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ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

シャワーチェア(介護用風呂椅子)の選び方と介護保険の使い方|作業療法士が解説

お風呂での転倒は、高齢者の骨折・入院・在宅生活の終わりにつながる重大なリスクです。シャワーチェア(介護用風呂椅子)は「あって当たり前」の道具に思えますが、身体状況に合ったものを正しく選べている方は多くありません。また、介護保険を使えば1〜3割の自己負担で購入できることを知らずに全額支払っているケースも少なくありません。

この記事では、シャワーチェアの種類と選び方、介護保険(福祉用具購入費)の申請手順、費用の目安、そして作業療法士・訪問看護師の視点から見た「身体状況別の選び方」まで、必要なことをすべて解説します。

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シャワーチェア(介護用風呂椅子)とは?普通の風呂椅子との違い

シャワーチェアとは、入浴時の転倒リスクを下げるために設計された介護用の椅子です。一般的な風呂椅子と似て見えますが、構造と目的が根本から異なります。

普通の風呂椅子との4つの違い

項目一般の風呂椅子シャワーチェア(介護用)
高さ低め(10〜20cm)高め(35〜50cm前後)・調節機能付き
安定性軽量・ズレやすい脚ゴム・吸盤で固定
背もたれなしあり(背もたれ付きが主流)
肘掛けなしあり(立ち上がり補助)

高さが最も重要です。一般的な椅子は低すぎて立ち上がる際に膝や腰に大きな負荷がかかります。シャワーチェアは座面を高く設定することで立ち座りの動作を安全にします。

シャワーチェアが必要になるサイン

次のいずれかに当てはまる場合、シャワーチェアの導入を真剣に検討してください。

  • 浴室での立ち上がりに手をつかなければならない
  • 入浴後に足腰の疲れが強い
  • 脳梗塞・骨折・パーキンソン病・関節リウマチなど運動機能に影響する病気がある
  • 介護認定(要支援・要介護)を受けている
  • 訪問看護・リハビリを利用している

訪問看護や訪問リハビリの際、OURのスタッフが「お風呂どうされていますか?」と確認するのはこのためです。転倒してからでは遅い場面を現場で何度も経験してきました。


介護保険でシャワーチェアは購入できるか?制度の全体像

結論から言うと、要支援1以上の介護認定を受けていれば、シャワーチェアは介護保険の「福祉用具購入費」制度を使って購入できます。

「福祉用具購入費」とは何か

介護保険には「福祉用具貸与(レンタル)」と「特定福祉用具販売(購入)」の2種類があります。シャワーチェアは衛生上の理由からレンタルが認められておらず、購入費の支給という形で補助されます。

制度対象品目上限
特定福祉用具販売腰掛便座・入浴補助用具・簡易浴槽・移動用リフトのつり具など年間10万円(同一年度内)

10万円の自己負担割合は要介護度・収入によって1〜3割です。1割負担なら実質1万円以内で購入できる商品がほとんどです。

対象になる入浴補助用具の5種類

入浴補助用具として介護保険の対象になるのは以下の5種類です。シャワーチェアはこのうち「入浴用いす」に該当します。

  1. 入浴用いす(シャワーチェア・シャワーベンチ)
  2. 浴槽用手すり(浴槽のふちに取り付けるグリップ)
  3. 浴槽台(浴槽内に置いて底上げする台)
  4. 入浴台(浴槽をまたぐ際に腰かけるバスボード)
  5. 浴室内すのこ(浴室の床の段差解消・滑り止め)

複数品目をまとめて購入しても、合計が10万円以内であれば一度の申請でカバーできます。シャワーチェアと浴槽手すりを同時購入するケースが多く見られます。

レンタルではなく「購入」扱いになる理由

浴槽手すりやシャワーチェアは「直接肌に触れる用具」として、衛生管理上レンタル(再利用)が困難と判断されています。そのため介護保険では購入費の支給という形になっています。


介護保険でシャワーチェアを購入できる条件

要支援1・2でも使えるか

要支援1・2でも購入できます。 介護保険の特定福祉用具販売は要支援1から対象です。要介護度が低いからといって制度を使えないわけではありません。

むしろ、転倒が起きる前の予防として早めに導入することが在宅生活の継続につながります。要支援の段階でシャワーチェアを導入することで、転倒骨折による要介護度の悪化を防ぐ効果が期待できます。

