
「嘔吐と下痢が続いているけど、ただの食あたりか、ノロウイルスか分からない」。11月から3月にかけて、こうした相談が増えます。感染性胃腸炎は、健康な大人であれば数日で回復することが多い病気ですが、高齢者にとっては脱水や誤嚥性肺炎につながるリスクがあり、注意が必要です。
この記事では、感染性胃腸炎(ノロウイルスを中心に)の症状、高齢者が重症化しやすい理由、在宅でのケアと消毒方法を、宮崎市でOUR訪問看護ステーションが提供している視点から解説します。監修は認定作業療法士・OUR代表の中田富久です。
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感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌の感染によって嘔吐・下痢・腹痛・発熱を引き起こす病気で、11月から増え始め冬に流行する
感染性胃腸炎とは、ノロウイルスをはじめとするウイルスや細菌が原因で、嘔吐・下痢(水様性)・腹痛・発熱(38度以下が多い)を引き起こす病気です。ノロウイルスは手指や食品などを介して経口感染し、ヒトの小腸内で増殖します。潜伏期間は12〜72時間で、感染後比較的早く症状が現れます。
国立健康危機管理研究機構の感染症情報によると、ノロウイルスを中心とする感染性胃腸炎は例年11月上旬から患者数が増加し始め、12月をピークに一旦減少した後、1月から3月ごろに再び増加する傾向があります。ロタウイルスは3月から5月に流行がみられ、年間を通じて注意が必要な病気です。
高齢者が集団生活する施設では感染が広がりやすい
高齢者は加齢に伴って感染への抵抗力が弱くなっており、高齢者介護施設など集団生活の場では感染が広がりやすい環境になります。自宅で過ごす高齢者であっても、デイサービスの利用や家族を介した感染のリスクはあるため、注意が必要です。
高齢者が感染性胃腸炎にかかると、脱水と誤嚥性肺炎のリスクが特に高まる
健康な成人であれば、感染性胃腸炎は数日の対症療法で回復することが多い病気です。しかし高齢者の場合、2つの大きなリスクがあります。
脱水症状のリスク
嘔吐・下痢が続くと、体内の水分と電解質が急速に失われます。高齢者はもともと体内の水分量が少なく、のどの渇きを感じにくいこともあるため、脱水が重症化しやすい傾向があります。
誤嚥性肺炎のリスク
高齢者は、嘔吐物を誤って気道に詰まらせる(誤嚥)ことで肺炎を起こすことがあります。嚥下機能が低下している方では、嘔吐のたびにこのリスクが生じるため、体位の工夫や観察が重要になります。脳卒中後の嚥下障害とは?でも、誤嚥と誤嚥性肺炎の関係について解説しています。
在宅での対応。脱水を防ぎながら、少しずつ水分・食事を戻していく
感染性胃腸炎に特別な治療法はなく、つらい症状を軽減するための対症療法が基本になります。
嘔吐が落ち着いてから、少しずつ水分を
嘔吐が続いている間は、無理に水分を摂らせようとすると、さらに嘔吐を誘発することがあります。嘔吐が一旦落ち着いたら、スプーン1杯程度の少量から、経口補水液などで水分を補給していきます。一気に大量の水分を摂ると、再び嘔吐することがあるため、少量ずつ、時間を空けて与えることが大切です。
食事は消化しやすいものから、無理に食べさせない
症状が落ち着いてきたら、おかゆ・うどんなど消化の良いものから少しずつ食事を戻していきます。食欲がない間は、無理に食べさせる必要はありません。水分が摂れていることを優先し、食事は体調に合わせて進めます。
体位の工夫で誤嚥を防ぐ
嘔吐しやすい時期は、仰向けで寝ているときに嘔吐すると誤嚥のリスクが高まります。体を横向きにする、上体を少し高くするなど、嘔吐物が気道に入りにくい体位を工夫することが有効です。
こんな症状があれば、様子を見ずに医療機関に連絡してください
- 水分がまったく摂れない、摂ってもすぐに嘔吐してしまう
- 尿の量が明らかに減っている、口の中が乾いている(脱水のサイン)
- ぼんやりしている、呼びかけへの反応が鈍い
- 高熱が続く、血便がある
- 嘔吐のあとに咳が止まらない、呼吸が苦しそう(誤嚥性肺炎の可能性)
乳幼児や高齢者では下痢による脱水症状を生じやすく、早めの受診が勧められています。「いつもの胃腸炎だろう」と様子を見すぎないことが大切です。
嘔吐物・排泄物の処理と消毒方法。次亜塩素酸ナトリウムを正しく使う
感染性胃腸炎のケアで家族が最も不安を感じやすいのが、嘔吐物や排泄物の処理です。正しい手順を知っておくことで、家庭内での感染拡大を防ぐことができます。
嘔吐物処理の基本手順
- 嘔吐があった場合、周囲2メートル程度は汚染していると考えて対応します
- 使い捨てのマスク・手袋・ガウン(エプロン)を着用します
- ペーパータオルや布で、外側から内側に向けて静かに拭き取ります(こすらず、飛散させないように)
- 次亜塩素酸ナトリウム溶液(濃度約0.1%、1,000ppm程度)で浸すように拭き取り、その後水拭きします
- 使用したペーパータオルや手袋は、ビニール袋に入れて密閉して廃棄します
次亜塩素酸ナトリウムの濃度の目安
| 用途 | 濃度の目安 |
| 嘔吐物・排泄物が付いた床・物品の消毒 | 1,000ppm程度(約0.1%) |
| ドアノブ・手すりなど通常時の環境消毒 | 200ppm程度(約0.02%) |
次亜塩素酸ナトリウムは強力な消毒薬で、環境・器具の消毒に有効ですが、皮膚には使用できません。手指の消毒には、流水と石けんによる十分な手洗いが基本です。アルコール消毒はノロウイルスに対する効果が限定的であるため、嘔吐物・排泄物の処理には次亜塩素酸ナトリウムを使用することが推奨されています。
訪問看護師が、感染性胃腸炎の流行時期に気をつけていること
OUR訪問看護ステーションでは、11月から3月の感染性胃腸炎流行時期に、利用者さんの体調変化(嘔吐・下痢の有無、水分摂取量、脱水の兆候)を特に注意深く確認しています。ご本人の症状だけでなく、介護するご家族への感染拡大を防ぐための消毒方法の助言も行っています。
高齢の利用者さんが感染性胃腸炎にかかった場合、脱水や誤嚥性肺炎のリスクを早期に評価し、必要に応じて主治医と連携して点滴などの対応を検討します。訪問看護を利用していない方でも、気になる症状があれば早めにご相談ください。
こんな方は、まずお気軽にご相談ください。
- 高齢の家族が嘔吐・下痢を繰り返しており、脱水が心配
- 嚥下機能が低下している家族がいて、誤嚥性肺炎のリスクが気になる
- 嘔吐物の処理方法や消毒方法に不安がある
FAQ
Q1. ノロウイルスの症状はどのくらいで治りますか?
