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ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

「認知症かもしれない」と不安なあなたへ〜初期症状の見分け方と家族ができること

カテゴリー: ケアの知恵袋
執筆日: 2026年1月20日
執筆: 訪問看護ステーションOUR(アワー)


はじめに〜あなたの不安に寄り添いたい

「最近、母が同じことを何度も聞いてくる」
「父が薬を飲んだか忘れてしまう」
「もしかして、認知症なのでは…?」

そんな不安を抱えて、このページにたどり着かれたのではないでしょうか。大切なご家族の変化に気づいたとき、誰もが「気のせいかもしれない」と思いたい気持ちと、「放っておいてはいけない」という焦りの間で揺れ動くものです。

訪問看護ステーションOURでは、宮崎市で多くのご家族と向き合ってきました。その経験から、認知症の初期症状は「早く気づくこと」が何より大切だとお伝えしています。なぜなら、早期に適切なケアを始めることで、ご本人らしい生活を長く続けられる可能性が高まるからです。

この記事では、認知症の初期症状の見分け方から、ご家族ができる寄り添い方、そして訪問看護でどんな支援ができるのかまで、わかりやすくお伝えします。一人で抱え込まずに、まずは正しい知識を持つことから始めましょう。


「もの忘れ」と「認知症」はどう違う?

年齢を重ねると、誰でも「あれ、何を取りに来たんだっけ?」と忘れることがあります。これは自然な加齢によるもの忘れです。では、認知症とはどう違うのでしょうか。

加齢によるもの忘れ

  • 体験の一部を忘れる(例:昨日の夕食のメニューは思い出せないが、夕食を食べたこと自体は覚えている)
  • 自分で「忘れっぽくなった」と自覚している
  • ヒントがあれば思い出せる
  • 日常生活に大きな支障はない

認知症による記憶障害

  • 体験そのものを忘れる(例:夕食を食べたこと自体を忘れている)
  • もの忘れの自覚がない(初期には自覚があることもあります)
  • ヒントがあっても思い出せない
  • 日常生活に支障が出始める

このような違いがありますが、初期段階では見分けがつきにくいことも少なくありません。「おかしいな」と感じたら、まずは様子を注意深く観察することが大切です。


認知症とは?〜脳の病的な変化による症状

認知症は、単なる「もの忘れ」ではなく、脳の病的な変化によって認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態を指します。

代表的なものに、アルツハイマー型認知症(全体の約6割以上)、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症があります。それぞれ原因や症状の現れ方が異なりますが、共通しているのは「早期発見・早期対応」が重要という点です。

2025年の推計では、日本の認知症患者数は約470万人に達するとされ、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症またはその予備軍である軽度認知障害(MCI)を抱えていると言われています。決して他人事ではありません。


認知症の初期症状〜見逃したくない4つのサイン

認知症の初期症状は、ご本人も周囲も「年のせいかな」と見過ごしてしまいがちです。しかし、以下のような変化が複数見られる場合は、認知症の可能性を考える必要があります。

1. 記憶障害(もの忘れ)

  • 何度も同じことを聞く・話す
  • 置き忘れや探しものが増えた
  • 約束を忘れてしまう
  • さっき聞いたことを覚えていない

2. 見当識障害(時間・場所がわからなくなる)

  • 今日が何月何日かわからない
  • 今いる場所がどこかわからない
  • 慣れた道で迷うことがある
  • 季節感がずれる(真夏に厚着をするなど)

3. 理解力・判断力の低低下

  • 料理の味が変わった、段取りが悪くなった
  • 家電の使い方がわからなくなった
  • お釣りの計算ができない
  • テレビの内容が理解できない

4. 実行機能障害・性格の変化

  • 計画を立てて物事を進められない
  • 以前は几帳面だったのに片付けられなくなった
  • 怒りっぽくなった、疑い深くなった
  • 何事にもやる気がなくなった
  • 身だしなみに無関心になった

これらの症状は、少しずつ、そして気づかないうちに進行することが特徴です。「いつもと違うな」と感じたら、それは大切なサインかもしれません。


MCI(軽度認知障害)という「グレーゾーン」

認知症と診断される前段階に、MCI(軽度認知障害)という状態があります。これは、健常者と認知症の間に位置する「グレーゾーン」とも言える状態です。

MCIの特徴

  • 記憶力などの認知機能が低下しているが、日常生活はほぼ自立できる
  • 本人や家族が「以前と違う」と感じる
  • 認知症ではないが、放置すると1年で約5〜15%が認知症に移行する

希望のある事実

MCIの段階で適切な対策を取れば、1年で16〜41%の方が健康な状態に戻ったという報告もあります。つまり、早期発見・早期対応によって、認知症への進行を遅らせたり、回復する可能性があるのです。


