
変形性膝関節症の診断を受けてから「運動した方がいいとは言われたけれど、何をどこまでやっていいかわからない」という声をよく聞きます。痛みがあると動くのが怖くなるのは当然です。でも、正しい方法で動き続けることが、膝の機能を守る最善策です。
このコラムでは、OUR訪問看護ステーションの理学療法士(PT)が、変形性膝関節症の方が自宅でできるリハビリ5種・やってはいけない動作・状態別の進め方を、国内外のエビデンスをもとに解説します。
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今日からできる在宅リハビリを先にお伝えします
変形性膝関節症の在宅リハビリで効果が確認されている運動は、主に以下の5種です。痛みの程度や体力に合わせて選んでください。詳しい手順は後述します。
| リハビリの種類 | 目的 | 難易度 |
|---|---|---|
| ①大腿四頭筋セッティング | 膝を動かさず太もも前面を鍛える | 低(寝たまま可) |
| ②ハーフスクワット | 膝周囲筋全体を強化 | 中(立位) |
| ③ストレッチ(ハムストリングス・腸脛靭帯) | 膝の柔軟性を保つ | 低〜中 |
| ④水中歩行 | 関節への負担を減らして有酸素運動 | 低(プール使用) |
| ⑤平地ウォーキング | 全身持久力・膝周囲筋の維持 | 低〜中 |
> 「痛みがあるとき」「腫れているとき」「熱感があるとき」は無理をしません。この3つのサインがあれば休む日です。
変形性膝関節症とは。なぜリハビリが有効なのか
変形性膝関節症とは、膝の軟骨がすり減り、関節の変形・痛み・可動域制限が生じる慢性疾患です。日本では推定2,530万人が罹患しているとされ(日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン)、加齢・肥満・関節へのくり返しの負担が主な原因です。
「軟骨がすり減っているなら、動かすと余計に悪くなるのでは?」という不安はよく聞かれます。しかし研究では逆の結果が出ています。
運動療法はエビデンスレベルが最も高い治療法
Fransen et al.(Cochrane Collaboration, 2015)によるコクランレビューでは、水中・陸上を問わず運動療法が変形性膝関節症の疼痛軽減(短期)と身体機能改善に効果があると結論づけています。解析した研究数は54件、参加者数は3,913人と大規模なものです。
OARSI(国際変形性関節症学会)のガイドライン(Bannuru et al. 2019)でも、陸上運動・水中運動は全患者への推奨(Grade: Strong)とされており、薬物療法よりも先に実施すべき治療として位置づけられています。
軟骨自体に血管はなく、関節を動かすことで関節液が循環し軟骨に栄養が届きます。適切な運動は軟骨の変性を遅らせ、周囲筋肉の強化が膝にかかる衝撃を吸収します。動かさないほうが軟骨は痛みます。
大腿四頭筋の筋力低下が膝痛を悪化させる
太もも前面の大腿四頭筋は、歩行・起立・階段動作で膝にかかる衝撃を吸収する最重要筋です。変形性膝関節症の方は痛みにより歩行量が減り、この筋力が低下しやすくなります。筋力低下が進むと膝が安定せず、さらに痛みが増すという悪循環が起きます。在宅リハビリの中心が大腿四頭筋の強化になるのはこのためです。
在宅リハビリ5種の具体的なやり方
①大腿四頭筋セッティング(寝たまま10分)

変形性膝関節症リハビリの基本中の基本です。膝を動かさないため、痛みが強い時期でも実施できます。
手順:
- 仰向けに寝て膝を伸ばす
- 太ももの裏をベッドに押しつけるように力を入れる(膝は動かさない)
- 5秒キープ→力を抜く
- 左右10回×3セット、1日2回
ポイント: 太もも前面が硬くなる感覚があれば正しくできています。膝に痛みが出るようなら力の入れすぎです。
②ハーフスクワット(壁を使う)

大腿四頭筋だけでなく、臀筋・ハムストリングスもまとめて鍛えます。膝に不安がある方は壁に手をつけて行います。
手順:
- 壁に背をつけ、足を腰幅に開く
- ゆっくり膝を曲げる(45〜60度まで。痛みが出る角度は避ける)
- 3〜5秒キープ→ゆっくり戻す
- 10回×2〜3セット
注意: 膝がつま先より前に出ないこと。痛みがある90度以上の深曲げは禁止です。
③ストレッチ(ハムストリングス・腸脛靭帯)

