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ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

脳卒中後の痛みとは。中枢性疼痛・肩手症候群の特徴と在宅での疼痛管理

「脳卒中で入院した後から、麻痺した側に焼けるような痛みがある」「肩が痛くて腕が動かせない」。脳卒中後に生じる痛みは、骨折や傷とは異なるメカニズムで起き、通常の鎮痛薬が効きにくいことがあります。この記事では、脳卒中後の代表的な痛みの種類・特徴・在宅での管理方法をOUR訪問看護師が解説します。

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脳卒中後の痛みとは何か。種類と発生メカニズムの違い

脳卒中後の痛みは、発症後数週間〜数か月で起きることが多く、主に以下の3種類に分類されます。それぞれ原因と性質が異なり、対処法も違います。

① 中枢性脳卒中後疼痛(CPSP)

中枢性脳卒中後疼痛とは、脳の感覚処理系(特に視床・脳幹)の損傷によって生じる神経障害性疼痛です。日本ペインクリニック学会の分類では「中枢性神経障害性疼痛」に位置づけられます。

特徴的な痛みの性質

  • ・「焼けるような」「刺されるような」「電気が走るような」表現が多い
  • ・麻痺側(患側)に生じることが多い
  • ・軽い触れ方(衣服・シーツ)でも強い痛みを感じる(アロディニア)
  • ・入浴・気温変化・疲労で悪化しやすい
  • ・通常のNSAIDs(ロキソニン等)が効きにくい

発症率は脳卒中患者の約8〜10%とされており、リハビリや日常生活の大きな妨げになります。

② 肩手症候群(反射性交感神経性ジストロフィー)

肩手症候群は、脳卒中後の麻痺側の肩・手に浮腫(むくみ)・発赤・疼痛が生じる状態です。麻痺によって肩関節が亜脱臼(関節が少しずれた状態)すると神経・血管への影響が生じます。

特徴的な症状

  • ・麻痺側の肩・上腕・手首に強い痛み
  • ・手・指のむくみ・皮膚の赤みや光沢
  • ・手を動かすと痛みが強くなる
  • ・進行すると手指の拘縮(曲がったまま固まる)が起きる

発症が早いほど(発症後1〜3か月以内)治療効果が高いため、早期の対応が重要です。

③ 痙縮による痛み

麻痺した筋肉が過剰に緊張する「痙縮(スパスティシティ)」によって、筋肉・関節が引っ張られる痛みが生じます。特に肘・手首・足首・膝の痙縮が痛みや不快感の原因になります。

在宅での疼痛管理の基本

痛みを「我慢しない」

脳卒中後の痛みは「気のせい」ではありません。神経や筋肉の変化による実際の痛みです。「麻痺があるのに痛みが出るのはおかしい」と思われることがありますが、麻痺と疼痛は別々に生じます。我慢せず主治医・訪問看護師に正確に伝えることが治療の第一歩です。

痛みの記録をつける

  • ・いつ(朝・夜・動作後・気温変化後)
  • ・どこが(肩・手・麻痺側全体など)
  • ・どんな痛みか(焼ける・刺される・鈍い・ズキズキ)
  • ・強さ(0〜10の数字で)

この記録を主治医に持参すると、薬の調整・治療方針の決定に大きく役立ちます。

中枢性疼痛への薬物療法

ロキソニンなどの一般的な鎮痛薬は中枢性疼痛に効きにくい傾向があります。神経障害性疼痛に対しては以下の薬が使われることがあります(いずれも主治医の処方が必要)。

薬の種類代表的な薬名主な用途
抗てんかん薬プレガバリン(リリカ)・ガバペンチン神経障害性疼痛に広く使用
三環系抗うつ薬アミトリプチリン中枢性疼痛・神経障害性疼痛
SNRIなどデュロキセチン神経障害性疼痛

これらの薬はふらつき・眠気などの副作用があるため、転倒予防の観点からも慎重な調整が必要です。

肩手症候群への対応

ポジショニング(姿勢管理):座位・臥位(寝た状態)での麻痺側の腕の位置を適切に保つことが、肩関節の亜脱臼防止・痛みの軽減につながります。OURのPT・OTが適切なポジションを指導します。