健康な成人であれば、通常1〜3日程度で症状が落ち着くことが多いですが、高齢者や基礎疾患のある方では回復に時間がかかることがあります。脱水や誤嚥性肺炎のリスクがあるため、高齢者の場合は症状が長引く場合や悪化する場合は早めに受診してください。
Q2. 嘔吐しているときに、無理に水分を摂らせたほうがいいですか?
嘔吐が続いている間に無理に水分を摂らせると、さらに嘔吐を誘発することがあります。嘔吐が一旦落ち着いてから、スプーン1杯程度の少量ずつ、時間を空けて水分を補給することをお勧めします。
Q3. 嘔吐物の処理に、アルコール消毒は使えますか?
ノロウイルスに対してアルコール消毒の効果は限定的です。嘔吐物・排泄物が付いた場所の消毒には、次亜塩素酸ナトリウム(濃度約0.1%)を使用することが推奨されています。手指の消毒は、流水と石けんによる十分な手洗いが基本です。
Q4. 家族が感染性胃腸炎になったら、他の家族への感染をどう防げばいいですか?
嘔吐物・排泄物の処理時に使い捨て手袋・マスクを使用し、処理後は十分に手洗いをしてください。トイレや触れる場所(ドアノブ・手すりなど)は、次亜塩素酸ナトリウム(濃度約0.02%)で定期的に消毒することをお勧めします。タオルの共用は避けてください。
Q5. 高齢者が感染性胃腸炎になったとき、特に注意すべきサインは何ですか?
尿量の減少、口の乾き、ぼんやりして反応が鈍いといった脱水のサイン、嘔吐後の咳や呼吸の苦しさといった誤嚥性肺炎のサインに注意してください。これらが見られたら、様子を見ずに医療機関に連絡してください。
Q6. デイサービスを利用している高齢者は、感染性胃腸炎にかかりやすいですか?
集団で過ごす時間が長いサービスでは、感染が広がりやすい環境になることがあります。流行時期は、施設での感染対策の状況を確認し、ご本人の体調変化にも普段より注意を向けることをお勧めします。
Q7. 宮崎市で、高齢者の感染性胃腸炎対応について訪問看護に相談できますか?
はい。OUR訪問看護ステーションでは、感染性胃腸炎流行時期の体調確認、脱水・誤嚥性肺炎リスクの評価、消毒方法の助言などに対応しています。気になる症状があれば、まずお気軽にご相談ください。
まとめ:感染性胃腸炎は、高齢者にとって脱水・誤嚥性肺炎のリスクがある病気
- 感染性胃腸炎(ノロウイルス)は例年11月上旬から増加し、12月をピークに流行する
- 高齢者は脱水症状と、嘔吐物の誤嚥による肺炎のリスクが特に高い
- 嘔吐が落ち着いてから少量ずつ水分を補給し、無理に食事を進めないことが基本
- 嘔吐物・排泄物の消毒には次亜塩素酸ナトリウムを正しい濃度で使用する
- 尿量の減少・反応の鈍さ・呼吸の苦しさといったサインがあれば、様子を見ずに医療機関に連絡する
今日できる一歩:次亜塩素酸ナトリウムなど、嘔吐物処理に必要なものを事前に用意しておきましょう。高齢の家族が嘔吐・下痢を繰り返す場合は、水分が摂れているかをまず確認し、心配な変化があれば早めに相談してください。
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参考文献一覧
- ノロウイルスに関するQ&A 厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html
- 介護現場における(施設系通所系訪問系サービスなど)感染対策の手引き 第2版 厚生労働省老健局 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001048000.pdf
- 吐物処理の手順 大分県中部保健所 https://www.pref.oita.jp/uploaded/life/2048828_2707991_misc.pdf
- IDWR 2022年第5号<注目すべき感染症>感染性胃腸炎 国立健康危機管理研究機構 https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/intestinal-m/intestinal-idwrc/10991-idwrc-2205.html
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監修:中田富久(認定作業療法士・OUR代表) 執筆:OUR訪問看護ステーション 看護・リハビリチーム