
こんな経験はありませんか?
午前中に3件の訪問をこなし、バインダーを何度も出し入れしながら書類を確認する。利用者の家族がお茶を出してくれたので、断りにくくてそのままいただく。インターフォンを押し、手すりにつかまりながら玄関へ入る。席に着いたらすぐにテーブルの上にバッグを置き、ペンとモニタリング票を広げる。
このあいだ、手を洗ったのはいつだったでしょう?
ケアマネジャーは1日に複数の利用者宅を訪問し、事業所・医療機関・病院と連絡を取り合いながら動く仕事です。感染を持ち込む・持ち出すリスクは、医療機関のスタッフよりも高い場合があると言っても過言ではありません。
「手洗いなんて基本でしょう」と思われるかもしれません。ただ、正しい手洗いと多くの人がやっている手洗いには、意外なほど大きな差があります。そしてその差が、在宅ケアの現場では感染拡大の入り口になります。
このコラムでは、ケアマネジャーが自分自身を守り、担当する利用者・家族を守るための手指衛生の基本を、現場のリアルな場面と合わせてまとめました。来月(2026年11月)にケアマネ向け感染症対策講演の事前読み物として、ぜひ活用していただければ幸いです。
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ケアマネジャーの1日に潜む感染リスクを「見える化」する
「つなぎ役」ゆえに感染リスクが高い
訪問看護師やヘルパーは、1人の利用者のもとへ繰り返し行く仕事です。対してケアマネジャーは、1日のうちに複数の利用者宅・複数の事業所・複数の医療機関と接触する「ネットワークの中継点」になります。
これは感染症の観点からいうと、非常にリスクの高い動きです。
感染症の専門家が「スーパースプレッダー(一人から多数への感染を媒介する人)」と呼ぶ状況は、何も体調が悪い人だけがなるわけではありません。自覚症状のない保菌者が複数の場所を動き回ることで、ウイルスや細菌は広い範囲に運ばれます。
ケアマネジャーの動き方は、まさにこの構造に近いのです。
「見えない接触」を数えてみると
1回の訪問で、どのくらいの「見えない接触」が発生しているか意識したことはありますか?

- 建物の入り口ドアノブ(外・内):2回
- インターフォンのボタン:1回
- 廊下や玄関の手すり:2〜3回
- 利用者または家族との握手・書類の受け渡し:2〜3回
- テーブル・椅子の背もたれ・クッション:3〜5回
- バインダーの表面(テーブルに置き、また持ち上げる):4〜6回
- ペンを貸す・受け取る:2回
これを1日3件の訪問でざっと計算すると、合計50〜80回前後の「見えない接触」があります。
細菌・ウイルスの生存時間はウイルスの種類によって異なりますが、インフルエンザウイルスは金属・プラスチック面で8〜24時間、ノロウイルスは同条件で最長12〜20時間生存します。つまり、朝に訪問した利用者宅で付いたウイルスが、正午を過ぎた訪問先でも手から感染させてしまう可能性があるのです。
「利用者は感染に弱い」という事実を忘れない
在宅ケアを必要としている利用者の多くは、高齢・疾患・免疫低下のいずれかを抱えています。
健康な成人が感染しても「少し熱が出た」で終わるウイルスが、免疫機能の落ちた高齢者には肺炎を引き起こすことがあります。実際、在宅で療養する高齢者の肺炎入院の原因は「誤嚥性肺炎」と並んで「接触・飛沫感染による呼吸器感染症」が多く、その感染経路に訪問スタッフが関与しているケースも報告されています。
自分は元気だから大丈夫、ではなく、「自分が無症状のままウイルスを運んでいるかもしれない」という意識が、在宅ケアのプロとして必要な視点です。
バインダー・書類も感染源になる

「物を介した感染」はよく見落とされます。
モニタリングシート、担当者会議の資料、介護保険証、ケアプランの控え。これらを複数の利用者宅のテーブルに置き、また持ち帰るという行為は、各家庭の環境を間接的につないでいることになります。
