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ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

ご家族の『疲れ』を見逃さない〜介護負担アセスメント

カテゴリー: ケアの知恵袋
執筆: OUR訪問看護ステーション
執筆日: 2025年12月


在宅療養の現場で、私たち訪問看護師が最も大切にしていることの一つ。それは、利用者様だけでなく、介護を担うご家族の健康と笑顔を守ることです。

「母の様子は安定しているけれど、娘さんの表情が曇っている」 「前回訪問時より、奥様の口数が減った気がする」 「息子さん、以前より痩せたのでは?」

こうした小さなサインを、私たちは見逃しません。なぜなら、ご家族が疲弊してしまうと、在宅療養そのものが継続できなくなるリスクがあるからです。

厚生労働省の調査によれば、同居の主な介護者のうち約6割が日常生活で悩みやストレスを抱えているという結果が出ています。さらに、介護負担が限界に達すると、「介護うつ」や「燃え尽き症候群(バーンアウト)」に陥るケースも少なくありません。

この記事では、訪問看護の現場で実際に活用されている介護負担アセスメントの方法と、ご家族の「疲れのサイン」を早期に発見するためのチェックリストをご紹介します。


目次

  1. なぜご家族の「疲れ」を見逃してはいけないのか
  2. 介護負担とは?〜3つの側面から理解する
  3. ご家族の疲れを見抜く「5つのサイン」
  4. 訪問看護師のための介護負担アセスメント
  5. ご家族向けセルフチェックリスト
  6. 介護負担を軽減するための実践的アプローチ
  7. OURの家族支援の取り組み
  8. まとめ

1. なぜご家族の「疲れ」を見逃してはいけないのか

在宅療養継続の最大のリスク要因

在宅医療の現場では、利用者様本人の医学的管理に目が向きがちです。しかし実は、家族の燃え尽き症候群こそが、在宅療養継続の最大のリスク要因なのです。

家族が限界を迎えると、以下のような事態が起こり得ます:

  • 緊急入院・施設入所: 「もう家では看られない」という判断に至る
  • 介護の質の低下: 疲労により、適切なケアが提供できなくなる
  • 家族関係の悪化: イライラや罪悪感で、家族間の対立が生まれる
  • 介護者自身の健康被害: うつ病、不眠症、身体的疾患の発症

介護者を守ることは、利用者様を守ること

OUR訪問看護ステーションでは、「介護者を守ることは、利用者様を守ること」という考え方を大切にしています。

ご家族が心身ともに健康であってこそ、利用者様は安心して在宅療養を続けることができるのです。


2. 介護負担とは?〜3つの側面から理解する

介護負担の定義

介護負担とは、米国の研究者Zaritによって以下のように定義されています:

「親族を介護した結果、介護者の情緒的、身体的健康、社会生活および経済的状態に関して被った苦痛の程度」

つまり、介護負担は単なる「疲れ」ではなく、身体・心・社会・経済のあらゆる側面に及ぶ総合的な苦痛なのです。

介護負担の3つの側面

1. 身体的負担

  • 腰痛、肩こり、ひざ痛などの身体的症状
  • 睡眠不足による慢性疲労
  • 移乗介助や入浴介助での体力消耗
  • 夜間の見守りによる睡眠の質の低下

2. 精神的負担

  • 終わりの見えない介護への不安
  • 「私がやらなければ」という責任感とプレッシャー
  • 思い通りにならないイライラ
  • 利用者様への罪悪感と自己嫌悪
  • 孤独感・孤立感
  • 将来への漠然とした不安

3. 社会的・経済的負担

  • 仕事との両立困難(離職・減収)
  • 友人との交流機会の減少
  • 趣味や外出の時間がなくなる
  • 医療費・介護費用の経済的圧迫
  • 家族関係の変化とストレス

3. ご家族の疲れを見抜く「5つのサイン」

訪問看護師として、ご家族のこんなサインを見逃してはいけません。

サイン1: 表情・態度の変化

具体例:

