
“理念倒れ”にしないために。 「あなたらしさを、ともにつくる」をどう実装するか?
こんにちは。株式会社OURの中田富久です。 前回のコラムでは、私自身のこれまでの歩みや、OURという組織の立ち上げについてお話ししました。 今回は、OURの理念「あなたらしさを、ともにつくる」をもう少し掘り下げて、現場でどのように実装しているのか、実例を交えてお話ししてみたいと思います。
目次
- 1. 理念は“開業当初”からあったわけではない
- 2. 「あなたらしさ」って、誰のこと?
- 3. 理念が“絵に描いた餅”にならないように
- 4. 「あなたらしさを支える支援」とは
- 5. スタッフの「らしさ」が活きる組織へ
- 6. 理念を問い直し続けるということ
- 7. おわりに(次回予告)
1. 理念は“開業当初”からあったわけではない
OURという社名には、“わたしたちの”という意味があります。設立当初は、「誰からも“わたしたちの”と思ってもらえる会社でありたい」という思いを込めて名づけました。ただ、当時はその言葉がどこか抽象的で、しっくりこない部分がありました。
この「わたしたちの」という感覚を掘り下げていく中で、私は次第に「この組織が、誰かの“らしさ”を支える場になってほしい」と強く思うようになりました。そして、その“らしさ”は一人ではなく、“ともに”つくっていくものだと考えるようになったのです。
2025年にホームページを刷新した際、関わってくださったライターさんが私の考えを丁寧に整理してくださり、「あなたらしさを、ともにつくる」という言葉が、OURの理念として定着しました。
2. 「あなたらしさ」って、誰のこと?
OURの理念にある「あなたらしさ」は、利用者さんだけを指すものではありません。 それは、スタッフやご家族、地域、そして私たち自身も含めた言葉です。
たとえば、ある利用者さんが「普通の生活がしたい」と言ったとします。 その「普通」は、その人にとっての“らしさ”であり、何より大切にされるべきものです。
一方で、スタッフの「わたしらしさ」もまた重要です。 誰かの支援を通して、自分の働く意味や喜びを実感すること。 「給料で好きなことができた」「自分の価値を感じられた」…そういった経験が、スタッフ自身の“らしさ”を育てていくのだと思います。
OURという場で、利用者さんも、スタッフも、そして私たち自身も、それぞれの「らしさ」を育んでいける。そんな循環をつくることが、私の目指す経営です。
3. 理念が“絵に描いた餅”にならないように
理念は掲げることよりも、「どう生かすか」の方がはるかに難しい。 だからこそ、私は常に「理念を体現できているか?」を自分に問い続けています。
判断に迷う場面、葛藤が生まれる瞬間。 そんなときこそ、「自分の選択は理念とつながっているか?」と見つめ直します。
理念があるから、スタッフと対話ができる。 理念があるから、納得感のある判断ができる。 そして理念があるから、「この仕事は自分たちの誇りだ」と思える。
完璧にはできなくても、理念を“掲げっぱなし”にはしない。 その姿勢こそが、OURの文化を育てると信じています。
4. 「あなたらしさを支える支援」とは

以前、「自宅で仕事がしたい」という希望を持つ方とともに、作業部屋の環境を整え、在宅ワークを実現したことがありました。デスクの高さや動線、使う機器の配置まで、一緒に考えて、一歩ずつ整えていきました。
私たちの看護・リハビリは、ただ処置や訓練を行うことが目的ではありません。 大切なのは、“その人のらしさ”を看護やリハビリを通してどう実現していくか、です。
ある人にとっては「顔を自分で洗えること」、またある人にとっては「孫にご飯を作ってあげること」が、その人らしさかもしれない。
私たちはまず、「その人にとってのらしさとは何か」を知ることから支援を始めます。 それは、病気を見るのではなく、人を見るという姿勢。 そして時に、私たちの存在そのものが、「らしさ」を支える力になることもあるのです。
「自宅で最期まで過ごしたい」「住み慣れた家で日常を送りたい」という想いも、その人らしさの一つ。そうした想いに寄り添い、実現できるよう支援することも、私たちの大切な役割だと感じています。
5. スタッフの「らしさ」が活きる組織へ

OURというチームの中で、スタッフが自分らしく働けることも、理念の一部です。
正直なところ、まだまだ発展途上です。 でも、柔軟な働き方や情報共有の工夫、業務効率化のためのICT・AIの導入など、 できることから一歩ずつ実践しています。
評価の軸も、役職や年数だけではなく、 「その人がどれだけ自分らしさを持ち寄ってくれているか」を重視したいと考えています。
未完成な組織だからこそ、スタッフと一緒に“ともにつくっていく”文化が育っていく。 それがOURの現在地です。
6. 理念を問い直し続けるということ
理念を実装するとは、完成された答えを出すことではありません。 むしろ、毎日の現場や判断の中で、何度も問い直し、考え直していくことだと思っています。
「これは理念に沿っているか?」「これが“ともにつくる”という姿勢なのか?」 そう問いながら、前に進む。
それが、OURの歩みです。
7. おわりに(次回予告)
次回は、理念から少し離れて、 訪問看護という仕事の中で日々感じている“人と人との関係性”について書いてみようと思います。
支援者として、医療職として、でも何より一人の人間として、 誰かと向き合うときに大切にしていること。
そんな日常のワンシーンを、綴ってみたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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