
「急に状態が悪化したのに、週3回しか来てもらえない」「退院後しばらくは毎日ケアを受けたいのに、指示書が変わらないと無理だと言われた」。在宅療養をしている方の家族から、こうした声を訪問看護の現場でよく聞きます。
訪問看護には「週3日まで」という制限があります。しかし、急性増悪・退院直後・終末期など、集中的なケアが必要な時期には、この制限を外す仕組みが用意されています。それが特別訪問看護指示書(通称:特指示)です。
この記事では、特別訪問看護指示書の仕組み・発行条件・有効期間・月2回発行できるケース・費用の変化・家族が動くべき手順を、宮崎市で24時間対応を行う訪問看護師・療法士チームが丁寧に解説します。
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特別訪問看護指示書とは?通常の指示書と何が違うのか
訪問看護を利用するには、主治医が作成した「訪問看護指示書」が必要です。この指示書に基づいて、訪問看護ステーションは計画的な訪問を行います。
通常の訪問看護指示書のもとでは、介護保険を利用している場合は週3日が原則の上限です。1日1回まで、という決まりもあります。もちろん、1週間を通して見守りが必要な方にとって、週3日という制限はもどかしい場面が出てきます。
そこで活用されるのが特別訪問看護指示書です。この指示書が発行された期間中は、週3日の制限がなくなり、毎日でも・1日複数回でも(医師の指示の範囲で)訪問看護を利用できるようになります。
「週3日以上来てほしい」「退院直後は毎日様子を見てほしい」という状況のための制度です。
通常の指示書と特別訪問看護指示書の比較
| 項目 | 通常の訪問看護指示書 | 特別訪問看護指示書 |
|---|---|---|
| 訪問回数(介護保険) | 週3日まで(原則) | 制限なし(毎日・複数回も可) |
| 保険の種類 | 介護保険 or 医療保険 | 医療保険(介護保険は不適用) |
| 有効期間 | 最長6か月 | 最長14日間 |
| 月の発行回数 | 制限なし | 原則1回(条件により2回) |
| 発行者 | 主治医 | 主治医 |
重要なポイントが1つあります。特別訪問看護指示書が出ている期間中は、介護保険ではなく医療保険(訪問看護療養費)が適用されます。普段は介護保険で訪問看護を使っている方でも、特指示が出た期間は医療保険に切り替わります。費用の自己負担割合が変わることがあるため、事前に確認しておきましょう。
「特指示があれば回数無制限」は正しい?
正確には「週3日の制限がなくなる」であり、「無制限に何回でも来てもらえる」ではありません。
実際の訪問回数は、主治医の指示内容・訪問看護師の観察で決まった計画・ステーションの体制によって変わります。「毎日来てほしい」という希望と、医療的に必要な頻度が一致することが前提です。特指示を発行してもらったうえで、訪問看護ステーションと具体的なスケジュールを相談してください。
特別訪問看護指示書が発行される条件
特別訪問看護指示書を発行するかどうかは、主治医が判断します。「週4日以上の訪問看護が必要な状態にある」と医師が判断した場合に発行されます。
厚生労働省の通知(訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法及び留意事項について)では、以下のような状態が対象として示されています。
対象となる主な状態
① 病状の急性増悪
慢性疾患を抱えながら在宅療養中の方が、急激に状態が悪化した場合です。例えば:
- 心不全が悪化し、体重増加・息切れ・浮腫が出現した
- COPDの急性増悪で酸素飽和度が低下した
- 糖尿病の血糖コントロールが急激に乱れ、低血糖・高血糖を繰り返している
- 誤嚥性肺炎を起こし、退院後もまだ状態が不安定
こうした「いつもより明らかに悪い」状態が続くとき、毎日観察・処置が必要と判断されれば特指示の対象になります。
② 退院直後
入院から自宅に戻ったばかりの時期は、生活環境の変化に体が慣れておらず、状態が不安定になりやすい時期です。脳梗塞後遺症・骨折術後・がん治療後など、退院直後に集中したケアが必要な方は特指示の対象となります。
退院前カンファレンス(退院時の話し合い)で、主治医・病棟看護師・訪問看護ステーション・ケアマネが揃って「退院直後は特指示を出す」と事前に決めておくケースが多いです。
③ 終末期(看取り期)
がんや難病の末期など、終末期にある方は、連日の観察・症状緩和・家族支援が必要です。この時期に特指示を活用することで、訪問看護師が毎日または1日複数回訪問し、最期のときまで寄り添うケアを提供できます。
④ その他、週4日以上の訪問が医学的に必要な状態
上記以外でも、主治医が「この方には週4日以上の訪問看護が必要」と判断すれば発行できます。病名・疾患の種類は問いません。
大切なこと:「出してもらえるかは相談次第」
特別訪問看護指示書は、主治医から自動的に発行されるものではありません。家族・ケアマネが「状態が悪化している」「もっと頻回に来てほしい」と主治医に伝えて初めて、発行の検討が始まります。
「先生に言いにくい」と感じる方も多いですが、訪問看護師やケアマネジャーに相談すれば、主治医への橋渡しをしてくれます。 遠慮せずに現状を伝えてください。
有効期間・月2回の発行条件
有効期間は最長14日間
特別訪問看護指示書の有効期間は、最長14日間です。主治医が「○月○日〜○月○日」と記載した期間が有効であり、14日を超えることはできません。