  • 以前より笑顔が減った、表情が硬い
  • あいさつの声が小さくなった、元気がない
  • 目が合わない、視線を逸らす
  • ため息が増えた
  • 身だしなみが乱れてきた

背景: 精神的な余裕がなくなり、笑顔を作る気力が失われている状態です。


サイン2: 身体症状の出現

具体例:

  • 以前より痩せた、または太った
  • 顔色が悪い、目の下にクマがある
  • 肩こり、腰痛を訴える
  • 「眠れない」と話す
  • 風邪が長引いている

背景: 慢性的なストレスと疲労により、身体にSOSサインが現れています。


サイン3: コミュニケーションの変化

具体例:

  • 以前より口数が減った、無口になった
  • 質問への返答が短く、素っ気ない
  • 逆に、愚痴や不満が増えた
  • 利用者様への言葉遣いが荒くなった
  • 訪問看護師への相談が減った

背景: 心の余裕がなくなり、他者とのコミュニケーションが負担になっています。


サイン4: 生活環境の変化

具体例:

  • 部屋が以前より散らかっている
  • 掃除・洗濯が行き届いていない
  • 食事が簡素になっている、惣菜が増えた
  • ゴミが溜まっている
  • 利用者様の衣服が汚れている

背景: 家事に手が回らなくなるほど、介護負担が限界に達しています。


サイン5: 行動の変化

具体例:

  • 外出を控えるようになった
  • 友人や親戚との交流が減った
  • 趣味の時間を持たなくなった
  • アルコール摂取量が増えた
  • 「もう限界」「疲れた」と口にする

背景: 社会的孤立が進み、気分転換の機会が失われています。


4. 訪問看護師のための介護負担アセスメント

訪問時の観察チェックリスト

訪問時に以下の項目を意識的に観察しましょう。

1. ご家族の様子観察

☐ 表情は明るいか、笑顔があるか
☐ 身だしなみは整っているか
☐ 声のトーンは普段と変わらないか
☐ 体重の変化はないか
☐ 顔色は良いか

2. 生活環境の観察

☐ 室内は清潔に保たれているか
☐ 洗濯物は溜まっていないか
☐ 食事の準備状況は適切か
☐ 利用者様の身なりは整っているか

3. コミュニケーション

☐ 質問に対して適切に返答があるか
☐ 介護の悩みを話してくれるか
☐ 利用者様への接し方は適切か
☐ 疲労や不安の訴えはないか

4. 社会的つながり

☐ 他の家族との連携は取れているか
☐ 外出や趣味の時間を持てているか
☐ 相談できる人はいるか
☐ ケアマネージャーや他職種との連携は良好か


聞き取りのポイント

介護負担を把握するための効果的な質問例:

身体面:

  • 「最近、よく眠れていますか?」
  • 「腰や肩の痛みはありませんか?」
  • 「食事は規則的に取れていますか?」

精神面:

  • 「介護で困っていることはありませんか?」
  • 「ストレスを感じることはありますか?」
  • 「気分が落ち込むことはありますか?」

社会面:

  • 「ご自身の時間は取れていますか?」
  • 「他のご家族との協力は得られていますか?」
  • 「お友達や趣味の時間は持てていますか?」

経済面:

  • 「介護費用でお困りのことはありませんか?」
  • 「お仕事との両立は大丈夫ですか?」

Zarit介護負担尺度(J-ZBI)の活用

より客観的に介護負担を評価する場合、Zarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)や、その短縮版(J-ZBI_8)を活用する方法があります。

J-ZBI_8の評価項目例:

  1. 介護のために時間的余裕がない
  2. 心身の健康状態が悪化した
  3. 社会生活や私生活に悪影響がある
  4. 介護のために経済的に困難を感じる
  5. 利用者様の行動に困っている
  6. 他の家族や友人との関係が悪くなった
  7. 自分の生活をコントロールできないと感じる
  8. 全体的に負担を感じている

各項目を0〜4点で評価し、合計得点が高いほど介護負担が大きいと判断されます。

評価の目安:

  • 0〜8点: 介護負担なし〜軽度
  • 9〜16点: 中等度の介護負担
  • 17点以上: 重度の介護負担(支援が必要)