ハムストリングス(太もも裏)と腸脛靭帯(太もも外側)の硬さは膝の痛みを増悪させます。1日1回、お風呂上がりに行うのが理想です。
ハムストリングスストレッチ(仰向け):
- 仰向けに寝て片膝を立てる
- もう一方の足を天井方向にゆっくり上げ、ふくらはぎを両手で支える
- 太もも裏が伸びる感覚のところで20〜30秒キープ
- 左右交互に3回
腸脛靭帯ストレッチ(立位):
- 壁に手をつき足を交差させる(ストレッチしたい側が後ろ)
- 腰を横に押し出すように体を傾ける
- 太もも外側が伸びる感覚で20〜30秒キープ
④水中歩行(プール・シャワーも可)

水中では浮力で体重が約10分の1になり、膝への負担を大幅に減らしながら全身の筋肉を使えます。陸上の歩行が痛い方でも実施しやすいのが利点です。
宮崎市内の温水プール(宮崎市民プール等)を利用するか、深さのある浴槽内での足踏みでも代替できます。週2〜3回、20〜30分が目安です。
⑤平地ウォーキング(痛みのない範囲で)

平坦な道でのウォーキングは、変形性膝関節症の疼痛・機能改善・体重コントロールすべてに効果があります。1日20〜30分・週3〜5回が目安とされています(OARSI Guidelines 2019)。
安全に歩くポイント:
- 傾斜のある道・砂利道・段差を避ける
- クッション性の高い靴を選ぶ
- 痛みが増したら距離を短くする(「昨日より少し長く」を目標にしない)
- 杖やロフストランドクラッチで荷重を分散する
やってはいけない動作と悪化させる習慣
正座・深いしゃがみ込みは膝への圧縮負荷が大きい
正座時の膝関節内圧は歩行時の6〜8倍に達するとされます(日本整形外科学会 変形性膝関節症診療ガイドライン参照)。和式トイレ・正座での食事・しゃがんだ草むしりは、できる限り避けるか洋式に切り替えることを勧めます。
生活環境の変更が難しい場合は、訪問リハビリで動作の代替方法を一緒に考えることができます。
「痛みが引いたから急に動く」は再悪化の原因
痛みが落ち着いた日に張り切りすぎると、翌日以降に強い疼痛が出ることがあります。体調が良い日こそ「普段の6〜7割の強度」を守ることが長期的な機能維持につながります。
体重増加は膝への負荷を直接増やす
膝にかかる荷重は体重の約3〜6倍とされます。1kg体重が減ると膝への負荷は最大6kg分軽くなります。食事の見直しと有酸素運動の組み合わせで体重管理を行うことが、リハビリと同様に重要です。
状態別の進め方:軽症・中等症・重症
軽症(日常生活は可能だが、動作時に痛みあり)
主に①大腿四頭筋セッティング・③ストレッチ・⑤ウォーキングから始めます。1日10〜20分から無理なく続けることが最優先です。痛みのない範囲で徐々に距離や回数を増やしていきます。
中等症(歩行・起立・階段に痛みがあり、生活制限あり)
②ハーフスクワット・④水中歩行を加えます。訪問看護の理学療法士による動作指導・住環境の評価(手すり・靴の見直し等)が有効な段階です。膝装具(ブレース)の使用についても医師・PTと相談します。
重症(安静時にも痛みがある・変形が強い・手術を検討している)
手術前後のリハビリが中心になります。人工膝関節置換術(TKA)前は大腿四頭筋の筋力を温存しておくことが術後回復に直結します。術後は入院中のリハビリに続き、退院後の在宅リハビリが重要です。
退院後のリハビリ継続については、「退院後に訪問看護を使いたい。手配の流れと注意点」も参考にしてください。
訪問看護の理学療法士が在宅でできること
訪問看護のPTが行う変形性膝関節症のリハビリは、病院でのリハビリと異なり「その人が生活している環境」で行います。
個別の運動プログラム作成と指導
病院での集団体操や一般的なパンフレットと違い、その方の筋力・痛みの程度・生活習慣に合わせた運動プログラムを作成します。「何回やれているか」「どこが痛いか」を毎回確認しながら調整します。
住環境の評価と環境整備
床からの立ち上がり動作・玄関の段差・トイレの高さなど、膝に負担をかけている生活場面を洗い出します。手すりの設置場所・椅子の高さ調整・浴室での動作方法の変更を具体的に提案します。
OURには作業療法士(OT)も在籍しており、福祉用具の選定・住宅改修の提案も含めた包括的な支援が可能です。
介護保険を使った訪問リハビリの利用方法