有効期間が終わると、自動的に通常の訪問看護指示書のルールに戻ります。つまり、介護保険の場合は週3日の制限が再び適用されます。
「14日経って状態がまだ不安定」という場合は、主治医に相談してもう1枚発行してもらう必要があります(条件がある場合のみ)。
原則として月1回まで
特別訪問看護指示書は、原則として1か月に1回(14日分)しか発行できません。1か月に2回発行できるのは、以下の2つの状態に限られます(訪問看護療養費算定基準に基づく)。
月2回まで発行可能な状態:
| 状態 | 概要 |
|---|---|
| 気管カニューレを使用している | 気管切開・人工呼吸器管理が必要な方。痰の吸引・カニューレ管理を連日行う必要がある |
| 真皮を超える褥瘡がある | DESIGN-R分類でD3以上の深い床ずれ(真皮を越えている状態)。毎日の洗浄・処置が必要 |
これらの状態の方は、1枚目の14日が終わった後も継続した集中管理が必要なことが多く、2枚目の発行が認められています。
対象かどうかは主治医・担当のケアマネジャー・訪問看護ステーションに確認してください。なお、これ以外の状態で「どうしても1か月に2回必要」という場合でも、制度上の例外は認められていません。
有効期間中に状態が改善したら?
有効期間の途中でも、主治医が「もう週3日で大丈夫」と判断した場合は、特指示の期間内でも通常の指示書に切り替えることができます。期間を短縮することは問題ありません。
逆に言えば、14日間ずっと特指示を使い続ける義務もありません。状態に応じて柔軟に対応できます。
費用の変化:介護保険から医療保険へ
保険が切り替わることを理解する
特指示が出ている期間中は、医療保険(訪問看護療養費)が適用されます。普段介護保険で訪問看護を使っている方も、特指示期間中は医療保険になります。
これにより、介護保険の「区分支給限度額(使える単位数の上限)」は関係なくなります。訪問回数が増えても、介護保険の枠を圧迫しない、ということでもあります。
費用の目安
医療保険での訪問看護費用は、加入している保険・年齢・所得によって自己負担が1〜3割になります。
| 条件 | 自己負担割合 |
|---|---|
| 75歳以上(後期高齢者医療) | 1〜3割(所得による) |
| 70〜74歳(高齢受給者) | 2割(現役並み所得は3割) |
| 69歳以下 | 3割 |
| 生活保護受給者 | 0割(公費負担) |
訪問回数が増えるほど費用総額も増えます。ただし、医療保険には高額療養費制度があります。1か月の自己負担が一定額を超えた分は払い戻しが受けられます。費用が心配な場合は、病院・ケアマネ・役所の窓口に相談してください。
ケアマネの立場から:区分支給限度額の考え方
介護保険の区分支給限度額が「限度いっぱい」になっている利用者でも、特指示が出た期間は医療保険で訪問看護を受けられます。訪問看護の増回を介護保険の枠の中でやりくりしようとしていたケアマネにとっても、特指示は活用しやすい仕組みです。
特指示の期間が終わったあとに介護保険の訪問看護に戻す場合、ケアマネはケアプランを再調整する必要があります。期間前後の切り替えスケジュールをあらかじめ確認しておきましょう。
申請の流れ:家族・ケアマネが動くこと
ステップ1:状態の変化に気づいたら、まず相談
「なんかいつもより悪そう」「退院後が不安」。こう感じたとき、まず担当の訪問看護師またはケアマネジャーに連絡してください。
訪問看護師は状態のアセスメントを行い、「特指示が必要かどうか」を主治医に報告・相談します。家族が「特別訪問看護指示書をお願いしたい」と直接主治医に伝えることも問題ありません。どちらの経路でも進めることができます。
ステップ2:主治医が指示書を発行
状況を確認した主治医が「週4日以上の訪問看護が必要」と判断したら、特別訪問看護指示書を記入・押印します。書式は「訪問看護指示書・特別訪問看護指示書」の二段構成になっており、特別訪問看護指示書の欄に有効期間・必要な処置・状態が記載されます。
在宅主治医(かかりつけ医)が書くほか、入院中の担当医が退院前に書いておくこともよくあります。
ステップ3:指示書が訪問看護ステーションに届く
指示書は通常、主治医から訪問看護ステーションにFAXで送られます。家族が直接受け取り、ステーションに届けることもあります。
指示書が届いた時点から、週3日の制限が外れます。 訪問看護ステーションはすぐに頻回訪問のスケジュールを組みます。
ステップ4:訪問スケジュールを組んで開始
特指示期間中の訪問計画を訪問看護ステーションが作成し、主治医の指示内容に沿ったケアを開始します。毎日の訪問・朝夕2回の訪問など、状態に応じた計画になります。
宮崎市内でOURに依頼いただく場合、24時間365日のオンコール体制で動いています。特指示期間中でも夜間・休日の緊急対応を含めてスケジュールを組みます。気管カニューレ管理・褥瘡処置・点滴管理・ターミナルケアなど、医療処置の多い方の対応実績があります。
宮崎市・近郊で特指示の活用を検討している方へ
「状態が変化した」「退院後の受け入れに不安がある」という場合は、OURまで気軽にお問い合わせください。特別訪問看護指示書の手続きも含めて、主治医・ケアマネとの連携から一緒にサポートします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 特別訪問看護指示書がなければ、訪問看護は週3回しか来てもらえませんか?
