
「最近、歩くのが遅くなった」「ペットボトルの蓋が開けられない」「立ち上がるのにひと苦労する」こうした変化は、「歳のせい」として流されることが多いですが、実はサルコペニアと呼ばれる医学的な状態が背景にある場合があります。
サルコペニアは、加齢による筋肉量の低下と筋力・身体機能の低下が合わさった状態です。放置すると転倒・骨折・要介護状態へつながる一方、適切な運動・栄養の介入で改善できることも多く、早期に気づくことが重要です。
この記事では、サルコペニアのセルフチェック方法と、在宅でできる予防・改善のアプローチをOURのリハビリスタッフが解説します。
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サルコペニアとは:筋肉量と機能の両方が低下した状態
サルコペニア(Sarcopenia)とは、加齢に伴って骨格筋量が減少し、筋力や身体機能が低下した状態です。国際的な診断基準(AWGS2019)では、①筋力低下(握力低下)、②身体機能の低下(歩行速度など)、③筋肉量の減少のうち、①+②または①+③が当てはまる場合にサルコペニアと判断されます。
日本老年医学会の報告によると、65歳以上の約15〜25%にサルコペニアが認められるとされており、年齢が上がるほど割合は増加します。
サルコペニアの簡単セルフチェック3つ
チェック①:指輪っかテスト(ふくらはぎの太さ)
両手の親指と人差し指で輪を作り、利き脚でないほうのふくらはぎの一番太い部分を囲みます。
- 輪が余る(隙間ができる):筋肉量が少ない可能性あり
- ちょうど囲める:要注意
- 輪が届かない:現時点では筋肉量は十分な可能性が高い
チェック②:握力(目安)
- 男性:26kg未満で低下の疑い
- 女性:18kg未満で低下の疑い
握力計がない場合は、500mLのペットボトルを片手で楽に持てるか・蓋を開けられるかを目安にしてください。
チェック③:歩行速度
6mの距離を普通のペースで歩き、かかった時間を計ります。6秒以上(速度1.0m/秒未満)の場合は、身体機能低下の疑いがあります。
3つのチェックのうち2つ以上が当てはまる場合は、かかりつけ医または訪問看護師に相談することをお勧めします。
在宅でできるサルコペニア予防の運動:3種目
OURの訪問リハビリスタッフが伝える、椅子に座ったままできる筋力維持の基本3種目です。
種目①:スクワット(椅子からの立ち座り)
椅子の前に浅く座り、腕を前に伸ばしながらゆっくり立ち上がり、またゆっくり座ります。
- 目標:10回 × 2〜3セット
- ポイント:素早く立つのではなく、3秒かけて立ち・3秒かけて座る
- 転倒が心配な場合は手すりや壁を使って行う
種目②:かかと上げ(カーフレイズ)
椅子やカウンターに手を置いて立ち、かかとをゆっくり上げ下げします。ふくらはぎの筋肉を鍛え、歩行安定・血流改善につながります。
- 目標:20回 × 2セット
- 座ったままでも実施可能
種目③:もも上げ(股関節屈曲)
椅子に座った状態で、片脚ずつ太ももを持ち上げます。腸腰筋(インナーマッスル)を刺激し、歩行の一歩目のスムーズさを改善します。
- 目標:左右各10回 × 2セット
- 腰が痛い場合は無理をしない
これらの運動は毎日続けることが重要です。 一度に多くやるより、習慣として続けることを優先してください。
サルコペニア予防に効果的な食事:たんぱく質が最重要
筋肉は食事から摂ったたんぱく質を材料に作られます。高齢者がサルコペニアを予防・改善するために必要なたんぱく質量は、体重1kgあたり1.2〜1.5gが目安とされています(通常成人は0.8g/kg)。
体重50kgの方であれば、1日60〜75gのたんぱく質が目標です。
| 食品 | たんぱく質の目安 |
| 鶏むね肉100g | 約23g |
| 卵1個 | 約6g |
| 豆腐1/2丁(150g) | 約8g |
| 牛乳コップ1杯(200mL) | 約7g |
| 魚の切り身1枚(80g) | 約18g |
「肉・魚・卵・豆製品のどれかを毎食1品入れる」ことを意識するだけで、たんぱく質摂取量は大きく改善します。
また、運動後30分以内にたんぱく質を摂ることで、筋肉の合成効率が上がります。訪問リハビリの後に牛乳やヨーグルトを摂る習慣も有効です。
よくある質問
「歳だから仕方ない」と言う本人を、どうやって運動に誘えばいい?
「筋肉を増やす」と言うより「転ばないための練習」「ひ孫と一緒に遊べるように」など、本人が大切にしていることと結びつけると受け入れてもらいやすくなります。OURのリハビリスタッフも、運動の目的を本人の「やりたいこと」に合わせて提案しています。
訪問リハビリとデイサービスのリハビリ、どちらがサルコペニアに効果的ですか?
それぞれ特徴が異なります。訪問リハビリは自宅の環境で個別に対応でき、日常生活動作(調理・トイレ・入浴)と直結したリハビリができます。デイサービスは集団の中での活動や社会参加の要素が加わります。状況に応じて組み合わせることもできます。
食事が食べられないのにたんぱく質を増やせますか?
食欲がない場合は、少量でたんぱく質が摂れる食品(卵・チーズ・プロテインドリンク)が有効です。嚥下が難しい場合は、ゼリータイプの栄養補助食品も活用できます。主治医や訪問看護師、管理栄養士と相談しながら進めましょう。
まとめ:「歳のせい」で諦めない。サルコペニアは介入で改善できる
- サルコペニアは加齢による筋肉量・筋力の低下で、65歳以上の約15〜25%に認められる
- 指輪っかテスト・握力・歩行速度で簡単にセルフチェックができる
- スクワット・かかと上げ・もも上げの3種目を毎日続けることが基本
- 食事では「毎食たんぱく質1品」を意識する
今日できる一歩:食事の際に、肉・魚・卵・豆腐のどれかが入っているか確認してみましょう。なければ卵1個を追加するだけで、今日のたんぱく質を補うことができます。
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参考文献一覧
- サルコペニア診療ガイドライン2017年版(日本サルコペニア・フレイル学会・日本老年医学会)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/
- アジアサルコペニアワーキンググループコンセンサスレポート(AWGS2019)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7093242/
- 高齢者の栄養管理に関するガイドライン(日本老年医学会)https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/