
乳がんの手術・放射線・抗がん剤治療を終えて、あるいは治療しながら自宅で過ごすこの時期は、身体的なつらさに加えて、将来への不安・外見の変化・家族への遠慮など、さまざまな重なりの中に置かれます。
「リンパ浮腫が怖い」「腕が上がりにくくなった」「抗がん剤の副作用で動けない日がある」「気持ちが沈んでいてどこに相談すればいいかわからない」これらはすべて、乳がん術後の在宅でよくある声です。
この記事では、乳がん術後・治療中の在宅生活で起きやすい問題と、訪問看護を含めたサポートの活用法をOURの看護師が解説します。
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☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時
乳がん術後に在宅で起きやすい問題4つ
問題①:リンパ浮腫(腕・手のむくみ)
乳がん手術でリンパ節を郭清(取り除く)した場合、手術した側の腕・手・手指にリンパ浮腫(リンパ液の流れが障害されてむくむ状態)が起きることがあります。
リンパ浮腫は術後すぐに起きる場合もあれば、数年後に突然出ることもあります。一度起きると完全な治癒は難しいですが、適切なケア(弾性包帯・スリーブ・マッサージ)で悪化を防ぎ、生活を安定させることができます。
リンパ浮腫の初期サイン:
- 腕が「重い」「だるい」感じがする
- 指輪・時計がきつく感じる
- 左右の腕の太さに差が出てきた
これらを感じたら早めに主治医・訪問看護師に相談してください。早期介入ほど管理しやすくなります。
問題②:術後の肩・腕の可動域制限
乳房切除・リンパ節郭清の後は、肩が上がりにくい・腕が後ろに回しにくいという可動域制限が起きることがあります。「着替えが難しい」「シャンプーが自分でできない」という問題として現れます。
退院後のリハビリで多くの場合は改善しますが、適切なストレッチ・運動を続けることが重要です。訪問看護師・訪問リハビリスタッフが在宅での運動指導を行えます。
問題③:抗がん剤・ホルモン療法の副作用管理
乳がんの術後補助療法(抗がん剤・ホルモン剤・分子標的薬)の副作用は多岐にわたります。
| 治療 | 主な副作用 |
| 抗がん剤 | 脱毛・吐き気・倦怠感・末梢神経障害・骨髄抑制 |
| ホルモン療法 | 更年期症状(ほてり・関節痛・骨粗しょう症)・性機能への影響 |
| 分子標的薬 | 心毒性・皮膚炎・下痢 |
副作用が強い日には、家事・育児・仕事が難しくなります。「今日は動けない」という日のために、サポート体制を前もって作っておくことが重要です。
問題④:精神的な揺れ・不安感
「再発するかもしれない」「子供が成人するまで生きられるか」「外見が変わって夫に嫌われるかも」——術後の精神的なダメージは、時間が経っても波のように繰り返します。
OURが関わる乳がん術後の方からも、「体の不調より、気持ちの落ち込みがつらい」という声が多く聞かれます。気持ちの揺れは「病気が理由」ではなく、誰でも当然感じる反応です。一人で抱え込まないことが大切です。
リンパ浮腫の在宅ケア:セルフケアと専門ケアの組み合わせ
セルフケアでできること
- 弾性スリーブの着用:外出時・家事中は着用。入浴時・就寝時は外す
- リンパドレナージュ(マッサージ):術側の腋から外側に向かって手のひらでなでる
- 皮膚の保湿:乾燥した皮膚は感染リスクが高まる。ローションで保湿する
- 重いものを持たない:目安として3〜4kg以上は避ける
- 採血・注射・血圧測定を術側で行わない:主治医への申し出が必要
専門ケアが必要なとき
リンパ浮腫が急に悪化した・皮膚が赤く熱を持っている(丹毒・蜂窩織炎)場合は早急に受診が必要です。感染を起こすと急速に悪化します。
リンパ浮腫専門外来や弾性着衣の保険適用(医師の処方による)についても、主治医に確認してみましょう。
訪問看護でできる乳がん術後サポート
OURの訪問看護師は、乳がん術後の在宅療養において以下の支援を行います。
- 傷の状態確認・ドレーン管理(術直後)
- リンパ浮腫の評価・セルフケア指導
- 抗がん剤副作用のモニタリング(骨髄抑制・感染サイン)
- 内服管理(ホルモン剤・制吐剤など)
- 肩・腕のリハビリ指導(理学療法士との連携)
- 精神的サポート・家族への相談対応
よくある質問
乳がん術後に訪問看護は使えますか?医療保険?介護保険?
乳がんは医療保険での訪問看護が対象となります。主治医が訪問看護指示書を発行することで利用開始できます。介護認定を受けていない方でも利用可能です。副作用が強い治療中は「週3回以上」の訪問が認められる場合があります。
リンパ浮腫は一生続きますか?治りますか?
完全な治癒(リンパ管の再生)は現時点では難しいとされていますが、弾性スリーブ・リンパドレナージュ・適切なケアで悪化を防ぎ、日常生活に支障のない状態を維持できるケースは多くあります。早期発見・早期介入が最重要です。
抗がん剤治療中、一人で自宅にいるのが不安です
骨髄抑制の時期(白血球が最も低下する時期:投与後7〜14日前後)は発熱・感染リスクが高まり、医療的な観察が必要な時期です。この時期に訪問看護を入れることで、感染サインの早期発見と緊急対応ができます。「治療日程に合わせた訪問スケジュール」を主治医・訪問看護師と相談してみてください。
まとめ:術後・治療中の「一人でがんばる」をやめていい
- 乳がん術後のリンパ浮腫・可動域制限・副作用・精神的揺れは、どれも「よくあること」であり専門的サポートで管理できる
- リンパ浮腫は「重さ・だるさ」の段階で早期発見することが重要
- 弾性スリーブ・ドレナージュ・保湿のセルフケアを続けることで悪化を防げる
- 抗がん剤の骨髄抑制期には訪問看護を活用して安全を確保する
- 気持ちの揺れを一人で抱えず、訪問看護師・相談支援員に話すことが回復の助けになる
今日できる一歩:術側の腕と反対側の腕の太さ・重さを比べてみましょう。「少し違う気がする」と感じたら、それを主治医や訪問看護師に伝えることが最初の一歩です。
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参考文献一覧
- 乳癌診療ガイドライン2022年版(日本乳癌学会)https://jbcs.gr.jp/guideline/
- リンパ浮腫診療ガイドライン(日本リンパ浮腫学会)https://www.jslm.jp/
- がんのリハビリテーション診療ガイドライン第2版(日本リハビリテーション医学会)https://www.jarm.or.jp/