
糖尿病が進行して腎臓に影響が出る「糖尿病性腎症」は、日本で透析が必要になる原因疾患の第1位です。「腎臓が悪くなってきたと言われた」「そのうち透析が必要になると言われている」という方にとって、在宅でどのように管理を続けるか、透析が始まったあとの生活をどう支えるかは大きな不安です。
この記事では、糖尿病性腎症のステージ別の管理ポイントと、透析移行期から在宅定着に至るまでの訪問看護の役割について解説します。腎症が進行しつつある患者の在宅療養を支えるケアマネジャー・医療機関の担当者の方にも参考になる内容です。
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糖尿病性腎症とは?ステージ別に何が起きているか
糖尿病性腎症は、長期にわたる高血糖によって腎臓の細小血管が障害され、腎機能が徐々に低下していく病態です。日本の透析導入患者全体のうち、約4割が糖尿病性腎症によるものとされており、透析が必要になる原因疾患の第1位を占めています(参考:日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」)。
腎機能の低下はGFR(糸球体濾過量)とアルブミン尿の程度で段階的に評価されます。CKD(慢性腎臓病)のステージ分類では、G1〜G5の5段階で重症度が示され、G5(GFR 15未満)が腎不全期です。
CKDステージと主な状態・在宅での注意点
| ステージ | GFR(目安) | 主な状態 | 在宅での注意点 |
|---|---|---|---|
| G1〜G2 | 60以上 | 腎機能は保たれている | タンパク尿・血圧の管理開始 |
| G3a | 45〜59 | 軽〜中等度の低下 | 薬の副作用・電解質の変化に注意 |
| G3b | 30〜44 | 中等度〜高度の低下 | 貧血・骨代謝異常が出始める |
| G4 | 15〜29 | 高度の低下 | 透析療法の準備・選択を始める時期 |
| G5 | 15未満 | 腎不全期 | 透析または腎移植が必要 |
| G5D | — | 透析療法中 | 透析管理・合併症管理・QOL維持 |
糖尿病性腎症は、G3b〜G4の段階でも自覚症状がほとんどない場合があり、「なんとなく体が重い」「食欲がない」という訴えから発見されることも少なくありません。
透析前期(G3b〜G4)の在宅管理で重要なこと
透析が目前に迫った時期の在宅管理は、透析導入をできるだけ遅らせると同時に、いずれ始まる透析生活への準備を進めることが目標です。
血圧・体重・水分管理の厳格化
腎機能が低下すると、余分な水分や塩分が体内に蓄積しやすくなります。体重が短期間で増加している(1日1kg以上の増加など)場合は、水分過剰・心不全の合併を疑うサインです。
毎日の体重測定・血圧測定の結果を記録し、変動があれば速やかに医療機関へ連絡することが必要です。訪問看護師は定期訪問のたびにこれらの変化を確認し、「いつもと違う」兆候を主治医へ早期に報告します。
目標血圧や水分・塩分制限の具体的な数値は主治医の指示に従ってください。腎症の程度・心臓の状態によって個人差が大きく、一律の目標を当てはめることはできません。
薬剤管理の注意
腎機能が低下すると、腎臓から排泄される薬が体内に蓄積しやすくなります。NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬:イブプロフェン・ジクロフェナク等)は腎機能をさらに悪化させる可能性があるため、市販の痛み止め・解熱剤の使用については必ず主治医・薬剤師に相談してください(参考:日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」)。
また、インスリンや経口血糖降下薬も腎機能に応じた調整が必要になる場合があります。
食事管理(低タンパク・低塩分)
G3b以降では、主治医・管理栄養士の指導のもとで、タンパク質・塩分・カリウム・リンの制限が行われます。カリウムは腎不全期に高くなると心臓に危険な不整脈を起こすことがあるため、高カリウム血症を防ぐ食事管理が重要です(参考:日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」)。
具体的な食事制限の内容(タンパク質の1日摂取量・カリウム制限の基準等)は、主治医・管理栄養士が腎機能のステージに合わせて設定したものに従ってください。制限の程度を自己判断で変更することは危険です。
透析移行期の支援:治療法の選択から開始まで