介護保険で訪問看護を利用している場合は、原則として週3日が上限です。ただし、医療保険が適用される特定の疾患・状態(別表第7・別表第8に該当する方など)では、もともと週3日の制限がありません。ご自身の保険や疾患の状況によって条件が異なるため、担当のケアマネジャーまたは訪問看護ステーションに確認することをお勧めします。
Q2. 家族から「特別訪問看護指示書を出してほしい」と主治医に直接お願いしてもよいですか?
もちろんです。「状態が悪化していて、もっと頻繁に看護師に来てほしい」「退院後は毎日様子を見てほしい」と主治医に伝えることは、自然な相談です。主治医との関係で言いにくければ、担当の訪問看護師やケアマネジャーに「主治医に相談してほしい」と依頼することもできます。
Q3. 退院当日から特指示を使うことはできますか?
できます。退院前の段階で主治医が「退院直後は特指示が必要」と判断した場合、退院時に合わせて指示書を準備しておくことが可能です。退院前カンファレンスで訪問看護ステーション・ケアマネジャーも参加して調整しておくと、退院当日からスムーズに頻回訪問が始められます。
Q4. 特指示の14日が終わったら、また申請できますか?
同じ状態が続いている場合、再度主治医に相談することはできます。ただし、原則として1か月に1回しか発行できないため、14日が終わってその月の残りの期間に続けて特指示を使うことは(月2回可能な状態でない限り)できません。翌月に再度発行を依頼することは可能です。継続した集中ケアが必要な場合は、医師・ケアマネ・訪問看護ステーションで今後の対応を相談してください。
Q5. ターミナルケア(看取り)の時期も特指示を使えますか?
はい、終末期にある方は特別訪問看護指示書の対象です。がん末期・難病の終末期では、毎日または1日複数回の訪問が必要になることが多く、特指示を活用することで連日のケアが可能になります。OURでは在宅ターミナルケア・自宅看取りの対応実績があります。
Q6. 特指示の期間中、ヘルパーなど介護保険の他のサービスは使えますか?
訪問看護が医療保険に切り替わるだけで、ホームヘルパー・デイサービスなど他の介護保険サービスは引き続き介護保険で利用できます。特指示の期間中も、ケアプランに組まれた他のサービスは通常通り継続します。
Q7. 特別訪問看護指示書で夜間や早朝の訪問もできますか?
指示書は訪問頻度の制限を外すものです。夜間・早朝の対応ができるかは、訪問看護ステーションの体制次第です。OURは24時間365日のオンコール対応を行っており、特指示期間中の夜間緊急訪問・早朝対応にも対応しています。「夜間が不安」という場合は、相談時に体制を確認してください。
まとめ
特別訪問看護指示書は、急性増悪・退院直後・終末期など「今、集中的にケアが必要」な時期に、週3日の制限を外して毎日の訪問を可能にする重要な制度です。
- 発行するのは主治医。家族・ケアマネが状態を積極的に伝えることが大切
- 有効期間は最長14日間、原則月1回(気管カニューレ使用または真皮を超える褥瘡がある場合は月2回可)
- 期間中は医療保険が適用。介護保険の区分支給限度額は影響しない
- 期間終了後は通常の訪問看護に戻る
「最近いつもより調子が悪い」「退院後のケアが心配」と感じたら、まず訪問看護ステーションかケアマネジャーに相談してください。OURでは、特指示の調整を含めて、主治医・ケアマネとの連携をサポートしています。
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
“あなたらしい”在宅生活を、24時間・365日サポートします
☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時
参考情報
- 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法及び留意事項について」(最新版は厚生労働省ウェブサイトにてご確認ください)
- 公益財団法人 日本訪問看護財団(https://www.jvnf.or.jp/)