
「膝が痛いのに、夫の体位変換を毎日している」「自分も物忘れが増えてきたのに、妻の薬の管理をしている」。老老介護をしている方からOURに届く相談の多くは、介護する側もすでに限界に近いところから始まります。この記事では、老老介護が行き詰まる前に使える支援・限界に気づくためのチェック・「本人が拒否する」という壁を超えるヒントを、宮崎市の訪問看護師が整理します。
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老老介護とは。「家族だから当然」という思い込みが最も危険
老老介護とは、65歳以上の高齢者が同じく65歳以上の家族を介護している状況を指します。夫婦間・兄弟間・親子間(親が80代、子が60代)など形はさまざまです。
厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」によると、同居している主な介護者の約7割が60歳以上であり、高齢者が高齢者を支える老老介護は今や特別な状況ではなく、在宅介護の標準的な姿になっています。
問題の核心は、介護する側も加齢による身体的・認知的な変化を抱えているという点です。体力は落ちている、持病がある、自分の受診もままならない。そのうえに24時間の介護が重なると、介護者が先に倒れるという「共倒れ」が現実に起きます。
「家族が介護するのは当然」という意識が、助けを求めることへの罪悪感につながりやすい。これが老老介護を最も危険にする思い込みです。
「まだ大丈夫」は続かない。限界が近いときの9つのサイン
老老介護の限界は、ある日突然やってきません。少しずつ積み重なって、ある日「もう動けない」になります。以下のチェックリストで、今の状態を確認してください。
介護者自身に関するサイン
- [ ] 自分の受診を3か月以上後回しにしている
- [ ] 夜中に何度も起こされ、まとまった睡眠が取れていない
- [ ] 食欲が落ちた、体重が減った
- [ ] 「消えてしまいたい」「先に死にたい」と思うことがある
- [ ] 介護されている相手に怒鳴ってしまった、または手が出そうになったことがある
- [ ] 外出がほぼできず、誰とも会っていない日が続いている
介護の状況に関するサイン
- [ ] 転倒・急変があっても、すぐに動ける自信がない
- [ ] 夜間の対応(排泄介助・体位変換)が体力的に続けられなくなっている
- [ ] 「このまま続けると自分も倒れる」という感覚がある
3つ以上あてはまる場合は、今すぐ支援を使い始めるサインです。「もう少し頑張れば」は禁物です。
今すぐ使える支援を整理する。一人で抱えなくていい
老老介護で使える主な支援は以下のとおりです。介護保険の要介護認定を受けていれば、これらのほとんどを1〜3割の自己負担で利用できます。
訪問介護(ホームヘルパー)
食事・入浴・排泄などの身体介護と、掃除・洗濯・買い物などの生活援助を担います。週に何回来てもらうかはケアプランで決めます。「人に来てもらうのは気が引ける」という方でも、特定の担当者との信頼関係ができると安心して任せられるケースが多くあります。
訪問看護
医療的なケア(傷の処置・服薬管理・点滴・カテーテル管理など)に加え、体調管理・家族への健康相談まで対応します。介護者自身が「相談する人がいない」という状況のサポートにも力を入れています。
デイサービス・通所介護
日中、施設に通って入浴・食事・機能訓練を受けるサービスです。介護者にとっては「その時間だけ休める」昼間の時間を作ることができます。「家を離れることに本人が抵抗する」場合は、まず週1回の体験利用から始めることをおすすめします。
ショートステイ(短期入所)
介護施設に数日〜数週間泊まってもらうサービスです。介護者の体調不良・入院・冠婚葬祭など「どうしても介護できない日」のためだけでなく、定期的に使って介護者の疲労を回復させる目的でも活用できます。
地域包括支援センター(宮崎市)
介護保険の申請相談・ケアマネジャーの紹介・介護者への相談対応などを無料で行う窓口です。「何をしたらいいかわからない」という段階でも相談できます。宮崎市内の各地域に設置されており、電話一本で動き始められます。
使える支援のまとめ
| サービス | 担うこと | 特に向いている場面 |
|---|---|---|
| 訪問介護 | 食事・入浴・排泄・家事 | 身体介護の負担が大きいとき |
