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ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

認知症の人の冬の過ごし方。家族が気をつけるリスクと在宅ケアの工夫

認知症のある方の冬は、家族にとって一年で最も気を使う季節です。寒くて外に出なくなることで体を動かす機会が減り、廃用症候群(寝たきりや筋力低下)が進む。暖房と感染症が重なる室内環境で体調を崩しやすくなる。暗くなるのが早く、夕方から夜にかけて認知症の症状(夕暮れ症候群・夜間の徘徊等)が悪化しやすくなる。

「冬になって急に症状が進んだ気がする」という家族の声は、訪問看護の現場でよく聞かれます。それは単なる病気の進行だけでなく、冬という環境の変化が引き金になっていることが少なくありません。

このコラムでは、認知症のある方が冬に抱えるリスクと、家族が在宅でできる工夫をまとめました。


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冬に認知症の症状が悪化しやすい理由

活動量の低下が認知機能に影響する

冬は寒さから外出が減り、家の中で過ごす時間が増えます。認知症のある方は特に「外に出るのが億劫」「寒いと動きたくない」という傾向があるため、冬の活動量の低下は顕著です。

身体的な活動は脳への血流・刺激を維持するために重要です。運動量の低下は筋肉量の減少だけでなく、認知機能の低下を加速させることが知られています。

日照時間の短縮と体内時計の乱れ

冬は日照時間が短く、朝の光の刺激が少なくなります。光は人間の体内時計をリセットする重要なシグナルであり、光刺激の不足は睡眠・覚醒リズムの乱れにつながります。

認知症のある方は元々体内時計の調整機能が低下しているため、冬の光不足の影響を受けやすく、夜間の興奮・眠れない・朝起きられないという問題が悪化するケースがあります。

脱水・低栄養のリスク

冬は夏と比べて「のどが渇いた」という感覚が出にくく、水分摂取が減りがちです。認知症のある方は元々のどの渇きを感じにくいため、冬の脱水は特に見えにくいリスクです。

脱水が起きると、認知症の症状(混乱・不穏・せん妄様症状)が一時的に悪化します。「急に悪くなった」と見える変化の原因が脱水というケースは決して珍しくありません。


冬の認知症ケアで特に注意すべき4つのリスク

リスク1:転倒と骨折

認知症のある方は転倒リスクが高く、骨折後に急激に状態が悪化することがあります。冬は路面の凍結・室内の暗さ・厚着による動きにくさが重なり、転倒リスクがさらに高まります。

夜間のトイレへの移動は転倒事故が最も多い場面です。センサーライトの設置・手すりの確認・滑りにくいスリッパへの変更を今すぐ行いましょう。

リスク2:感染症によるせん妄

インフルエンザ・肺炎・尿路感染症などの感染症は、認知症のある方に「せん妄」を引き起こすことがあります。せん妄とは、感染・発熱・脱水などの身体的な原因によって急に意識が混乱する状態です。

「急に別人のようになった」「夜中に叫んでいる」「幻覚を訴えている」という変化が感染症のサインである場合があります。

感染症を早期に発見・治療することがせん妄の予防・改善につながります。

リスク3:夕暮れ症候群の悪化

認知症のある方では夕方になると不安・混乱・興奮が増す「夕暮れ症候群(サンダウン症候群)」が知られています。冬は日が暮れるのが早く(17時ごろには暗くなる)、この症状が悪化しやすい時期です。

午後3〜5時ごろからライトを早めにつけ、室内を明るく保つことが夕暮れ症候群の予防に効果的です。

リスク4:暖房による乾燥・こもりきり

エアコン・ファンヒーターによる暖房は室内を乾燥させます。乾燥した環境は粘膜への刺激・感染症リスクの上昇・皮膚の乾燥・かゆみにつながります。

また「暖かい部屋でぼーっとしている」という状態が続くと、昼夜逆転・廃用症候群が進みやすくなります。


冬の認知症ケアの実践的な工夫

毎日の光刺激を確保する

起床後にカーテンを開けて日光を浴びることが、体内時計をリセットするために重要です。できれば朝の30分〜1時間は窓際に座って日光を浴びる習慣をつけましょう。天気が悪い日でも自然光は意味があります。

日光浴が難しい場合は、光療法ランプ(強い人工光を出すランプ)を朝の時間帯に使用することで代替効果が得られることがあります。作業療法士が個人の状態に合わせた光刺激の取り入れ方を提案することも可能です。

室内での活動を工夫する

外出が減る冬でも、室内でできる活動を取り入れることが重要です。

おすすめの室内活動:

  • 折り紙・塗り絵・手芸(手指を動かす作業)
  • 音楽を聴く・一緒に歌う(音楽が好きだった方に特に有効)
  • 昔のアルバムを一緒に見る(回想法)
  • 軽い体操・椅子に座ってできるストレッチ
  • 料理の簡単な作業を一緒に行う(玉ねぎの皮むき・野菜を並べるなど)

「何もしないで座っている」状態を減らし、何かしら手や脳を動かす機会を作ることが認知機能の維持につながります。

水分補給のルーティン化

「のどが渇かなくても時間で飲む」習慣が、冬の脱水予防になります。

食事の前後・お茶の時間・入浴後などのタイミングで、コップ1杯(200ml)を飲む「水分補給のルーティン」を作りましょう。

本人が「飲みたくない」と言う場合は、ゼリー飲料・みそ汁・スープなど水分を含む食品で補うことも有効です。

夕暮れ症候群への対策

夕方の不穏・混乱への対策は「予防」が基本です。

効果的なアプローチ:

  • 午後3時ごろから室内を明るくしておく
  • 夕方に好きな音楽をかける
  • 落ち着ける環境を作る(テレビを消して静かにする)
  • 家族が「そばにいる」という安心感を提供する
  • 夕方に軽い散歩をする(体を疲れさせて夜の睡眠を安定させる)

なぜ不穏になるのかを責めず、その気持ちに寄り添う対応が基本です。


訪問看護・リハビリとの連携

訪問看護師ができること

認知症のある方の在宅ケアで訪問看護師は以下のことを担当します。

  • 身体状態の定期的な観察(感染症の早期発見・基礎疾患の管理)
  • 内服薬の確認・管理支援
  • 本人・家族への認知症ケアの相談・助言
  • 夜間の緊急対応(夜間の不穏・転倒などの際の対応指導)
  • 家族の介護負担の評価とレスパイトの提案

作業療法士(OT)による認知症リハビリ

OUR訪問看護ステーションには認定作業療法士が在籍しており、認知症のある方への在宅リハビリを行っています。

OTが行う認知症リハビリ:

  • 日常生活動作(ADL)の評価と維持訓練
  • 認知症の方の「できること」に焦点を当てた活動提案
  • 住環境の評価と転倒予防対策の提案
  • 家族への介護方法の具体的なアドバイス

「認知症が進んでいる感じがする」「在宅での工夫を相談したい」という場合は、作業療法士への相談をおすすめします。


よくある質問(FAQ)

Q. 認知症の親が冬になると急に悪くなった気がします。病気の進行ですか?

必ずしも病気の進行だけが原因ではありません。冬の活動量の低下・感染症(尿路感染・肺炎など)・脱水・睡眠リズムの乱れが一時的な悪化を引き起こすことがあります。「急に悪くなった」と感じた場合は、まず発熱・脱水・感染のサインがないかを確認し、訪問看護師に相談してください。原因が特定できれば対処できることもあります。

Q. 認知症の父が夜になると「帰る」と言って出ようとします。冬はどうすればよいですか?

夕暮れ症候群・夜間の帰宅願望は認知症のある方によく見られます。「ここがあなたの家です」と言っても通じないことが多く、むしろ安心感を与えることが優先です。「一緒に座りましょう」「お茶でも飲みましょう」と気を紸らすことや、本人が安心する物(思い出の写真・好きな音楽)を使う方法が効果的です。冬の外出は転倒・低体温のリスクがあるため、玄関に補助錠をつけるなどの安全対策も検討してください。

Q. 認知症の方が風邪をひいたかどうか判断するのが難しいです。どこを見ればよいですか?

認知症のある方は自分の症状を正確に伝えられないため、客観的なサインを見ることが重要です。体温計で体温を確認する、皮膚の色・表情・声のトーンの変化、食欲や水分摂取量の変化、尿の色・量・臭いの変化に注意してください。「なんかいつもと違う」という家族の感覚も大切な情報です。少しでも気になる変化があれば訪問看護師に連絡することをおすすめします。

Q. 冬の室内運動として何がよいですか?認知症でもできますか?

椅子に座ってできる体操(チェアエクササイズ)は認知症のある方でも安全に取り組めます。足踏み・手拍子・腕の上げ下げなど、単純で繰り返しのある動作が向いています。リズムに合わせた動作(童謡や歌に合わせて体を動かす)は楽しみながら続けやすいです。作業療法士が個人の状態に合わせた運動プログラムを提案することができます。

Q. 認知症の介護で家族が疲れています。冬は特に負担が増える気がします。

冬は外出機会が減り、家族が24時間自宅で介護者として過ごす時間が増えることで、介護負担は確かに増大します。デイサービス・訪問介護・ショートステイを積極的に活用してレスパイト(休息)をとることが、介護を長く続けるために重要です。「助けを求めることは甘えではない」という認識を持っていただければと思います。訪問看護師にも遠慮なく「疲れている」と伝えてください。支援の体制を一緒に考えます。

Q. 認知症の症状がひどい冬の夜に、一人で対応できません。どうすればよいですか?

夜間の対応が困難な場合は、訪問看護ステーションのオンコールサービスを活用してください。OUR訪問看護ステーションでは24時間・365日オンコール対応しており、夜中でも電話相談・緊急訪問が可能です。「夜中に何度も起こされてもう限界」という状況も連絡の対象です。在宅ケアを継続するためには、夜間の支援体制を整えることが欠かせません。


まとめ

認知症のある方の冬のケアは、環境の変化への意識と予防的な取り組みがカギです。

  • 冬の活動量低下・光不足・脱水・感染症が認知症症状を悪化させる主な原因
  • 毎朝の光刺激・水分補給のルーティン・室内活動の工夫を取り入れる
  • 夕暮れ症候群は予防策(午後からの照明確保・安心感の提供)で軽減できる
  • 転倒・感染症・脱水の早期発見のための日々の観察習慣をつける
  • 家族の介護負担が増える冬こそ、デイ・ショートステイ・訪問看護を積極活用する

今日できる一歩:今日の夕方から、室内のライトを早めにつける習慣を始めてください。それだけで夕暮れ症候群の予防に効果があります。

OUR訪問看護ステーションでは、認知症のある方の在宅ケア全般のご相談に対応しています。認定作業療法士による在宅訪問リハビリも行っています。困ったことがあれば、いつでもご連絡ください。

この記事を監修した人

OUR
TEAM

OUR訪問看護ステーション

看護・リハビリチーム

看護師7名・理学療法士1名・作業療法士3名 / 宮崎市

宮崎市を中心に24時間・365日の訪問看護を提供。在宅透析・人工呼吸器・CV管理などの高度医療処置から生活期リハビリまで対応。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、認定作業療法士・中田富久が代表を務め、医師・ケアマネジャーと連携し利用者一人ひとりの在宅生活を支援している。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。

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