介護認定を受けていれば医師の指示書は不要

シャワーチェアなどの福祉用具購入に、医師の指示書は必要ありません。介護認定(要支援1以上)があれば、ケアマネジャーと福祉用具専門相談員を通じて手続きができます。

自己負担額の早見表(1割・2割・3割)

シャワーチェアの価格帯は商品によって異なりますが、以下を目安にしてください。

商品価格帯1割負担2割負担3割負担
5,000円の商品500円1,000円1,500円
10,000円の商品1,000円2,000円3,000円
20,000円の商品2,000円4,000円6,000円
30,000円の商品3,000円6,000円9,000円

自己負担割合は「介護保険負担割合証」に記載されています。不明な場合はケアマネジャーまたは市区町村の介護保険窓口に確認してください。


申請・購入の手順(ステップ別)

STEP1 ケアマネジャーへ相談する

まず担当のケアマネジャーに「シャワーチェアを購入したい」と伝えます。ケアプランに福祉用具購入の記載が必要なため、ケアマネジャーを通じた手続きが原則です。

まだケアマネジャーがいない場合は、お住まいの市区町村の「地域包括支援センター」に相談してください。宮崎市では各地区に地域包括支援センターが設置されています。

STEP2 福祉用具専門相談員のアドバイスを受ける

ケアマネジャーの紹介または自分で選んだ福祉用具販売事業所に連絡し、福祉用具専門相談員に相談します。相談員が実際に自宅に来て浴室の状況・身体状況を確認したうえで商品を提案してくれます(この訪問・相談は無料です)。

作業療法士(OT)が在籍している訪問看護ステーションを利用している場合、OTが同席して専門的なアドバイスをすることもできます。OURではこのような場面でのサポートを行っています。

STEP3 福祉用具販売事業者から購入する

商品が決まったら購入します。支払い方法は2通りです。

①代理受領方式:自己負担分(1〜3割)のみ支払い、残りは事業者が保険者(市区町村)に請求する。多くの事業者がこの方式に対応しており、一般的です。

②償還払い方式:いったん全額支払い、後で市区町村に申請して保険給付分(7〜9割)を払い戻してもらう。

STEP4 書類の確認と記録の保管

代理受領方式の場合は自己負担分の領収書を受け取り保管します。同一年度内に複数の入浴補助用具を購入する場合に、10万円の上限管理のため必要になることがあります。


シャワーチェアの種類と選び方

「どれでも同じ」と思って選ぶのが最も危険です。身体状況・浴室の広さ・使い方によって最適な商品は異なります。

背もたれの有無で選ぶ

背もたれありが基本推奨です。 背中を預けられることで、洗体時のバランス保持が格段に安全になります。脳梗塞後の片麻痺・体幹の不安定さがある方には必須です。

背もたれなしタイプは、浴室が狭くて背もたれ付きが置けない場合や、比較的自立度が高い方の補助的な使用に向いています。

高さ調節機能の重要性

高さ調節ができる商品を選んでください。 座面の高さが合っていないと、立ち上がりに余計な力が必要になり転倒リスクが上がります。

目安は「座ったときに膝が直角(90度)になる高さ」です。ただしこれはあくまで出発点であり、浴槽のまたぎ動作・浴室の広さ・個人の身体状況によって調整が必要です。福祉用具専門相談員やOTに実際に確認してもらうことを強く推奨します。

肘掛けの有無(立ち上がりサポート)

肘掛けがあると、立ち上がる際に手で押して補助することができます。次のような方には肘掛け付きが適しています。

  • 膝・股関節の痛みがある
  • 脳梗塞・パーキンソン病など脚の筋力低下がある
  • 立ち上がりに時間がかかる

ただし浴室が狭い場合、肘掛けが邪魔になることもあります。浴室の幅を事前に測って確認しましょう。

コンパクト・折りたたみタイプの使いどころ

浴室が狭い場合や、使用しないときに収納したい場合は折りたたみタイプが便利です。ただし安定性が固定タイプより劣る商品もあるため、転倒リスクの高い方には向かないことがあります。