| 訪問看護 | 医療ケア・体調管理・相談 | 医療処置がある・健康不安があるとき |
| デイサービス | 日中の預かり・入浴・機能訓練 | 介護者が昼間に休みたいとき |
| ショートステイ | 数日〜数週間の施設泊 | 介護者が倒れたとき・まとまった休息が必要なとき |
| 地域包括支援センター | 相談・申請支援・ケアマネ紹介 | 何から始めればいいかわからないとき |
「他人が家に来るのは嫌だ」と言われたとき
訪問介護や訪問看護を勧めると、「他人に来てほしくない」「自分たちでやれる」と本人が拒否するケースは非常に多いです。これは老老介護の現場で最もよく聞く壁です。
拒否が起きる理由は「プライドを守りたい」「家の中を見られたくない」「慣れないことへの不安」など、それぞれです。無理に押しつけると関係が壊れます。
拒否があるときの対応のコツ
- 最初から「介護」として提案しない。「看護師さんが様子を見に来てくれる」「血圧を測りに来てもらうだけ」という入り口から始める
- 家族からではなく「主治医・ケアマネジャーから勧めてもらう」ことで受け入れやすくなる場合が多い
- 1回だけ試す「体験利用」を提案し、強制ではなく選択肢として提示する
- 時間をかけて顔を覚えてもらう。最初の数回は担当者を固定してもらう
OURの訪問看護でも、最初は「血圧を測りに来るだけ」から始まり、徐々に信頼関係を築いて本格的なケアに移行するケースを多く経験しています。
認認介護:介護する側も認知機能が低下しているとき
老老介護の中でも特に見えにくく、危険性が高いのが「認認介護」です。介護されている側だけでなく、介護している側にも認知機能の低下が進んでいるケースです。
厚生労働省の認知症施策によると、65歳以上の認知症有病者数は増加し続けており、老老介護世帯の両方が認知機能に影響を受けているケースは珍しくありません。
認認介護のサイン
- 介護者が「薬をちゃんと飲ませたかどうか」を忘れる
- 介護者が日時・曜日の混乱を起こしている
- 食事を与え忘れる・同じ食事を2回出す
こうした状態は、本人も家族も「うっかり」「疲れのせい」と見逃しやすいです。「なんとなくおかしい」と感じたら、ケアマネジャーや地域包括支援センターへの相談を早めにしてください。定期的に訪問する訪問看護師が「両者の状態を見る目」として機能することも、老老介護の安全管理に重要な役割を担っています。
施設への入所を考えるタイミング。「逃げ」ではない
「施設に入れるのは、介護を捨てることだ」という罪悪感を持つ方は少なくありません。しかし実際には、在宅での限界を超えた状態で無理に続けることが、本人にとっても介護者にとっても不利益になるケースがほとんどです。
施設への入所を検討すべきタイミングの目安:
- 介護者が自分の病気・手術で入院が必要になった
- 介護される方が夜間の徘徊・暴力行為で在宅での対応が難しくなった
- 介護者自身の認知機能低下により、安全な介護が困難になった
- ショートステイ中に「こんなに楽なのか」と介護者が実感した
- 介護者が「死にたい」という気持ちを持つようになった
施設に移ることは「捨てること」ではなく、「適切なケアを受けられる場所に移ること」です。施設に入所した後も家族が面会し、関係を続けることはできます。
介護者自身の健康を守る。あなたが倒れると全部崩れる
老老介護で見落とされがちなのは、介護者自身の健康管理です。
「自分のことは後でいい」という意識が積み重なると、介護者が急病・入院になった瞬間に在宅介護が崩壊します。介護者が倒れると、介護される側も緊急施設入所を余儀なくされるという最悪のシナリオになりかねません。
介護者が今日から取り組むべきこと
- 自分の定期受診を優先する(後回しにしない)
- 週に一度は「自分だけの時間」を意識的に作る(デイサービス利用日を活用)
- 「しんどい」を言える人・場所を持つ(地域包括支援センター・かかりつけ医・訪問看護師)
- 十分な睡眠をとれない夜が続く場合は、夜間対応サービスの導入を検討する
OURの訪問看護では、利用者本人だけでなく介護している家族への相談対応も大切にしています。「自分の気持ちを誰かに聞いてほしい」という介護者のニーズに応えることも、在宅療養を続けるための重要な支援です。
よくある質問
老老介護は介護保険でどこまで支援してもらえますか?