G4〜G5の段階では、将来の透析療法についての意思決定支援が始まります。透析には主に「血液透析(HD)」「腹膜透析(PD)」「在宅血液透析(HHD)」の3つの方法があり、それぞれ生活スタイルへの影響が大きく異なります。
透析療法の比較
| 種類 | 実施場所 | 頻度・時間 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 血液透析(HD) | 透析施設への通院 | 週3回、1回4〜5時間 | 施設スタッフが管理・通院負担あり |
| 腹膜透析(PD) | 自宅 | 毎日(手動または自動) | 自宅で実施可能・感染管理が課題 |
| 在宅血液透析(HHD) | 自宅 | 週3〜6回(柔軟) | 自宅で実施・透析効率が高い・導入ハードル高め |
どの方法が適しているかは、残腎機能・生活環境・家族の協力体制・本人の意向によって異なります。訪問看護師は患者・家族が選択肢を理解して意思決定できるよう、医師・透析専門チームと連携しながら情報提供と心理的サポートを担います。
在宅透析全般については「在宅透析は本当にできる?自宅での透析生活と訪問看護が支えること」もあわせてご覧ください。
内シャント造設後の管理
血液透析を選んだ場合、透析開始の数か月前に前腕などに血液の出入口となる「内シャント(動静脈吻合部)」を造設する手術を行います。シャントは命綱でもあり、適切な管理が必要です。
- シャント側の腕での血圧測定・採血・注射は避ける
- 時計・きつい袖などでシャント部位を圧迫しない
- 毎朝シャント音(スリル)の確認を習慣にする
- 異音・腫脹・痛みがあれば速やかに受診する
訪問時に訪問看護師がシャントの状態(スリル・ブルイの確認・皮膚状態)を確認し、問題があれば早期対応につなげます。
透析開始後の在宅ケアと訪問看護
透析が始まった後も、在宅生活を安全に続けるためには多くの管理が必要です。
透析日・非透析日の体調管理
通院透析(週3回)の場合、透析日は4〜5時間施設に拘束されます。非透析日は体液貯留が進みやすく、翌日の透析直前(除水直前)に体重が増えすぎていると、心肺への負担が大きくなります。
水分制限(1日約700〜1,000mL の指示が多い)と塩分制限(1日6g未満が目安)を継続することが、透析間の体重増加を抑える基本です。訪問看護師は透析のある・なし関係なく定期的に体重・血圧・浮腫の状態を確認し、過剰な体液貯留の早期発見につとめます。
感染予防とカテーテル・シャント管理
透析患者は免疫機能が低下しており、感染症への抵抗力が弱くなっています。特にシャント感染・カテーテル(長期留置型静脈カテーテルを使用している場合)の感染は透析継続が困難になる重篤な合併症につながります。
訪問時に穿刺部位・カテーテル挿入部の皮膚状態を確認し、発赤・腫脹・浸出液の有無を記録します。
在宅血液透析(HHD)の場合の訪問看護
在宅血液透析は、在宅血液透析指導管理料を算定している患者が対象です。訪問看護は透析前後の状態確認・機器トラブル時の連絡体制構築・患者・家族の手技確認など、施設透析にはない支援が必要になります。
在宅血液透析は「別表8」に定める状態(在宅血液透析指導管理を受けている状態)に該当するため、特別管理加算(I)の算定が可能です。制度の詳細については「訪問看護の別表7・別表8の違いとは?」をご参照ください。
腹膜透析(PD)の場合の訪問看護
腹膜透析は患者・家族が自宅でバッグ交換を行うため、清潔操作の徹底が重要です。腹膜炎(排液の混濁・腹痛・発熱)は緊急対応が必要な合併症であり、訪問看護師が排液の状態確認・手技の再確認・異常の早期発見を担います。
OURが宮崎市で担う糖尿病性腎症のサポート
OUR訪問看護ステーションは、腎機能低下から透析移行・在宅定着に至る一連のプロセスを継続的に支援できる体制を持っています。
在宅透析管理への対応
OURは在宅血液透析(HHD)の管理に対応した訪問看護ステーションです。透析機器の操作状況の確認・穿刺部位の観察・シャント管理・急変時対応まで、経験のあるスタッフが対応します。「通院透析に通えなくなってきた」「在宅透析に移行したい」という段階でも、まずはご相談ください。
多職種との連携
腎症の管理には主治医(腎臓内科・糖尿病内科)・透析施設・ケアマネジャー・管理栄養士・薬剤師それぞれとの連携が欠かせません。OURは宮崎市内の医療機関・透析施設と連携実績を積んでおり、「在宅での生活を続けながら透析を続けたい」という方の支援体制を一緒に組み立てます。
24時間オンコール
透析患者は体調急変のリスクが高く、夜間・休日のサポートが特に重要です。「シャントの音がおかしい」「体重が急に増えて息苦しい」といった異変でも、夜中でもご連絡ください。