家族ができる「気づきチェックリスト」

ご家族が日常生活の中で確認できるチェックリストをご紹介します。以下の項目に3つ以上当てはまる場合は、一度医療機関への相談を検討されることをおすすめします。

  • □ 同じことを何度も繰り返して話したり、聞いたりする
  • □ しまい忘れが多く、いつも探し物をしている
  • □ 曜日や日付がわからず、何度も確認する
  • □ 料理の味が変わったり、準備に時間がかかるようになった
  • □ 薬の飲み忘れや、飲んだかどうかわからなくなることがある
  • □ 以前好きだった趣味に興味を示さなくなった
  • □ 慣れた場所でも道に迷うことがある
  • □ 話す言葉が出てこず、「アレ」「コレ」が増えた
  • □ 怒りっぽくなったり、疑い深くなったりした
  • □ 身だしなみを気にしなくなった

※このチェックリストは診断ではなく、あくまで「気づき」のための目安です。心配な症状があれば、必ず医療機関を受診してください。


医療機関での診断プロセス〜受診のハードルを下げるために

「認知症かもしれない」と思っても、病院を受診するのは勇気がいるものです。ご本人が受診を嫌がるケースも少なくありません。

どの診療科を受診すればいい?

  • もの忘れ外来(認知症専門)
  • 神経内科
  • 精神科・心療内科
  • かかりつけ医(まずは相談から)

診断の流れ

  1. 問診:日常生活の様子、いつ頃から症状があるかなど
  2. 認知機能検査:簡単な質問や図形の模写など(長谷川式認知症スケールなど)
  3. 画像検査:CTやMRIで脳の状態を確認
  4. 血液検査:他の病気(甲状腺機能低下症など)の可能性を除外

診断がついたからといって、すぐに生活が大きく変わるわけではありません。むしろ、「原因がわかって安心した」「どう対応すればいいか方針が見えた」という声も多く聞かれます。

受診を促すコツ

  • 「健康診断のつもりで一緒に行こう」と誘う
  • 「物忘れが気になって、私自身も診てもらいたい」と伝える
  • かかりつけ医から専門医を紹介してもらう

無理に連れて行こうとせず、ご本人の気持ちを尊重しながら、タイミングを見計らうことが大切です。


認知症の治療法〜進行を遅らせ、穏やかに過ごすために

現在のところ、認知症を完全に治す方法はありませんが、進行を遅らせ、症状を和らげる治療法はあります。

薬物療法

  • コリンエステラーゼ阻害薬:記憶力の低下を遅らせる
  • NMDA受容体拮抗薬:中等度から重度の認知症に効果
  • 抗アミロイドβ抗体薬:2023年以降に登場した疾患修飾薬。アルツハイマー病の進行そのものを抑える可能性がある新薬

非薬物療法

  • 認知刺激療法:クイズや会話で脳を活性化
  • 運動療法:ウォーキングや体操で身体機能を維持
  • 回想法:昔の写真を見ながら語り合うことで心の安定を図る
  • 音楽療法・アート療法:楽しみながら脳を刺激

薬だけに頼るのではなく、日常生活の中での関わりやリハビリテーションを組み合わせることで、ご本人の「できること」を長く維持することができます。


訪問看護でできる認知症ケア〜生活の場で支える専門的サポート

訪問看護ステーションOURでは、認知症のある方やそのご家族に対して、生活の場で専門的なケアを提供しています。

OURが提供する認知症ケア

1. 健康状態の観察と早期発見

認知症の方は、体調不良をうまく訴えられないことがあります。看護師が定期的に訪問し、バイタルサイン(血圧・体温・脈拍など)のチェックや全身状態の観察を行います。小さな変化も見逃さず、異常の早期発見に努めます。

2. 服薬管理

複数の薬を正しく飲むことは、認知症の方にとって大きな負担です。訪問看護師が服薬状況を確認し、飲み忘れや誤薬を防ぎます。必要に応じて、お薬カレンダーの活用や一包化の提案も行います。

3. 生活リズムの維持と日常生活支援

入浴や食事、排泄など、日常生活動作(ADL)のサポートを通じて、ご本人の「できること」を大切にしながら、安全に生活できるよう支援します。

4. コミュニケーションと心のケア

認知症の方は、不安や混乱を抱えていることが少なくありません。訪問看護師は、ご本人のペースに合わせてゆっくりと話を聞き、安心感を提供します。

5. ご家族への支援と介護負担の軽減

介護をされるご家族の疲れや不安にも寄り添います。介護方法のアドバイスや、レスパイトケア(介護者の休息)の提案、地域のサービスとの連携など、ご家族が「一人で抱え込まない」ための支援を行います。