要介護・要支援認定を受けている場合、訪問看護ステーションのPT/OT/STによる訪問リハビリ(訪問看護Ⅱ)を介護保険で利用できます。自己負担は介護保険の1〜3割です。認定を受けていない方でも、かかりつけ医から訪問看護指示書を発行してもらうことで医療保険での利用が可能な場合があります。
詳しくは「訪問看護の料金はいくら?医療保険・介護保険別の費用と自己負担の目安」をご覧ください。
よくある質問
変形性膝関節症でリハビリをやりすぎると悪化しますか?
痛みや腫れ・熱感が出るまでやるのはやりすぎです。運動後に30分以上持続する痛みの増強・翌日に強い倦怠感が残る場合は負荷が強すぎるサインです。「運動中に軽い痛みがある程度なら続けてよい」というのが現在のガイドラインの考え方です。状態に合わせた強度調整が重要で、PTの定期的な評価が安全管理につながります。
注射(ヒアルロン酸・ステロイド)とリハビリはどちらが先ですか?
OARSI(国際変形性関節症学会)のガイドラインでは、運動療法が全患者への第一選択です。注射は運動療法で効果不十分な場合の追加療法として位置づけられています。ただし強い炎症・腫れがある急性期はまず整形外科で炎症を抑えてからリハビリを再開します。主治医と相談の上で進めてください。
足のむくみと膝の痛みが同時にあります。関係ありますか?
変形性膝関節症で歩行量が減ると下肢の筋ポンプ機能が低下し、むくみが生じやすくなります。また、心疾患・腎疾患・静脈瘤によるむくみが膝周囲の重さ・痛みを増強させることもあります。むくみが急に悪化した場合や両側に出ている場合は訪問看護・かかりつけ医に相談してください。
人工膝関節の手術後、いつから在宅リハビリを始めますか?
退院直後から在宅でのリハビリを継続することが推奨されています。術後の回復は退院後3〜6か月が最も重要な時期です。退院後に訪問看護のPTが介入することで、筋力回復・歩行改善・日常生活動作の自立を支援します。宮崎市では退院支援担当者からOURへ直接連絡して調整することも可能です。
変形性膝関節症でも訪問看護は使えますか?
使えます。要介護・要支援認定があれば介護保険の訪問看護(訪問リハビリ含む)を利用でき、認定がなくても医師の指示があれば医療保険での利用が可能な場合があります。「リハビリだけ頼みたい」という方もいらっしゃいます。詳しくは「訪問看護でリハビリだけ利用できる?単独利用の条件・費用・手続き」をご覧ください。
まとめ
- 変形性膝関節症のリハビリは、コクランレビュー・OARSIガイドラインでもエビデンスレベル最高の治療法です
- 自宅でできる運動は大腿四頭筋セッティング・ハーフスクワット・ストレッチ・水中歩行・ウォーキングの5種が中心
- 正座・深いしゃがみ込み・急な高負荷運動は避け、「痛みが出ない範囲で毎日続ける」が基本
- 状態が中等症以上になったら、訪問看護のPTによる個別プログラム・住環境評価の活用を検討する
- 今日できる一歩:まず「大腿四頭筋セッティング10回×3セット」を寝たままやってみてください。それが続けば次のステップに進みます。OURへのご相談はお電話(0985-77-8266)またはお問い合わせフォームから。
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参考文献一覧
- Fransen M, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee: a Cochrane systematic review. Br J Sports Med. 2015;49(24):1554-1557.(コクランレビュー・運動療法の有効性)
- Bannuru RR, et al. OARSI guidelines for the non-surgical management of knee, hip, and polyarticular osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2019;27(11):1578-1589.(OARSI 非手術的治療ガイドライン)
- 日本整形外科学会(公益社団法人)— https://www.joa.or.jp/
- 日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会 変形性膝関節症診療ガイドライン2023年版(日本整形外科学会)