よくある質問
Q. 糖尿病があるだけで腎症になるのですか?
A. 糖尿病があれば必ず腎症になるわけではありませんが、長期にわたる血糖コントロール不良・高血圧・喫煙などが重なると腎症のリスクが高まります。定期的な尿検査・腎機能検査(eGFR)が早期発見の鍵です。
Q. 「腎機能が下がってきた」と言われました。今すぐ透析が必要ですか?
A. GFRが低下しているだけでは、すぐに透析が必要というわけではありません。G4(GFR15〜29)の段階でも、適切な管理で透析移行を数年遅らせることができる場合もあります。「いつ透析が必要になるか」「今から何を準備すべきか」については主治医に具体的に確認することをお勧めします。
Q. 透析になったら一人で在宅療養できますか?
A. 週3回の通院透析が中心の場合、透析施設に通いながら自宅で生活している方は多くいます。ただし、水分・食事管理・シャントの自己管理が必要であり、体調管理のサポートとして訪問看護の定期訪問を組み合わせると安心です。
Q. 在宅血液透析(HHD)はどんな人に向いていますか?
A. 在宅血液透析は施設への通院が難しい方・仕事や生活スタイルを維持したい方・透析時間や頻度を主体的に管理したい方に向いています。操作には習熟が必要で、機器の設置できる住環境・介助できる同居家族(または支援者)が条件となります。導入可否については透析専門医との相談が必要です。
Q. カリウムの高い食品を食べてはいけないのですか?
A. 腎機能低下の程度によって制限の厳しさは異なります。主治医・管理栄養士からカリウム制限の指示が出ている場合は、バナナ・干し柿・生野菜・芋類など高カリウム食品の過剰摂取に注意が必要です。ただし、制限の目標値は個人差があり、自己判断でゼロにするのも栄養不足のリスクがあります。必ず担当の管理栄養士に具体的な量を確認してください。
Q. 透析患者は訪問看護で介護保険と医療保険のどちらを使いますか?
A. 透析患者が訪問看護を利用する場合、要介護認定がある方は原則として介護保険が適用されますが、特別管理が必要な状態(在宅血液透析指導管理を受けている等)では医療保険が優先適用される場合があります。保険の適用区分は主治医・訪問看護ステーションに確認してください。
まとめ
糖尿病性腎症の在宅ケアは、ステージに応じた血圧・体重・食事管理から、透析移行期の意思決定支援・シャント管理・透析後の体調管理まで、長期にわたる継続的なサポートが必要です。
「腎機能が下がってきた」という段階からでも訪問看護を活用することで、自宅で安全に療養を続けられる期間を延ばし、透析移行後の生活の質を守ることができます。
OURは宮崎市・国富町・高岡町・綾町で在宅透析管理を含む糖尿病関連の在宅ケアに対応しています。「まずは相談だけ」でもお気軽にご連絡ください。
糖尿病全般の在宅療養については「糖尿病の在宅療養と訪問看護の役割」、インスリン管理については「インスリン自己注射の在宅管理と訪問看護」もあわせてご覧ください。
参考
- 日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」
この記事を監修した人
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