OUR訪問看護ステーションでは、訪問時に使う書類用のバインダーの外側を、定期的にアルコールで拭くことを実践しています。「書類を出す前にアルコール消毒」を一つのルーティンにするだけで、書類経由の感染リスクはかなり低減できます。
正しい手洗いの手順と「見落としがちな3か所」の科学的な理由
「サッと洗い」が危険な理由
多くの人が日常的にやっている手洗いは、流水に手をさらして5〜10秒でさっと流す「サッと洗い」です。
これがどれだけ不十分かというと、手洗いによる細菌除去の効果を調べた研究では、15秒以下の手洗いでは手に付着した細菌の除去率が50〜60%程度にとどまることが示されています。30秒以上の石鹸手洗いでは90%以上が除去されます(米国疾病予防管理センター:CDCのガイダンスより)。
50%残るということは、2つの家庭でそれぞれ接触した場合、それぞれの家庭の菌が混ざったまま次の場所へ持ち込まれることを意味します。
6ステップ手洗いの手順と「なぜそうするか」
厚生労働省が推奨する手洗い手順は全6ステップです。手順を「なぜそうするか」とセットで覚えると忘れにくくなります。

Step 1:手のひら同士をこすり合わせる(5秒) まず泡立てることが目的です。石鹸が手全体に広がる前に流してしまうと、摩擦力が足りません。「ハッピーバースデーを心の中で1回歌う長さ」が目安です。
Step 2:手の甲を洗う(左右各5秒) 右の手のひらで左の手の甲を、指の間まで丁寧に。バインダーを持つとき・ドアを押すとき・手すりをつかむとき、接触しているのは手の甲側です。
Step 3:指の間を洗う(5秒) 指を組んだ状態でこすります。指の根元の水かき部分は泡が届きにくく、見落とされがちな箇所です。
Step 4:指先・爪の間を洗う(左右各5秒) 手のひらの上で指先を曲げ、爪を立てるようにして擦ります。ここは最重要ポイントです。爪の内側は細菌の「巣」になりやすく、流水だけでは取れません。爪を短く保つことが、感染予防の基本中の基本です。
Step 5:親指をねじり洗いする(左右各5秒) 親指は他の指と独立した関節を持つため、「指の間を洗う」ステップで一緒に洗われません。片手で親指を包んでくるくるとねじるように洗います。実は職業性手洗い調査で「最も洗い残しが多い部位」として繰り返し報告されているのが親指です。
Step 6:手首を洗う(左右各5秒) 袖をまくって、手首まで洗います。訪問時のジャケットや白衣は手首を覆っていることが多く、無意識に「洗わなくていいエリア」になりがちです。
なぜ親指が特別なのか
「Step 5の親指ねじり洗い」は、多くの人にとって「そんなことやったことない」という反応があります。
理由は単純で、親指は日常の「こすり合わせ」動作に参加しないからです。
ドアノブを回す、ペンのキャップを取る、スマートフォンのホームボタンを押す。これらの動作で接触するのは親指の腹と付け根です。そこを意識して洗う習慣がない限り、汚れは残り続けます。
「今日から手を洗うとき、まず親指を意識的に洗う」。これだけでも手洗いの質は大きく変わります。
在宅現場で手洗いの「タイミング」を見直す
ルール化しないと守られない
手洗いは「汚れたら洗う」という感覚で行っていると、在宅現場では実施頻度が大幅に落ちます。なぜなら在宅現場では「見えない汚れ」が圧倒的に多いからです。
利用者宅で菌が付いても、手は見た目ではきれいです。だから「さっき洗ったし」「まあいいか」になる。感染対策で失敗するときのパターンのほぼすべてが、この「見た目が汚れていないからOKという感覚」から始まります。
解決策は「感覚」ではなく「ルール」にすることです。
ケアマネジャーの「手洗い7つのタイミング」
タイミング1:利用者宅に入る直前(玄関外) 車から降り、建物のドアに触れる前にアルコール消毒をする。これが最も大切なタイミングです。「玄関に入る前にやる」という場所のルールにしておくと、忘れにくくなります。
