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ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

冬の入浴介助〜安全で快適な入浴支援のポイント

執筆日: 2025年12月29日
執筆: OUR訪問看護ステーション
最終更新: 2025年12月29日


はじめに

冬場の入浴は、身体を温め一日の疲れを癒す大切な時間です。しかし、高齢者にとっては温度差や転倒などのリスクが高まる時期でもあります。

厚生労働省人口動態統計(令和5年)では、高齢者の浴槽内での不慮の溺死及び溺水の死亡者数は6,541人で、交通事故死亡者数2,116人のおよそ3倍にのぼります。これらの事故の多くは、適切な準備と注意で予防できる可能性があると考えられています。

本記事では、冬場の入浴介助における安全対策と、快適な入浴を支援するためのポイントをご紹介します。

【重要な注意事項】 本記事は一般的な情報提供を目的としています。ご利用者様の健康状態や身体機能には個人差があります。入浴介助の実施にあたっては、必ず医師や看護師、ケアマネジャーなどの医療・介護専門職にご相談ください。


冬場の入浴で注意すべきリスク

1. 急激な温度変化による血圧変動

温度変化が身体に与える影響

入浴時の事故が多くなる原因の一つは、急な温度差による血圧の急激な変化です。暖房のきいた暖かい部屋から、冷え込んだ脱衣所に移動して衣服を脱ぎ、浴室も寒いと、血管が縮まり血圧が一気に上昇します。その後、浴槽に入り体が温まってくると血管が広がり、急上昇した血圧が下がります。この急激な血圧の変化により、一時的に脳内に血液が回らない貧血の状態になり一過性の意識障害を起こすことがあります。

具体的な症状

  • めまい、立ちくらみ
  • 動悸、息切れ
  • 意識障害
  • 心筋梗塞、脳卒中

発生しやすい状況

  • 暖房の効いた部屋から寒い脱衣所・浴室へ移動したとき
  • 冷えた身体が熱い湯船に浸かったとき
  • 浴槽から急に立ち上がったとき

2. 転倒・転落

浴室は床が濡れて滑りやすく、また浴槽をまたぐ動作でバランスを崩しやすい環境です。高齢者の入浴中の事故防止のために、浴槽から急に立ち上がらないことなどが重要です。

転倒リスクが高まる要因

  • 床や浴槽の縁が濡れて滑りやすい
  • 浴室内の温度差によるふらつき
  • 長時間の入浴による立ちくらみ
  • 石鹸やシャンプーの泡が床に残っている

3. 溺水

入浴中に意識を失い、浴槽内で溺れる事故も報告されています。特に一人での入浴時は発見が遅れるリスクがあります。

溺水リスクが高まる状況

  • 急激な血圧変動による意識障害
  • 長時間入浴による脱水・のぼせ
  • 持病(心疾患、脳血管疾患等)の急変
  • 浴槽内での姿勢保持困難

入浴前の準備と安全確認

1. 体調チェック

入浴前には必ず以下の項目を確認します。

確認すべき項目

  • ✅ バイタルサイン(血圧、脈拍、体温)
  • ✅ 体調の訴え(頭痛、めまい、倦怠感など)
  • ✅ 食事のタイミング(食後すぐは避ける)
  • ✅ 水分摂取状況
  • ✅ 排泄の有無

入浴を控えるべき状態

  • 発熱がある(37.5度以上が目安)
  • 血圧が普段と大きく異なる(医師の指示に従う)
  • 強い倦怠感やめまいがある
  • 食後30分以内(消化のため血液が胃腸に集中している)
  • 飲酒後(アルコールによる血圧低下のリスク)

※上記は一般的な目安です。個別の判断は必ず医療専門職にご相談ください。

2. 環境の準備

温度管理

急激な血圧の変動を防ぐため、お風呂を沸かすときに暖房器具などを使い脱衣所や浴室内を暖めておくことが推奨されています。

  • 脱衣所と浴室を事前に暖める(20度以上が目安)
  • 浴室暖房機やヒーターを使用
  • 窓を閉めて冷気の侵入を防ぐ
  • シャワーで高い位置から湯を張ると蒸気で浴室が暖まる

湯温の設定

湯温は41度以下を目安にすることが推奨されています。

  • 41度以下を目安にする
  • 必ず手や温度計で湯温を確認
  • 熱すぎる湯は血圧の急変動を引き起こす

安全設備の確認

  • 滑り止めマット(浴槽内・床)
  • 手すり(出入口、浴槽付近)
  • シャワーチェア
  • 浴槽台(浴槽が深い場合)
  • 緊急コールボタン(設置されている場合)

3. 必要な物品の準備

入浴中の移動を最小限にするため、事前に必要なものをすべて準備します。

入浴時に必要なもの

  • バスタオル、フェイスタオル
  • 着替え
  • 洗面用具(ボディソープ、シャンプー等)
  • 水分補給用の飲み物
  • 緊急時の連絡手段(携帯電話等)
  • 血圧計(入浴前後の測定用)

安全な入浴の手順

1. かけ湯で身体を慣らす

浴槽に入る前に心臓から遠い手足の先にかけ湯をし、次に足から腰、肩にかけて徐々に身体をお湯に慣らすことが推奨されています。

かけ湯の手順

  1. 手や足など心臓から遠い部分から始める
  2. 足 → 腰 → 肩の順で徐々に上へ
  3. 身体が温まるのを確認しながらゆっくりと
  4. 湯温に身体が慣れてから浴槽へ