装具の使用:アームスリング(腕を吊るサポーター)で肩関節への負荷を減らす方法があります。理学療法士・作業療法士が適切な装具を選定します。

ハンドマッサージ・温熱療法:手のむくみに対しては、末梢から中枢へ(指先から肩方向へ)のマッサージが効果的です。ただし強く押しすぎず、痛みが出ない範囲で行います。

OURが行う脳卒中後疼痛へのサポート

OUR訪問看護では、脳卒中後の痛みに以下の支援を行います。

  • ・痛みの性質・タイミング・増悪要因の丁寧な評価
  • ・主治医への痛みの情報提供と薬の調整依頼
  • ・PTによるポジショニング・関節可動域訓練・温熱療法
  • ・OTによる麻痺側上肢の保護・ADL動作の工夫指導
  • ・痛みによる活動制限・意欲低下への心理的サポート

脳卒中後のリハビリ全般については脳梗塞・脳出血後のリハビリを自宅で続けるには?も合わせてご参照ください。

よくある質問

脳卒中後の痛みはいつ頃から出始めますか?

中枢性疼痛は発症後数週間〜6か月以内に出現することが多く、肩手症候群は発症後1〜3か月に起きやすいです。退院後に「最近痛みが出てきた」と感じた場合は主治医か訪問看護師に早めに伝えてください。

「麻痺があるのになぜ痛むのか」と不思議に思っています

麻痺は「動かせない」状態ですが、痛みを感じる神経経路(感覚神経)は別です。脳の損傷によって感覚処理が異常になり、実際には強い刺激がなくても「痛み」として感じてしまうことが中枢性疼痛の仕組みです。

ロキソニンを飲んでも効かない。どうすればいいですか?

中枢性疼痛・神経障害性疼痛にはNSAIDs(ロキソニン等)が効きにくいことが知られています。主治医に「神経障害性疼痛の可能性がある」と伝え、プレガバリンなど専門的な薬への変更を相談してください。

肩の痛みがひどくてリハビリができない。どうすればいいですか?

痛みが強い状態で無理にリハビリを進めるのは逆効果です。まず痛みのコントロール(薬・ポジショニング・温熱療法)を優先し、痛みが落ち着いてから関節可動域訓練を再開するアプローチが基本です。OURのPT・OTが状態に合わせた計画を立てます。

痙縮による痛みはどう対処しますか?

軽度の痙縮はストレッチ・ポジショニングで管理します。重度の場合はボツリヌス毒素注射(ボトックス注射)が有効で、筋肉の過緊張を一時的に緩めて痛みを軽減します。主治医への相談を検討してください。

まとめ

  • ・脳卒中後の痛みには中枢性疼痛・肩手症候群・痙縮による痛みの3種類があり、それぞれ対処法が異なる
  • ・中枢性疼痛は「焼けるような・電気のような」性質で通常の鎮痛薬が効きにくく専門的な薬が必要
  • ・肩手症候群は早期対応(ポジショニング・装具・温熱療法)が拘縮防止に重要
  • ・痛みは我慢せず「いつ・どこ・どんな痛みか」を記録して主治医に伝えることが治療の出発点
  • ・OURのPT・OT・看護師が連携して脳卒中後の痛みを在宅で総合的にサポートします

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参考文献一覧

  • 日本ペインクリニック学会(神経障害性疼痛・中枢性疼痛の情報)https://www.jspc.gr.jp/
  • 日本脳卒中学会(脳卒中治療ガイドライン)https://www.jsts.gr.jp/

この記事を監修した人

OUR
TEAM

OUR訪問看護ステーション

看護・リハビリチーム

看護師7名・理学療法士1名・作業療法士3名 / 宮崎市

宮崎市を中心に24時間・365日の訪問看護を提供。在宅透析・人工呼吸器・CV管理などの高度医療処置から生活期リハビリまで対応。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、認定作業療法士・中田富久が代表を務め、医師・ケアマネジャーと連携し利用者一人ひとりの在宅生活を支援している。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。