体制が整備されていること。
④ 連携体制についての施設内掲示 訪問看護ステーションの見やすい場所に、ICTを活用した連携体制を構築していることを掲示すること。
⑤ ウェブサイトへの掲載 原則として、公式ウェブサイトに連携体制に関する情報を掲載すること。 経過措置あり:令和8年9月30日までの間は、ウェブサイト掲載の要件は適用が猶予されます。ウェブサイトを持っていない・更新が難しいステーションも、2026年9月末までに対応することで問題ありません。
届出の流れ
1. 施設基準5項目を自己点検・整備する 2. 地方厚生局(宮崎は九州厚生局)に届出書類を提出する 3. 受理後、算定開始が可能になる
届出書類の様式や提出方法は、九州厚生局のウェブサイトまたは窓口で確認してください。なお、届出後に施設基準を満たさなくなった場合は、速やかに変更届を提出する必要があります。
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
“あなたらしい”在宅生活を、24時間・365日サポートします
☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時
具体的な運用フローどのICTツールを使い、どう動けばいいか

関連記事
算定要件を満たすICTツールの条件
「どんなツールでも使っていれば算定できる」というわけではありません。厚生労働省の想定するICTツールには以下の条件があります。
- 法人管理のもとで運用されている(個人のスマートフォンのLINEは不可)
- 多職種が同一システムに記録・閲覧できる
- 診療情報等の記録・確認が追跡可能な形で保存される
現場でよく使われているツールとその特徴を以下にまとめます。
| ツール名 | 特徴 | 費用感 |
|---|---|---|
| MCS(メディカルケアステーション) | 医療介護専用の非公開SNS。医師・ケアマネ・薬剤師等が同一利用者のグループで情報共有できる。基本機能は無料 | 基本無料 |
| LINE WORKS | LINEの操作感でビジネス利用可能。法人管理・ログ保存ができる | 有料プランあり |
| Chatwork | テキスト・ファイル共有に強い。利用者ごとのチャットルームで管理可能 | 有料プランあり |
MCSは医療介護連携に特化して設計されており、宮崎市内でも導入しているケアマネジャー事務所・医療機関が増えています。まだICTツールを導入していないステーションにとっては、連携先の状況を確認しながらツールを選ぶのが現実的です。
月1回算定するための実務ステップ
算定を安定的に行うための月次の実務フローを整理します。
【月初〜中旬:情報収集と活用】
1. 利用者ごとのICTシステムを開き、前月末〜今月の連携職種の記録を確認する 2. 確認した情報(医師の診察記録・薬剤師の服薬指導記録・ケアマネのモニタリング記録等)を訪問看護記録または計画書に反映する 3. 情報を活用して計画的な管理を行ったことが記録上わかるようにする
【月内:同意の確認】
初回算定前に、利用者・家族からICTを用いた連携についての同意を書面で取得する。同意書の様式は施設内で統一しておくことが望ましいです。
【月末:算定確認】
- 重複算定禁止の確認:その月に在宅患者連携指導加算・在宅医療情報連携加算(医師算定分)が算定されていないか確認
- 訪問者が看護師等(准看護師以外)であることを確認
- 算定要件3ステップがすべて記録上確認できるかチェック
算定可否の判断フロー
実際の運用で「今月算定できるか?」を素早く判断するためのフローです。
①その月に訪問看護管理療養費を算定する利用者か?
→ No → 算定不可
②利用者から同意を取得済みか? → No → 同意取得後に算定可
③連携職種がICTに記録した情報を今月確認したか? → No → 確認後に算定可
④確認情報を計画的管理に活用したことを記録したか? → No → 記録後に算定可
⑤在宅患者連携指導加算を今月算定していないか? → 算定済 → 算定不可(重複禁止)
⑥在宅医療情報連携加算(医師算定)を今月算定していないか? → 算定済 → 算定不可(重複禁止)
⑦訪問した職員は看護師等(准看護師以外)か? → No → 算定不可
→ すべて満たせば算定可
OUR訪問看護ステーションの連携体制
OUR(アワー)訪問看護ステーションでは、宮崎市内の医療機関・居宅介護支援事業所・保険薬局とのICTを活用した情報連携体制を整備しています。利用者の状態変化をタイムリーに共有し、主治医・ケアマネジャーとの意思決定を速める仕組みが、高度医療処置が必要な方の在宅療養を支える土台になっています。