2. 浴槽への出入り

入浴時

  • 浴槽の縁や手すりをしっかり掴む
  • ゆっくりと片足ずつ入れる
  • 急に深く沈まず、徐々に身体を沈める
  • 必要に応じて浴槽台を使用

退出時

  • 急に立ち上がらない(立ちくらみ防止)
  • まず浴槽の縁に座る
  • 一呼吸置いてから立ち上がる
  • 手すりを使ってゆっくりと

3. 入浴時間と湯温の管理

湯につかる時間は10分を目安とすることが推奨されています。

時間管理のポイント

  • 入浴時間の目安は10分程度
  • 長湯は血圧低下やのぼせの原因に
  • タイマーで時間を計測
  • こまめな声かけで様子を確認

入浴中の注意点

  • 顔色や表情の変化を観察
  • 会話や反応を確認
  • 「大丈夫ですか?」など定期的な声かけ
  • 異変を感じたらすぐに中止

4. 入浴後のケア

身体の拭き方

  • 身体を冷やさないよう素早く拭く
  • 特に頭部はしっかり乾かす
  • 脱衣所の温度を保つ

水分補給

  • 入浴後は必ず水分補給
  • 常温または温かい飲み物がおすすめ
  • コップ1〜2杯程度が目安

バイタルチェック

  • 血圧、脈拍の測定
  • 入浴前との比較
  • 異常があれば医療職へ報告

入浴介助における禁忌事項

以下の状況では入浴を控えるか、医師に相談してください。

絶対に避けるべきこと

❌ 飲酒後の入浴

  • アルコールは血管を拡張させ血圧を下げる
  • 意識レベルの低下により事故リスクが高まる

❌ 食後すぐの入浴

  • 消化のため血液が胃腸に集中している
  • 脳や心臓への血流が不足しやすい
  • 食後30分以上空けることが望ましい

❌ 睡眠薬・安定剤服用後の入浴

  • 意識レベルが低下する可能性
  • ふらつきや転倒のリスクが高まる

❌ 一人での入浴(高リスクの場合)

  • 意識障害時の発見が遅れる
  • 緊急時の対応が困難

緊急時の対応

異変に気づいたら

すぐに行うべきこと

  1. 大きな声で名前を呼び反応を確認
  2. 浴槽の栓を抜く(溺水防止)
  3. 可能であれば浴槽から救出
  4. 安全な場所に移動
  5. 緊急通報(119番)

救出が困難な場合

  • 無理に一人で動かさない
  • すぐに周囲に助けを求める
  • 救急車を呼ぶ
  • 頭部を浴槽の縁に乗せて呼吸を確保

心肺蘇生が必要な場合

  • 胸骨圧迫(心臓マッサージ)
  • 人工呼吸(可能であれば)
  • AEDの使用(利用可能な場合)
  • 救急隊到着まで継続

入浴補助具の活用

主な入浴補助具

浴槽内で使うもの

  • 浴槽用手すり
  • 浴槽台(浴槽内の台)
  • すべり止めマット

浴室で使うもの

  • シャワーチェア
  • 浴室用手すり
  • すのこ(浴室の段差解消)

補助具の選び方

ポイント

  • 利用者の身体機能に合ったものを選ぶ
  • 安全性(滑り止め、安定性)を重視
  • 介助者の負担軽減も考慮
  • 専門職(理学療法士、作業療法士等)に相談

入手方法

補助具は介護保険のレンタル対象となる場合があります。ケアマネジャーにご相談ください。


OUR訪問看護ステーションのサポート

入浴介助の訪問看護

訪問看護では、医療的なケアが必要な方の入浴介助を行います。

サービス内容

  • 医療保険または介護保険での入浴介助
  • バイタルチェックと体調管理
  • 安全な入浴方法の指導
  • 介助方法のアドバイス
  • 緊急時の対応

こんな方におすすめ

  • 持病があり入浴に不安がある方
  • 医療処置(点滴、カテーテル等)がある方
  • 一人での入浴が困難な方
  • ご家族の介助負担を軽減したい方

まとめ

冬場の入浴介助では、以下のポイントを押さえることが大切です。

安全な入浴のための5つのポイント

  1. 入浴前の準備
    • 体調チェック(バイタルサイン、体調確認)
    • 環境整備(室温調整、湯温設定)
  2. 温度管理の徹底
    • 脱衣所・浴室を事前に暖める
    • 湯温は41度以下を目安に
  3. 段階的な身体の慣らし
    • かけ湯で徐々に身体を温める
    • 急激な温度変化を避ける
  4. 時間管理
    • 入浴時間は10分程度を目安に
    • こまめな声かけと観察
  5. 禁忌事項の遵守
    • 飲酒後、食後すぐの入浴は避ける
    • 体調不良時は無理をしない

入浴は身体の清潔を保ち、リラックスできる大切な時間です。しかし、適切な準備と注意がなければ重大な事故につながる可能性もあります。

ご利用者様の安全と快適さを第一に考えた入浴介助を心がけましょう。ご不明な点や不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。


お問い合わせ

OUR訪問看護ステーション

📞 電話: 0985-77-8266(平日8:30-17:30)
💻 お問い合わせフォーム: https://our-co.jp/contact/
🏠 所在地: 宮崎県宮崎市
📍 対応エリア: 宮崎市全域、国富町、綾町、新富町


参考文献・出典

本記事は以下の公的機関の資料を参考に作成しました。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や医学的助言を提供するものではありません。

  • ご利用者様の健康状態や身体機能には個人差があります
  • 入浴介助の実施にあたっては、必ず医師や看護師、ケアマネジャーなどの医療・介護専門職にご相談ください
  • 持病のある方、服薬中の方は、主治医の指示に従ってください
  • 本記事の情報を利用したことによる損害について、当ステーションは一切の責任を負いかねます
  • 緊急時は速やかに119番通報し、適切な医療機関を受診してください

入浴介助には常にリスクが伴います。安全を最優先し、専門職の指導のもとで実施してください。