座面の素材・穴あき型の衛生メリット

シャワーチェアの座面は「穴あきタイプ」と「平面タイプ」があります。穴あきタイプは水はけがよく衛生的で、介護保険の対象商品の多くがこのタイプです。座面に水がたまりにくいため、皮膚の清潔保持にも有利です。


作業療法士・訪問看護師からみた選び方のポイント

OURには認定作業療法士(OT)が在籍しており、日々の訪問の中で福祉用具の選定・使い方のアドバイスを行っています。現場でよく見られる「合っていない選択」を紹介します。

身体状況別の選び方

身体状況推奨ポイント
脳梗塞後片麻痺背もたれあり・肘掛けあり・高さ調節可能。麻痺側と健側の重心バランスに注意
パーキンソン病肘掛けあり・座面広め・床からの高さ確保。すくみ足対策で浴室入口の段差にも注意
大腿骨頸部骨折後脱臼肢位に注意。OT・PTと相談して股関節屈曲角度を確認
関節リウマチ手関節への負担を考慮。肘掛けは肘で押せるタイプが有利
透析患者透析直後の血圧低下・倦怠感を考慮。背もたれに体重を預けられる設計を優先

「高すぎる」「低すぎる」椅子がもたらすリスク

高すぎる椅子:足が床につかない状態になり、体が不安定になる。また座面から滑り落ちるリスクがある。

低すぎる椅子:膝を深く曲げた状態からの立ち上がりが困難になり、転倒や腰痛の原因になる。大腿骨頸部骨折後の方は脱臼肢位になるリスクもある。

在宅訪問時にOTが必ずチェックする3つのポイント

  1. 浴室の広さと椅子の置き場所:椅子を置いた状態で安全に立ち上がれるスペースがあるか
  2. 浴槽の高さとシャワーチェアの高さの関係:浴槽をまたぐ際に椅子に腰かけながらできるか
  3. シャワーヘッドの位置と使い方:座ったまま全身を洗える位置にあるか。シャワーホースの長さも確認

シャワーチェア以外に介護保険で購入できる入浴補助用具

シャワーチェアと合わせて検討・購入できる入浴補助用具を紹介します。組み合わせて使うことで、より安全な入浴環境が整います。

浴槽手すり(グリップ)

浴槽のふちに取り付けるタイプの手すりです。浴槽に入るとき・出るときの体の支えになります。工事不要で取り付けられる商品が多く、賃貸住宅でも使えます。価格は5,000〜15,000円程度が多く、シャワーチェアとの同時購入で10万円の枠内に収まることがほとんどです。

バスボード(入浴台)

浴槽のふちにかけて使う板状の補助具です。浴槽をまたぐのが困難な方が、一度バスボードに腰かけてから浴槽内に移動するために使います。脳梗塞後や骨折後の方に特に有効です。

浴槽台・すのこ

浴槽内に置いて底上げする台(浴槽台)や、浴室の床の段差・滑り止め用のすのこも介護保険の対象です。浴槽台を使うことで、浴槽底からの立ち上がりを楽にできます。


介護保険が使えないケースと注意点

介護認定を受けていない場合

介護認定がなければ介護保険は使えません。「まだ介護保険には早い」と思っている方でも、転倒リスクがある状況なら早めに認定申請をすることをおすすめします。申請から認定まで約1〜2か月かかることも考慮してください。

なお、認定申請中でも「申請日に遡って認定日が適用される」場合があります。申請中に購入した場合の取り扱いは市区町村によって異なるため、事前に確認が必要です。

年間10万円の上限を超えた場合

同一年度内(4月〜翌3月)に複数の福祉用具を購入して合計が10万円を超えた場合、超過分は全額自己負担となります。複数品目を購入する場合は事前に福祉用具専門相談員に確認してください。

同じ品目を再購入する場合のルール

原則として同一品目の再購入は認められません(破損・著しい摩耗等の特別な事情があれば可)。最初の選択が重要です。


宮崎市でのシャワーチェア購入・相談

ケアマネジャーが決まっていない場合の相談先

ケアマネジャーがいない場合は、宮崎市の地域包括支援センターに相談してください。要支援の方は地域包括支援センターが直接ケアプランを作成します。要介護の方には居宅介護支援事業所のケアマネジャーを紹介してもらえます。