5. ご家族向けセルフチェックリスト

介護疲れセルフチェック(ご家族用)

以下のチェックリストで、ご自身の疲れ具合を確認してみましょう。

2つ以上当てはまる場合は、介護疲れが始まっているサインです。
地域包括支援センターや訪問看護ステーションに相談してみましょう。


身体面のチェック

☐ 眠れない日が続いている、または夜中に何度も目が覚める
☐ 食欲がない、または過食気味になっている
☐ だるくて意欲がわかない、疲れが取れない
☐ 頭痛、肩こり、腰痛などの身体的な痛みがある
☐ 風邪をひきやすくなった、体調を崩しやすい
☐ 体重が急に減った、または増えた


精神面のチェック

☐ 気分が落ち込むことが多い、以前より笑えなくなった
☐ イライラすることが増えた、些細なことで怒りが込み上げる
☐ 「自分は何をやっているんだろう」と虚しくなる
☐ 利用者様に対して冷たい言葉や態度をとってしまう
☐ 「もう限界」「逃げ出したい」と思うことがある
☐ 将来のことを考えると不安で仕方がない


社会面のチェック

☐ 介護のために、仕事や家事に影響が出ている
☐ 友人との交流がなくなった、外出する機会が減った
☐ 趣味や好きなことをする時間がまったくない
☐ 自分の時間が全くない、常に介護のことを考えている
☐ 家族や周囲の協力が得られない、一人で抱え込んでいる
☐ 介護のことを相談できる人がいない


経済面のチェック

☐ 介護のために仕事を辞めた、または収入が減った
☐ 医療費・介護費用の負担が重い
☐ 経済的な将来が不安


チェック結果の見方

  • 0〜1個: 今のところ大きな問題はありませんが、定期的にセルフチェックを続けましょう。
  • 2〜4個: 介護疲れのサインが出ています。相談窓口に連絡して、サポートを受けましょう。
  • 5個以上: 介護負担が限界に近づいています。すぐに専門家に相談してください。

6. 介護負担を軽減するための実践的アプローチ

1. レスパイトケアの活用

レスパイトケアとは、介護者が一時的に介護から解放され、休息を取るための支援です。

活用できるサービス:

  • ショートステイ(短期入所): 数日間、施設に入所してもらう
  • デイサービス: 日中、施設で過ごしてもらう
  • 訪問介護の利用拡大: 家事や身体介護をプロに任せる
  • 訪問看護の活用: 医療的ケアや相談支援を受ける

OURからのアドバイス: 「休むことは、サボることではありません。リフレッシュして、また良い介護を続けるための必要な時間です」


2. 家族会議で介護を分担

一人で抱え込まず、家族全員で介護を分担しましょう。

家族会議のポイント:

  • 現在の介護状況を共有する
  • それぞれができることを話し合う
  • 曜日や時間で担当を決める
  • 経済的な分担も検討する
  • 定期的に見直す機会を設ける

3. 感情を吐き出す場を持つ

相談窓口:

  • 地域包括支援センター: 介護全般の相談窓口
  • 訪問看護ステーション: 医療・介護の専門家に相談
  • ケアマネージャー: サービス調整や制度の相談
  • 家族会・介護者の会: 同じ境遇の人と悩みを共有

OURでは: 訪問時に、利用者様のケアだけでなく、ご家族の話をじっくり聞く時間も大切にしています。


4. 自分の時間を意識的に作る

小さな工夫:

  • 週に1回、30分だけでも自分の時間を作る
  • 好きな音楽を聴く、散歩をする
  • カフェでゆっくりする
  • オンラインで趣味の時間を持つ

5. 完璧を求めない

「すべて完璧にやらなければ」という思い込みを手放しましょう。

  • 掃除は毎日でなくてもいい
  • 食事は惣菜や冷凍食品を活用してもいい
  • 「できる範囲でやる」という考え方に切り替える

7. OURの家族支援の取り組み

OUR訪問看護ステーションでは、利用者様とご家族、両方を支える「トータルケア」を実践しています。

私たちの家族支援の特徴

1. ご家族の話をじっくり聞く時間を大切にする

 訪問時、利用者様のケアだけでなく、ご家族の困りごとや不安にもしっかり耳を傾けます。

2. 介護負担の定期的なアセスメント

 訪問のたびに、ご家族の表情や様子、生活環境を観察し、介護負担が増していないかチェックしています。

3. 具体的なアドバイスと情報提供

 利用できる制度やサービス、介護の工夫など、実践的な情報を提供します。

4. 多職種との連携

 ケアマネージャー、医師、薬剤師、リハビリスタッフなど、多職種と連携し、ご家族を孤立させません。

5. 24時間連絡体制

 「困ったときにいつでも相談できる」という安心感を提供しています。

電話: 0985-77-8266


8. まとめ

在宅療養を支えるのは、利用者様だけでなく、ご家族の笑顔と健康です。

この記事のポイント

✅ ご家族の疲れを見逃さない: 表情、身体症状、コミュニケーション、生活環境、行動の5つのサインに注目
✅ 介護負担は多面的: 身体・精神・社会・経済のあらゆる側面で負担が生じる
✅ 訪問看護師の役割: 定期的なアセスメントと早期介入で、ご家族を守る
✅ セルフチェックの習慣: ご家族自身が定期的に疲れ具合を確認することが大切
✅ レスパイトケアの活用: 休むことは、良い介護を続けるための必要な時間


OURからのメッセージ

「もう限界」と感じる前に、どうか私たちに相談してください。

介護は、一人で抱え込むものではありません。
私たちOUR訪問看護ステーションは、利用者様とご家族、両方を全力でサポートします。

あなたらしさを、ともにつくる。
それが、OURの理念です。


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執筆日: 2025年12月
執筆: OUR訪問看護ステーション


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この記事を書いた人

OUR訪問看護ステーション

宮崎市を拠点に、「あなたらしさを、ともにつくる」を理念として、訪問看護サービスを提供しています。経験豊富な看護師・理学療法士が在籍し、24時間体制で、幅広い疾患に対応。利用者様とそのご家族が、住み慣れたご自宅で安心して暮らせるよう、専門性の高いケアを提供しています。

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本記事は、以下の学術文献および公的機関の資料に基づいて作成されています。

  1. 荒井由美子, 田宮菜奈子, 矢野栄二(2003)
    「Zarit介護負担尺度日本語版の短縮版(J-ZBI_8)の作成:その信頼性と妥当性に関する検討」
    『日本老年医学会雑誌』40(5), 497-503.
    📄 J-STAGEで読む
  2. 国立長寿医療研究センター(2014)
    「Zarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)による介護負担評価」
    厚生労働科学研究費補助金 長寿科研2014年度研究報告書
    📄 PDFで読む
  3. 厚生労働省(2014)
    「Zarit介護負担尺度日本語版」関連研究(研究課題番号: 201444005A)
    厚生労働科学研究成果データベース
    📄 PDFで読む
  4. Zarit, S. H., Reever, K. E., & Bach-Peterson, J. (1980)
    “Relatives of the impaired elderly: Correlates of feelings of burden.”
    The Gerontologist, 20(6), 649-655. doi: 10.1093/geront/20.6.649
    📄 PubMedで読む | 📄 Oxford Academicで読む

: J-ZBI(Zarit介護負担尺度日本語版)およびJ-ZBI_8(短縮版)は、国際的に広く使用されている介護負担評価ツールの日本語版であり、臨床現場や研究で信頼性と妥当性が確認されています。


法的免責事項

  • 本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の医療行為を推奨または否定するものではありません。
  • 介護やメンタルヘルスに関する個別の判断・対応は、必ず医師、看護師、またはその他の医療専門職にご相談ください。
  • 本記事の情報に基づいて行動された結果について、OUR訪問看護ステーションは一切の責任を負いかねます。
  • 記事内容は2025年12月時点の情報であり、法改正や制度変更により内容が変更される可能性があります。