ケアマネジャーの方から「OURに依頼すると連携が密で安心できる」という声をいただくことが多いのは、こうした情報共有体制があるからです。
よくある質問
Q. 令和8年4月から算定可能とのことだが、4月中に届出が間に合わなかった場合は?
届出受理日以降の算定が可能です。4月中に届出が完了し受理されていれば4月分から算定できます。届出が5月になった場合は、5月以降の算定となります。届出は早めに行うことをお勧めします。
Q. 連携先の医師がICTを使っていない場合でも算定できますか?
算定要件では「連携する保険医・薬剤師・ケアマネジャー等のうちの誰か」がICTに記録した情報を確認することが求められています。主治医がICTを使っていない場合でも、ケアマネジャーや薬剤師が記録した情報を活用している実態があれば算定可能とされています。ただし、連携職種が誰もICTを使っていない状況では算定できません。
Q. MCSで主治医とつながっているが、主治医があまり記録を書かない場合はどうするか?
算定要件は「記録された情報を確認・活用したこと」です。主治医側の記録が少ない場合でも、薬剤師・ケアマネジャー等のいずれかの職種がICT上に記録していれば、その情報を活用して算定することが可能です。連携職種全員の記録が必要というわけではありません。
Q. 利用者1人に対して月複数回訪問しているが、加算は月1回だけですか?
はい、月1回の算定が上限です。1か月に何回訪問していても、訪問看護医療情報連携加算は月1回のみ算定できます。
Q. 在宅患者連携指導加算と訪問看護医療情報連携加算、どちらを選ぶべきか?
加算額は在宅患者連携指導加算(月1回3,000円)の方が高く、すでに文書による連携が確立しているケースでは、あえて切り替える必要はない場合もあります。一方、ICT連携がすでに実態として機能しているが文書交換の機会が少ない利用者については、訪問看護医療情報連携加算の方が自然に算定できる場合があります。利用者の連携状況に応じて、月ごとに最適な加算を選択することが重要です。
Q. ケアマネジャーとしてどう関わればいいですか?
ケアマネジャーが多職種連携ICTツールに参加し、モニタリング結果・サービス計画変更の情報を記録することで、訪問看護ステーションの算定要件を支えることができます。OURとICTでつながっているケアマネジャー事務所は、情報共有の効率化による業務軽減というメリットも得られます。
Q. ウェブサイトに何を掲載すればよいですか?
施設基準では「ICTを活用した連携体制を構築していること」と「連携している関係機関の概要」をウェブサイトに掲載することが求められています。具体的には、「当ステーションではICTを活用した多職種連携体制を構築しています」という旨の記載と、連携先の種別(医療機関・薬局・居宅介護支援事業所など)の概要を掲載することが一般的です。特定の機関名を全て列挙する必要はありませんが、体制が整備されていることがわかる内容にすることが望ましいです。令和8年9月30日までの経過措置期間中に、自社ウェブサイトを整備しておきましょう。
Q. 算定した際の診療報酬明細書(レセプト)への記載は?
訪問看護療養費の請求において、訪問看護医療情報連携加算を算定した月は所定の記載が必要です。具体的な記載方法については、使用している訪問看護電子カルテ・請求ソフトのメーカーまたは国民健康保険団体連合会(国保連)・社会保険診療報酬支払基金に確認することをお勧めします。
訪問看護医療情報連携加算は、令和8年度診療報酬改定で新設された月1回1,000円の医療保険加算です。「ICTツールを使って連携職種の情報を確認・活用し、計画的管理に反映する」という3ステップが算定要件の核心であり、施設基準の届出が必要です。
算定にあたって特に注意が必要なのは、在宅患者連携指導加算・在宅医療情報連携加算との重複算定禁止と、准看護師は算定不可という点です。
「どの加算が自分のステーションに合うか」は、現在の連携体制・連携先のICT活用状況・算定している他の加算との組み合わせによって変わります。まず現状を整理した上で、段階的に体制を整えることが現実的です。
訪問看護医療情報連携加算は、加算の取得自体が目的ではありません。ICTを通じた密な情報共有が日常になれば、利用者の状態変化を早期に察知できる・訪問前に医師の診察情報を確認して訪問内容を最適化できる・緊急時に複数職種が即座に情報共有できるなど、在宅療養の質が実質的に向上します。加算はその副産物です。
在宅医療・地域連携についてご不明な点があれば、OUR(アワー)訪問看護ステーションにお気軽にご相談ください。宮崎市内のケアマネジャーや医療機関との連携実績をもとに、情報提供させていただきます。
参考資料(厚生労働省)
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
“あなたらしい”在宅生活を、24時間・365日サポートします
☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時