介護保険の要介護認定(要支援1〜要介護5)を受けていれば、訪問介護・訪問看護・デイサービス・ショートステイなどを1〜3割の自己負担で利用できます。利用量はケアマネジャーが作成するケアプランで決まります。まだ認定を受けていない場合は、市区町村の窓口または地域包括支援センターに申請を相談してください。
老老介護でケアマネジャーはどうやって探しますか?
地域包括支援センターに相談すると、居住地域のケアマネジャーを紹介してもらえます。介護保険の申請をすると、居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーが担当に付きます。複数の事業所から選べる場合もあるため、「話しやすい」「連絡が取りやすい」ことを判断基準にしてください。
老老介護で夜間の対応が限界です。何かありますか?
夜間帯の対応に特化した「夜間対応型訪問介護」というサービスがあります。また、24時間オンコール対応の訪問看護(OURも対応)が、夜間の急変・体調変化に電話相談から緊急訪問まで対応します。夜間に安心して眠れる体制を整えることは、介護の継続に直接影響します。
本人が「施設には絶対入らない」と言っています。どうすればいいですか?
在宅を希望する本人の意思は最大限尊重すべきですが、在宅継続のために使える支援を使い尽くすことが前提です。ショートステイを「旅行」「温泉」と表現して試してもらう方法や、訪問サービスから信頼関係を積み上げていく方法が有効なケースがあります。強制的な施設入所は本人の尊厳を傷つける可能性があるため、焦らず支援者を増やしながら選択肢を広げていくことが基本的なアプローチです。
老老介護で虐待になってしまいそうで怖いです
老老介護の状況で介護者が追い詰められ、虐待につながるケースは現実にあります。「虐待になってしまいそう」と感じること自体、限界のサインです。今すぐ地域包括支援センターまたは宮崎市の高齢者相談窓口に連絡してください。相談は匿名でも可能で、相談した内容がそのまま行政処分につながるわけではありません。「助けを求める」ことが虐待を防ぐ最善の行動です。
老老介護でも訪問看護は使えますか?
はい、使えます。要介護認定を受けていれば介護保険で、特定の疾患がある場合は医療保険で訪問看護を利用できます。OURでは「介護している家族自身の体調や気持ちも気になる」という場合の相談も受け付けており、介護者を含めた家族全体のサポートを大切にしています。
まとめ
- 老老介護は特別な状況ではなく、在宅介護の現状。「一人で頑張る」には構造的な限界がある
- 「まだ大丈夫」と思っていても、介護者自身の体・睡眠・受診が後回しになっていたら限界サイン
- 訪問介護・訪問看護・デイサービス・ショートステイは「使い始める決断」をすればすぐに動ける
- 「他人が来るのは嫌」という拒否は、入り口を変えることで時間をかけて越えられる
- 施設入所は「捨てること」ではなく「適切な場所に移ること」。罪悪感を持たなくていい
- 今日できる一歩:地域包括支援センターに電話するか、OURに相談することから始めてください
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
“あなたらしい”在宅生活を、24時間・365日サポートします
☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時
参考文献一覧
- 厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/
- 厚生労働省 介護・高齢者福祉 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/index.html
- 厚生労働省 地域包括ケアシステム https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
- 厚生労働省 認知症施策 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html
- 一般社団法人 日本ケアラー連盟 https://carersjapan.com/