タイミング2:利用者宅から出た直後(玄関外) この訪問で付いたものを「外に持ち出さない」ための消毒です。出たらすぐ、次の場所へ向かう前に必ず行います。
タイミング3:書類の受け渡し後 書類を利用者や家族から受け取ったとき、または家族の使ったペンを触ったとき。バッグへしまう前にワンプッシュする習慣をつけましょう。
タイミング4:利用者の体に触れた後 パルスオキシメーターの装着補助・車椅子の調整手伝い・体温測定のサポートなど、利用者の体や服に触れた場合は必ず消毒します。
タイミング5:お茶・食べ物を受け取る前(または辞退するとき) 利用者の家でお茶を出してもらうことは多いと思います。感染対策の観点からは辞退することが理想ですが、断りにくい場面も多いでしょう。受け取る場合は直前にアルコール消毒を一度行い、飲む前に別のタイミングでも消毒するのがベターです。
タイミング6:事業所に戻ったとき 外出から戻ったら、流水での石鹸手洗いを行います。アルコール消毒で一日を過ごしていても、流水手洗いで「リセット」する時間を設けることが重要です。
タイミング7:自身がくしゃみ・咳・鼻をかんだ後 自分からウイルスが飛散したかもしれない場合も、手指衛生が必要です。マスクをしていても手に付くことがあります。
「手洗いできない状況」への現実的な対処
在宅訪問中、石鹸と流水のある場所で手を洗える機会は限られています。
現実的なアプローチとして、OUR訪問看護ステーションのスタッフは「訪問バッグの外ポケット」にアルコール消毒液を必ず入れています。バッグを開けなくてもすぐ取り出せる場所に置くことで、「面倒くさい」という心理的ハードルを下げることができます。
60mlのポケットサイズを1本、バッグの外ポケットに入れておく。これが在宅での手指衛生を習慣化する最初のステップです。
アルコール消毒と石鹸手洗い、使い分けの基準
ノロウイルスにはアルコールが効かない
感染症対策の実務でよくある誤解が「アルコール消毒をしていれば安心」というものです。
アルコール消毒液は、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスを含む多くの「エンベロープウイルス」に効果的です。エンベロープとは、ウイルスを包む脂質の膜のことで、アルコールはこの膜を溶かすことでウイルスを不活化します。
しかし、エンベロープを持たない「ノンエンベロープウイルス」には、アルコールが脂質の膜を溶かすという機序が働きません。ノロウイルスはこのノンエンベロープウイルスです。
秋から冬にかけて、在宅の高齢者のあいだでノロウイルスによる感染性胃腸炎が流行します。「嘔吐があった」「急に下痢が始まった」という状況では、アルコール消毒だけでは手指の消毒が不十分です。石鹸と流水で丁寧に洗い流すことが唯一の対策です。
訪問前に「この利用者宅でノロが疑われる」という情報があれば、最寄りのコンビニや公共トイレで石鹸手洗いを済ませてから訪問する、という判断も必要です。
状況別・使い分けクイックガイド

| 状況 | 推奨する手指衛生 |
| 通常の訪問前後 | アルコール消毒 |
| 利用者が嘔吐・下痢中(ノロ疑い) | 石鹸手洗い必須(アルコールは補助) |
| 手が目に見えて汚れている | 石鹸手洗い必須 |
| 血液・排泄物が付いた | 石鹸手洗い必須 |
| 書類の受け渡し後 | アルコール消毒 |
| トイレ使用後 | 石鹸手洗い(アルコール補強) |
| 食事前 | 石鹸手洗い(アルコール補強) |
| 外出から事業所に戻ったとき | 石鹸手洗い(一日の区切り) |
アルコール消毒液の正しい使い方
アルコール消毒液を使うとき、「ちょっとだけつけてサッと拭く」では効果が半減します。