OUR訪問看護ステーションができるサポート

OURでは、訪問看護・訪問リハビリのサービスを通じて以下のサポートを行っています。

  • 浴室環境の安全評価(OT・PT・看護師による)
  • シャワーチェア・入浴補助用具の選定アドバイス
  • 福祉用具専門相談員との情報共有
  • 退院直後の在宅生活への移行支援

「どのシャワーチェアを選べばいいかわからない」「浴室に入れるかどうか不安」といった段階からご相談ください。OURは訪問看護指示書をいただいた後すぐに訪問でき、お風呂の評価まで一貫して対応します。

訪問看護を初めて使う流れはこちら(ステップ別に解説)


よくある質問

要支援1でもシャワーチェアは介護保険で購入できますか?

はい、購入できます。特定福祉用具販売(入浴補助用具)は要支援1以上が対象です。要支援でも年間10万円の枠内であれば、シャワーチェアや浴槽手すりを自己負担1〜2割で購入できます。

シャワーチェアはレンタルできますか?

介護保険では、シャワーチェアのレンタルは認められていません。入浴補助用具は衛生上の理由から「特定福祉用具販売」として購入のみが対象です。ただし、一部の民間サービスでレンタルを行っているケースはあります。

介護認定を受けていないが、今すぐシャワーチェアを使いたい場合は?

介護認定なしでも自費でシャワーチェアを購入することは可能です。その場合は介護保険の補助はありませんが、すぐに使い始めることができます。並行して介護認定の申請をすることをおすすめします。なお、申請中に購入した場合は保険が適用されないことが多いため、認定後に改めて購入することも選択肢です。

同じシャワーチェアを2脚購入することはできますか?

原則として、同一品目の重複購入は認められません。ただし同一品目でも機能が異なる(背もたれなしと背もたれあり等)場合は相談の余地があります。担当のケアマネジャーまたは市区町村の介護保険窓口に確認してください。

浴室が狭くてシャワーチェアを置けるか不安です。

浴室の広さに合った商品選びが重要です。福祉用具専門相談員が自宅を訪問して浴室の寸法を確認しながら提案してくれます(訪問・相談は無料)。OURの作業療法士も訪問時に浴室環境を一緒に確認することができます。折りたたみタイプや省スペース設計の商品もあります。

福祉用具を購入する前にOTに相談できますか?

はい、可能です。OURの訪問看護・訪問リハビリを利用されている方はもちろん、これから利用を検討している方もまずはお電話またはお問い合わせフォームからご相談ください。浴室環境の評価・福祉用具の選定は、OT・PTが最も得意とする分野です。

介護保険以外に使える補助制度はありますか?

自治体によって独自の補助制度がある場合があります。宮崎市では介護保険の特定福祉用具販売が主な補助制度ですが、障害者手帳をお持ちの方は「日常生活用具給付等事業」として別途補助を受けられる場合があります。詳細は宮崎市介護保険課または担当ケアマネジャーにご確認ください。


まとめ

  • シャワーチェア(介護用風呂椅子)は要支援1以上なら介護保険(特定福祉用具販売)で購入でき、自己負担は1〜3割
  • 年間10万円の枠内であれば、浴槽手すり・バスボード等と合わせて複数品目を購入可能
  • 商品選びは「高さ調節」「背もたれ・肘掛けの有無」「浴室の広さ」で判断する
  • 身体状況によって最適な商品は異なるため、OT・福祉用具専門相談員への相談が重要
  • 転倒してからではなく、転倒リスクがある段階で早めに導入することが在宅生活の継続につながる

お風呂での転倒防止は、在宅生活を長く続けるための土台です。「なんとなく大丈夫」では済まなくなる前に、ぜひ一度ご相談ください。


参考文献一覧

この記事を監修した人

OUR
TEAM

OUR訪問看護ステーション

看護・リハビリチーム

看護師7名・理学療法士1名・作業療法士3名 / 宮崎市

宮崎市を中心に24時間・365日の訪問看護を提供。在宅透析・人工呼吸器・CV管理などの高度医療処置から生活期リハビリまで対応。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、認定作業療法士・中田富久が代表を務め、医師・ケアマネジャーと連携し利用者一人ひとりの在宅生活を支援している。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。

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