
「階段を上ると息が切れる」「少し歩いただけで苦しくなる」COPD(慢性閉塞性肺疾患)のある方にとって、息切れは生活の質を大きく左右します。薬物治療だけでなく、呼吸の仕方や体の動かし方を見直す「呼吸リハビリテーション」が、症状の緩和に重要な役割を果たします。
この記事では、COPD診断と治療のためのガイドライン2026(第7版、日本呼吸器学会)の内容を踏まえ、在宅でできる呼吸リハビリの具体的な方法を解説します。
呼吸リハビリテーションとは、口すぼめ呼吸・腹式呼吸・運動療法を組み合わせて息切れを軽減する治療です
COPD診断と治療のためのガイドライン2026(第7版、日本呼吸器学会)では、COPDの管理目標として「増悪の予防」に加えて「疾患進行の抑制および健康寿命の延長」が重視されています。薬物治療で気管支を広げるだけでなく、呼吸の仕方や体力そのものを整えることが、息切れを軽くし、動ける範囲を広げるために欠かせません。
口すぼめ呼吸は、息を吐く時間を長くすることで気道の閉塞を防ぐ基本の呼吸法です
COPDでは、息を吐き出すときに気道が潰れやすくなり、息が肺に残ってしまう(肺過膨張)ことが息切れの原因のひとつです。口をすぼめて、吸う時間の2〜3倍かけてゆっくり息を吐く「口すぼめ呼吸」を行うことで、気道内の圧力が保たれ、息を吐き切りやすくなります。階段の上り下りや家事など、息切れしやすい動作の前後に取り入れると効果的です。
腹式呼吸は、呼吸に使う筋肉の負担を減らし、効率よく空気を取り込む方法です
COPDが進行すると、本来呼吸を補助する首や肩の筋肉を過剰に使う「努力性呼吸」になりやすく、余計に体力を消耗します。お腹に手を当て、吸うときにお腹を膨らませ、吐くときにゆっくりへこませる腹式呼吸を練習することで、横隔膜を使った効率のよい呼吸に近づけます。仰向けや座った姿勢で、慣れないうちは1日数分から始めます。
運動療法は、息切れを恐れて動かなくなる悪循環を断ち切るために重要です
息切れがつらいからと体を動かさなくなると、筋力・体力が落ち、同じ動作でもより息切れしやすくなるという悪循環に陥ります。ウォーキングなどの持久力トレーニングと、下肢・体幹の筋力トレーニングを組み合わせることで、同じ距離を歩いても息切れしにくい体をつくることができます。運動中は、息切れの強さを自分の感覚(修正Borgスケールなどの指標)で確認しながら、無理のない強度で行うことが大切です。
日常生活動作の中では、息切れを起こしにくい体の使い方の工夫があります
洗面・更衣・入浴など、腕を上げる動作や前かがみの動作は息切れを誘発しやすいとされています。動作の合間に呼吸を整える、腕を上げる動作は呼気(息を吐きながら)に合わせて行う、といった工夫で、同じ動作でも息切れを軽減できます。訪問看護では、実際の生活動作の場面でこうした工夫を一緒に確認します。
在宅酸素療法を使いながらのリハビリでは、酸素の量と動きのバランスに注意します
在宅酸素療法(HOT)を使用している方がリハビリを行う場合、活動時に酸素飽和度(SpO2)がどの程度低下するかを確認しながら、安全な範囲で運動量を調整します。酸素の流量を自己判断で変更せず、医師の指示のもとで活動範囲を広げていくことが基本です。
急性増悪(症状が急に悪化すること)のサインを知っておくことも呼吸リハビリの一部です
いつもより息切れが強い、痰の量や色が変わった、発熱があるといった場合は、急性増悪の可能性があります。COPD診断と治療のためのガイドライン2026では増悪の予防が管理目標の柱のひとつに位置づけられており、早期に気づいて医療機関・訪問看護に連絡することが、入院を防ぎ、体力の低下を最小限にすることにつながります。
よくある質問
呼吸リハビリはどのくらいの期間続ければ効果が出ますか?
個人差はありますが、数週間〜数か月継続することで息切れの軽減や動ける範囲の広がりを実感される方が多くいます。効果を維持するには、症状が落ち着いた後も継続することが大切です。
運動中に息苦しくなったらどうすればいいですか?
無理をせず、その場で口すぼめ呼吸をしながら休憩してください。息苦しさが治まらない、いつもと様子が違うと感じる場合は、無理に運動を続けず医療機関にご相談ください。
在宅酸素療法をしていても運動していいのですか?
医師の指示のもとであれば、多くの場合運動は可能です。むしろ活動量を維持することが重要とされています。酸素流量の調整や運動強度は必ず医師・訪問看護師と相談しながら進めてください。
薬を使っていれば呼吸リハビリはしなくてもいいですか?
薬物治療と呼吸リハビリは補完し合う関係にあります。気管支拡張薬などで呼吸を楽にしつつ、呼吸法や運動療法で体力そのものを維持することで、より高い生活の質を保つことができます。
咳や痰が多いのですが、リハビリは続けても大丈夫ですか?
普段と同程度の咳・痰であれば問題ないことが多いですが、量が急に増えた、色が変わった、発熱を伴うといった場合は急性増悪の可能性があるため、リハビリを中断し早めにご相談ください。
まとめ
今日できる一歩:階段や家事の前後に、口をすぼめてゆっくり息を吐く「口すぼめ呼吸」を試してみてください。息切れが強い、いつもと様子が違うと感じる場合は、担当の訪問看護師・主治医にご相談ください。
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参考文献一覧
- COPD診断と治療のためのガイドライン2026〔第7版〕(日本呼吸器学会、2026年)
- 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン(2021年改訂版)(日本循環器学会・日本心臓リハビリテーション学会)
- 介護保険制度について(厚生労働省)
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