適切な量は手全体がしっとり濡れる量(2〜3ml程度)で、乾くまで20〜30秒間こすり合わせることが必要です。ティッシュで拭き取ったり、すぐに手を振って乾かしたりすると効果が出ません。揮発するまでこすり続けることが大切です。
手荒れが気になる方は、「保湿成分(グリセリン)入り」のアルコール消毒液を選ぶことをおすすめします。手荒れが起きると皮膚のバリア機能が低下し、かえって感染リスクが高まることがあります。消毒と保湿を同時に行えるタイプを選ぶのが、継続するためのコツです。
「断りにくい」「言いにくい」を乗り越える実践コミュニケーション術
お茶を断る言い方
訪問先でお茶を出してもらうことを断るのは、なかなか難しい場面です。「感染対策のため」とストレートに言うのも、なんとなく相手を傷つける気がして言いにくい。
こういう場合、以下のような言い方が実践しやすいです。
「ありがとうございます。今日はこの後も続けて訪問があるので、お気遣いだけいただきます。次来たときに、ゆっくりいただきますね」
相手への感謝は十分に伝えながら、自分の事情(忙しい)を理由にできるので角が立ちません。これを自分の定型フレーズとして持っておくだけで、毎回迷う必要がなくなります。
利用者に手洗いを促す言い方
「手を洗いましょう」とお伝えするのが難しいと感じるケアマネさんは多いです。特に高齢者に対して「手洗いを指導する」という立場をとりにくいと感じることがあります。
おすすめは「一緒にやりましょう」方式です。
「私もさっきからずっと書類を触っていたので手を洗いたいのですが、洗面台をお借りしてもいいですか?よろしければ一緒に」という声かけは、指導ではなく「一緒にやる」という形になります。自分が手を洗うことで、自然と相手も手洗いに誘導できます。
サービス担当者会議で感染対策ルールを決める
サービス担当者会議は、関わる多職種が一堂に集まる場です。「今期の感染対策の共通ルール」を決めるテーマとして、議題に入れることができます。
例えば「訪問時はアルコール消毒持参を全事業者の標準ルールにする」「ノロ・インフルが疑われたら24時間以内に全担当者へ連絡する」などの申し合わせをしておくと、感染拡大が起きたときの対応が格段に早くなります。
「先生(医師)・看護師・私(ケアマネ)・ヘルパーで情報が分断されていた」という状況が、感染が広がってから気づくというパターンにつながります。担当者会議でこの申し合わせをしておくことは、現場をつなぐケアマネだからこそできる感染対策です。
利用者・家族への手洗い指導のコツと壁を超える方法
「わかっているけどやっていない」を変えるには
利用者・家族が手洗いの大切さを「知らない」ことはほとんどありません。問題は「知っているけどやっていない」状態です。
これを変えるのは説明ではなく、環境整備です。手洗いがしやすい環境に整えることが、ケアマネジャーの視点でできる一番の貢献です。
ベッドサイドにアルコールを置く:食前やトイレ後にわざわざ洗面台まで行かなくていい状態をつくります。ベッドサイドの手の届く場所に据え置き型の消毒液を置くだけで、実施率は大きく変わります。
洗面台にハンドソープを置く:「石鹸がない」から手を洗わないケースは想像以上に多いです。固形石鹸よりポンプ式のほうが使いやすく、衛生的です。
ペーパータオルを置く:共用タオルを繰り返し使うことは、手洗いの意味を半減させます。できれば使い捨てのペーパータオルに変えることをすすめましょう。予算的に難しければ、一人一枚のフェイスタオルを毎日交換する習慣を勧めます。
認知症の方への対応:理屈より習慣
認知症の方に「手を洗ってください」と声をかけても、行動につながりにくいことが多いです。理由は「なぜ洗わないといけないのか」という記憶と結びつきにくいからです。
効果的なのは「ルーティン化」です。
「ごはんの前にはいつも手を洗う」という流れをつくること。毎回同じ声かけを同じタイミングで行うことで、記憶ではなく「習慣の流れ」として行動につながりやすくなります。ヘルパーや家族と情報共有し、「ごはん前の手洗い」を全員で統一して声かけするようにしておくと、効果が出やすくなります。