6. 多職種との連携

主治医、ケアマネジャー、地域包括支援センター、介護サービス事業所などと密に連携し、チーム全体でご本人とご家族を支えます。

OURでは、「あなたらしさを、ともにつくる」という理念のもと、認知症があっても、その方らしい生活を続けられるよう、きめ細やかなケアを提供しています。


家族ができる「寄り添い方」の基本

認知症の方と向き合うご家族にとって、日々の関わり方に悩むことは自然なことです。ここでは、今日から実践できる「寄り添い方」のポイントをお伝えします。

1. 否定せず、受け止める

「さっき聞いたでしょ」「何度も同じこと言わないで」と否定すると、ご本人は傷つき、不安が増します。「そうなんだね」とまずは受け止めましょう。

2. ゆっくり、短く、わかりやすく話す

一度にたくさんのことを伝えると混乱します。一つずつ、ゆっくりと、短い言葉で伝えましょう。

3. 「できること」を奪わない

何でもやってあげるのではなく、できることは見守りながら続けてもらいます。「できた」という達成感が自信につながります。

4. 急がせない、責めない

時間がかかっても、せかさずに待つ姿勢が大切です。失敗しても責めず、「大丈夫ですよ」と声をかけましょう。

5. 昔の話に耳を傾ける

昔の記憶は比較的残りやすいため、昔話をすることで心が落ち着きます。「そうだったんですね」と共感しながら聞きましょう。

6. スキンシップを大切に

手を握る、肩に触れるなど、優しいスキンシップは安心感を与えます。

7. 介護者自身も休む

一人で抱え込まず、デイサービスやショートステイ、訪問看護などのサービスを利用して、ご自身の時間を持つことも大切です。


今日からできるセルフケア〜認知症予防のヒント

認知症は完全に予防することは難しいですが、リスクを減らすことは可能です。以下の生活習慣を意識してみましょう。

1. 適度な運動

ウォーキングやラジオ体操など、無理のない範囲で体を動かしましょう。運動は脳の血流を良くし、認知機能の維持に役立ちます。

2. バランスの良い食事

野菜、魚、大豆製品を中心とした食事を心がけましょう。特に青魚に含まれるDHA・EPAは脳の健康に良いとされています。

3. 社会とのつながり

人と会話をする、地域の活動に参加するなど、社会とのつながりを持つことが脳の刺激になります。

4. 脳を使う習慣

読書、パズル、日記をつけるなど、楽しみながら脳を使う活動を取り入れましょう。

5. 十分な睡眠

質の良い睡眠は、脳の老廃物を排出し、認知機能を保つために重要です。

6. 生活習慣病の管理

高血圧、糖尿病、脂質異常症などは、認知症のリスクを高めます。定期的に健康診断を受け、適切に管理しましょう。


こんな症状が出たら、すぐに受診を

以下のような症状が見られた場合は、早めに医療機関を受診してください。

  • 急激に症状が悪化した
  • 幻覚や妄想が強く出ている
  • 暴力的な言動がある
  • 食事や水分を全く取らなくなった
  • 徘徊して家に帰れなくなった
  • 転倒を繰り返す
  • 著しく体重が減少した

これらは、認知症そのものだけでなく、他の病気(脳梗塞、感染症、薬の副作用など)が隠れている可能性もあります。ためらわずに相談しましょう。


まとめ〜「もしかして?」に気づいたあなたへ

「認知症かもしれない」という不安は、とても大きなものです。でも、その気づきは、大切なご家族を守るための第一歩でもあります。

認知症は、早期に気づき、適切なケアを始めることで、進行を遅らせ、ご本人らしい生活を長く続けることができます。MCIの段階なら、回復する可能性もあります。

そして何より大切なのは、一人で抱え込まないことです。医療機関、訪問看護、ケアマネジャー、地域包括支援センターなど、支えてくれる専門家がたくさんいます。

訪問看護ステーションOURは、宮崎市で「あなたらしさを、ともにつくる」を大切に、認知症のある方とそのご家族に寄り添い続けています。生活の場でしか見えない変化に気づき、医療と介護の両面から、きめ細やかに支援いたします。

「どうしたらいいかわからない」「誰かに話を聞いてほしい」そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。一緒に、ご本人らしい、ご家族らしい日々をつくっていきましょう。

あなたとご家族の「これから」を、私たちOURが支えます。


免責事項

本記事は、訪問看護ステーションOURが一般の方々に認知症に関する理解を深めていただくことを目的として作成したものです。記事の内容は2026年1月時点の医学的知見に基づいていますが、医学的なアドバイスや診断に代わるものではありません。

認知症の症状や治療法は個人差が大きく、また医学研究の進展により情報が更新される可能性があります。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診し、専門医の診断と指導を受けてください。

本記事に掲載されているチェックリストは、あくまで「気づき」のための参考情報であり、診断ツールではありません。自己判断せず、医療専門職にご相談いただくことをお勧めします。

本記事の情報を利用したことにより生じたいかなる損害についても、訪問看護ステーションOURは責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。


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参考情報

  • 政府広報オンライン「知っておきたい認知症の基本」
  • 厚生労働省「認知症施策」
  • 公益社団法人認知症の人と家族の会
  • 東京都福祉局「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」