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ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

ケアを拒否する利用者への対応。訪問看護師が実践する拒否の理由別アプローチ

「入浴を絶対に嫌だと言う」「薬を飲んでくれない」「家に入れてもらえない」。訪問看護・介護の現場で、利用者からのケア拒否は珍しいことではありません。

しかし拒否に直面したとき、「どうすれば受け入れてくれるか」だけを考えると、関係が悪化することがあります。拒否には必ず理由があります。その理由を理解し、対応を変えることで、多くのケースで関係が改善します。

この記事では、訪問看護師の視点から、ケア拒否の種類・背景にある理由・拒否の理由別の対応アプローチを解説します。家族の方にも、ケアマネジャーにも読んでいただける内容です。

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ケア拒否の種類:何を拒否しているのかを整理する

ケア拒否を「一括り」にせず、何を拒否しているかを整理することが対応の第一歩です。

主なケア拒否の種類

拒否の種類具体例背景に多い理由
入浴・清拭拒否「入らない」「脱ぎたくない」寒い・恥ずかしい・疲れる
服薬拒否「薬はいらない」「毒を盛られる」副作用・味・認知症の妄想
食事拒否「食べない」「食べられない」食欲低下・嚥下障害・意欲低下
訪問拒否「来なくていい」「帰ってくれ」プライバシー・信頼関係の未構築
医療処置拒否「点滴はいらない」「注射はしない」痛い・怖い・意味がわからない
通院・入院拒否「病院には行かない」過去の嫌な経験・認知症
介護全般の拒否「自分でできる」「迷惑をかけたくない」自尊心・独立心・気兼ね

拒否の背景:5つの主な理由

①身体的な不快感・痛み

「入浴が嫌」という拒否の背景に、「お湯の温度が合わない」「脱ぎ着が寒くて辛い」「腰・関節が痛い」という身体的な理由が隠れていることがあります。

拒否そのものを問題にするより、「何が不快なのか」を聞いてみてください。

よくある例:

  • 「浴槽の出入りが怖い(転倒が怖い)」→ シャワーチェア・手すりの導入で解決することがある
  • 「着替えのときに寒い」→ 脱衣所の暖房・素早い着替えの工夫で改善することがある
  • 「点滴の針が痛い」→ 穿刺部位・針の細さ・体位の工夫で軽減できることがある

②認知症による混乱・妄想

認知症の方の拒否は、「状況の理解」「目的の理解」が難しくなることで起きます。

  • 「見知らぬ人が家に来る」という不安・恐怖
  • 「脱がされる」という侵害感
  • 「薬を盛られる」「殺される」という妄想(誤認・被害妄想)
  • 「今日は入浴しないといけない」という理由が理解できない

対応のポイント: 無理に説明せず、「一緒に話しながら」「馴染みのある言葉・声掛けで」関係性を作ることが先です。担当者が変わったり、声掛けの言葉が変わったりするだけで拒否が改善することがあります。

③自尊心・プライドの問題

「人に世話をかけたくない」「こんな姿を見せたくない」という強い自尊心が、拒否の形として現れることがあります。特に、以前は自立して生活していた方、仕事や地位のあった方に多く見られます。

「させてください」より「教えてください」という姿勢で関わることが効果的なことがあります。

例えば:

  • 「足を洗わせてください」ではなく「足を触っていいですか?チェックしたいので」
  • 「薬を飲んでください」ではなく「先生が出してくれたものなんですが、どれが飲みにくいですか?」

④過去の嫌な体験・トラウマ

病院での嫌な経験・処置の痛み・強制的に行われたケアの記憶が、「また同じことをされる」という警戒心として現れることがあります。

初めて伺う際に「過去に何か嫌な経験がありましたか?」と率直に聞くことが、信頼関係の入口になることがあります。

⑤意欲・気力の低下(抑うつ・廃用)

「何もしたくない」「どうせもう良くならない」という意欲の低下が、拒否として現れることがあります。これは「怠けている」のではなく、抑うつ状態・廃用症候群・希死念慮のサインである可能性があります。

拒否が続く場合は、精神科・心療内科への相談・在宅医への報告を検討してください。


拒否への対応:してはいけないことと効果的なアプローチ

してはいけない対応

  • 無理やり行う:体に触れる行為を強制することは身体的虐待になる可能性があります
  • 怒る・責める:拒否を「わがまま」と捉えて感情的に対応すると、信頼関係が壊れます
  • 説得を繰り返す:「なぜできないのか」と同じ言い方で繰り返しても効果はなく、消耗するだけです
  • 無断でやる:「少しだけ」と黙って行為を始めることは、かえって強い拒否を招きます
  • 諦めて放置する:拒否を「本人の意思」として全面的に受け入れると、必要なケアが届かなくなります

効果的なアプローチの3原則

①今日はやらない選択を持つ

無理に行う必要がない場合は、「今日は無理にしなくていいですよ」と引くことで、次回のケアへの抵抗が減ることがあります。「完了」より「関係性の維持」を優先する場面もあります。