介護している家族への伝え方
在宅介護をしている家族は、排泄ケア・体位変換・食事介助など、利用者の体に頻繁に触れています。家族への感染対策の伝え方は「怖がらせない」ことが重要です。
「これをやらないと危ない」という伝え方は、すでに精一杯がんばっている家族にとって追い打ちになります。
「一つだけ、ケアの前後に消毒するだけでだいぶ違います。試してみてもらえますか?」というように、一歩だけ提案する伝え方が実践につながりやすいです。
訪問看護師との連携で感染情報を共有する仕組みをつくる
訪問看護師は感染の「早期警報装置」
訪問看護師は利用者の体に毎回触れながら状態を観察します。体温・皮膚の状態・下痢・嘔吐の有無など、感染症の初期サインを最も早く察知できる立場にいます。
しかし、その情報がケアマネジャーに届くタイムラグがあると、他の利用者への対応が遅れることになります。
「熱が出た」「下痢が続いている」という情報をケアマネが把握した時点で、ヘルパーへの連絡・他の訪問スタッフへの注意喚起・医師への報告連絡などを動かすことができます。ケアマネが情報の「ハブ」として機能するためには、訪問看護師からの情報が迅速に届く関係性をつくっておくことが大切です。
OURが実践している感染対策の情報共有
OUR訪問看護ステーションでは、担当利用者に感染症の疑いが生じた場合、24時間以内にケアマネジャーへ連絡することを標準の対応として実施しています。
感染症が疑われる際の連絡内容は「症状の概要(発熱・嘔吐・下痢など)」「初発の日時」「対応状況(医師に報告済みかどうか)」「他への感染リスクの見立て」です。
この情報があれば、ケアマネジャーは各関係者への連絡を素早く始めることができます。逆にケアマネジャーの側からも「最近体調変化はありましたか?」という確認を定期的にしていただけると、看護師側では把握しにくい情報(例えば利用者の家族が下痢していて利用者にも移ったらしい、など)がケアマネ経由で入ってくることがあります。
情報が双方向に流れる連携体制が、在宅での感染対策の基盤になります。
ケアマネが訪問看護師に相談できること
感染対策について迷ったとき、訪問看護師はケアマネジャーにとって心強い相談相手です。以下のような相談にはいつでも対応しています。
- 「この利用者宅でノロウイルスが疑われる。訪問時に気をつけることは?」
- 「家族が手洗いをしてくれない。どう声をかけたらよいか」
- 「インフルエンザが流行してきた。この利用者には特にどんな対策が必要か」
- 「施設から退院してきた利用者の感染症対策の注意点は?」
感染対策のことで悩んだときは、遠慮なくOUR訪問看護ステーションへご連絡ください。
よくある質問(FAQ)
Q. アルコール消毒液はどんな濃度のものを選べばよいですか?
エタノール濃度70〜83%のものを選んでください。ドラッグストアや薬局で「手指消毒用」と書かれているものはほぼこの範囲に入っています。濃度が低いもの(60%未満)は効果が落ち、高すぎるもの(90%以上)は皮膚刺激が強くなります。用途に「手指消毒用」と明記されたものを選べば、濃度の細かい確認は不要です。また、グリセリン等の保湿成分入りのものを選ぶと手荒れを防ぎやすくなります。
Q. 手洗いをすると手荒れがひどくなります。どうしたらよいですか?
手荒れは皮膚のバリア機能が落ちている状態で、むしろ感染リスクを高めます。まず手洗い後は毎回保湿クリームを塗る習慣をつけてください。できれば石鹸の使用頻度を減らし、通常の訪問前後はアルコール消毒に切り替える判断も有効です。アルコール消毒は石鹸手洗いより肌への負担が少ない場合があります。ただし「手荒れがひどいから消毒しない」は本末転倒ですので、低刺激タイプや保湿入りの製品を試してみてください。
Q. 使い捨て手袋を使えば手洗いは不要ですか?
手袋は手洗いの代替にはなりません。手袋をつけていても、極小の穴・手袋の外側の汚染・手袋を外すときの接触汚染などのリスクがあります。排泄ケアの補助や明らかな汚染物への接触がある場面では使い捨て手袋を使うことが推奨されますが、手袋を外した後は必ず手指衛生を行ってください。手袋の「過信」が逆に感染対策を甘くする原因になることがあります。
Q. 流水が使えない環境でノロウイルスが疑われる場合はどうすればよいですか?
アルコール消毒ではノロウイルスへの効果が不十分です。石鹸と流水での手洗いを最優先にしてください。訪問前に「この利用者宅でノロが疑われる」とわかっている場合は、近くのコンビニのトイレや事業所で石鹸手洗いをしてから行くことを検討してください。また、訪問後も同様に石鹸手洗いをする場所を確保してから移動することが望ましいです。やむなくアルコール消毒のみの場合でも、複数回繰り返すことである程度のウイルス量は減らせます。
Q. インフルエンザシーズンに特に強化すべき対策は何ですか?
インフルエンザウイルスはアルコール消毒が有効です。流行期(10月〜3月)は、訪問前後のアルコール消毒の徹底に加え、マスクの着用を組み合わせると効果的です。自身のインフルエンザワクチン接種は、利用者を守るために最も重要な一手です。「打たなくてもいいか」ではなく、「高齢者を訪問するプロとして打つ義務がある」という意識を持つことをすすめます。なお、ワクチンを接種してもインフルエンザに感染することはありますが、重症化・周囲への感染拡大リスクを大幅に下げる効果があります。
Q. サービス担当者会議で感染対策を議題にするにはどうすればよいですか?
特別な準備は不要です。会議の冒頭または末尾に「感染対策の申し合わせを確認させてください」と一言添えるだけで始められます。内容は「訪問時はアルコール消毒を行う」「感染症の症状が出たら24時間以内に関係者全員へ連絡する」「流行期はマスク着用を標準とする」程度でも十分です。文書化して全事業者へ配布しておくと、後から「知らなかった」という事態を防げます。OUR訪問看護ステーションでは、こうした申し合わせ文書のひな型をご提供することもできますので、必要な場合はご相談ください。
まとめ
手洗いは「常識」として片付けてしまうには、あまりにも実践の差が大きいスキルです。
- ケアマネジャーの動き方は感染を広範囲に媒介するリスクを持つ。「つなぎ役」だからこそ意識が必要
- 6ステップ30秒以上の手洗いで効果が大きく変わる。特に爪の間・親指・手首を意識する
- アルコール消毒が効かないウイルス(ノロウイルス)がいる。嘔吐・下痢の場面では石鹸手洗い一択
- 「玄関出入り時にアルコール消毒」「バッグの外ポケットに携帯消毒液」の習慣化が実践のカギ
- 利用者・家族への指導は「説明する」より「環境を整える」。ベッドサイドに消毒液、洗面台にソープを
- 訪問看護師との感染情報の双方向共有が、在宅での感染対策のネットワークを強くする
OUR訪問看護ステーションでは、ケアマネジャーの皆さんと連携しながら、利用者一人ひとりが安全・安心に在宅生活を続けられる環境づくりを支援しています。
来月(2026年11月)には、ケアマネジャーを対象とした感染症対策講演を開催予定です。今回のコラムで触れた手洗いの実践に加え、ノロウイルス・インフルエンザへの在宅現場での対応、感染発生時の連絡体制の整え方など、現場ですぐに使える内容でお届けします。
今日できる一歩:訪問バッグの外ポケットにアルコール消毒液を1本入れてください。それだけで「玄関を出入りするたびに消毒する」習慣が始まります。
ご相談・ご連絡はOUR訪問看護ステーションまで、お気軽にどうぞ。
この記事を監修した人
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
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