②本人の言葉を聞く

「なぜ嫌なのか」を直接聞く・観察する時間を作ることが解決の入口です。聞くことで初めて「実は針が怖かった」「冷たいのが苦手だった」という理由が見えます。

③タイミングと担当者を変える

「今日の午後はどうですか」「次回は別のスタッフが伺います」という変化で、拒否がなくなることがあります。同じ人・同じ時間帯・同じ方法にこだわらないことが大切です。


服薬拒否への具体的な対応

服薬拒否は医療管理上特に問題になりやすい拒否です。

服薬拒否の理由と対応

理由対応
「苦い・大きくて飲みにくい」剤形変更(粉砕・液剤・貼付剤)を主治医に相談
「副作用が怖い・副作用があった」副作用の記録を主治医に報告し、薬の見直しを依頼
「この薬は必要ない」薬の目的をわかりやすく説明(「血圧が下がりすぎないように」等)
「毒を盛られる」(認知症)家族が一緒に飲む・食べ物に混ぜる方法を主治医に相談
「飲んだかどうか忘れる」一包化・お薬カレンダー・訪問時に確認できる仕組みを整える

服薬拒否が続く場合、「なぜ飲まないか」を主治医・薬剤師に報告することが重要です。薬の種類・量・剤形を変えることで解決するケースが多くあります。


訪問看護師として拒否に向き合うこと

ケア拒否に直面したとき、訪問看護師は「今日は何もできなかった」と落ち込むことがあります。しかし「拒否された」というのは、「本人に意思があること」「関係がまだ構築されていないこと」の情報であり、決して失敗ではありません。

訪問看護師が行うこと

  • 拒否の理由・タイミング・状況を正確に記録する
  • ケアマネジャー・在宅医に情報共有し、チームで対応方針を検討する
  • 家族に対して「無理やりやらせないこと」の重要性を伝える
  • 認知症の拒否については精神科訪問看護の活用を提案する
  • 意欲低下・抑うつが疑われる場合は在宅医に報告する

OURでは、精神科病院経験のある看護師が在籍しており、精神疾患・認知症による拒否への対応に強みを持っています。


よくある質問

認知症の母が入浴を全力で拒否します。無理やりやっていいですか?

無理に行うことは身体的虐待に該当する可能性があり、お勧めできません。清潔が保てないことは感染・皮膚トラブルのリスクになりますが、毎日の入浴でなく清拭・手浴・足浴からの段階的なアプローチが有効です。担当者・声掛けの言葉・時間帯を変えることで受け入れてもらえることがあります。

薬を飲まないことが続いています。在宅で管理できますか?

飲み忘れ・拒否の原因によって対応が変わります。一包化(薬の分包)・お薬カレンダー・訪問時に飲むのを確認する仕組みが効果的なことが多いです。どうしても飲めない薬がある場合は、主治医に貼付剤・液剤への変更を相談してください。

「家に入れてくれない」と言われました。どうすればいいですか?

最初から完全に拒否される場合は、ケアマネジャー・家族・主治医から事前に関係を作ってもらうことが有効です。「看護師ではなく友人として訪問する」ような関係構築期間を設けることもあります。緊急性がある場合は在宅医との連携で対応します。

「病院に行かない」と言い続けています。説得するにはどうすればいいですか?

「病院に行かせる」という目標より「自宅で安全に過ごせる医療体制を整える」という方向にシフトすることが有効な場合があります。訪問診療(在宅医)を導入することで、病院に行かなくても診察・処方・検査が受けられる環境を作ることができます。

宮崎市でケア拒否への対応が得意な訪問看護に対応していますか?

はい。OURは精神科病院経験看護師が在籍し、全員が厚労省精神保健研修を修了しています。認知症・精神疾患による拒否への対応、家族へのアドバイス、ケアチームでの連携に強みを持っています。宮崎市全域・国富町・高岡町・綾町に対応しています。


まとめ

  • ケア拒否には身体的不快感・認知症による混乱・自尊心・過去のトラウマ・意欲低下の5つの主な理由がある
  • 無理に行う・感情的に対応する・同じ方法を繰り返す、の3つは関係を悪化させる
  • 「今日はやらない選択」「本人の言葉を聞く」「タイミング・担当者を変える」が効果的な3原則
  • 服薬拒否は剤形変更・薬の見直しで解決するケースが多い
  • OURは精神科訪問看護・認知症ケアに強みを持ち、拒否のある利用者への対応をチームで支援している

参考文献一覧

  • 厚生労働省「介護保険制度の概要https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
  • 厚生労働省「認知症施策推進大綱」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000076236_00002.html

この記事を監修した人

OUR
TEAM

OUR訪問看護ステーション

看護・リハビリチーム

看護師7名・理学療法士1名・作業療法士3名 / 宮崎市

宮崎市を中心に24時間・365日の訪問看護を提供。在宅透析・人工呼吸器・CV管理などの高度医療処置から生活期リハビリまで対応。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、認定作業療法士・中田富久が代表を務め、医師・ケアマネジャーと連携し利用者一人ひとりの在宅生活を支援している。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。

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