訪問看護の利用を検討しているけれど、「具体的に何をしてくれるの?」「どうやって使えばいいの?」と不安に感じていませんか?住み慣れた自宅で安心して過ごしたいと願う気持ちは、多くの方が抱えていることでしょう。この記事では、訪問看護で「できること」「できないこと」を初心者の方にも分かりやすく解説し利用方法まで、やさしくご紹介します。実際の利用者様の声や、実はよくある失敗談から学ぶポイントも交えながら、安心して訪問看護を始めるための道筋を一緒に見ていきましょう。

「訪問看護」とは?できること・できないことを解説
「訪問看護」とは、病気や障がいを抱えながらご自宅で療養する方が、その人らしい生活を送れるよう、看護師や理学療法士などがご自宅を訪問し、専門的なケアを提供するサービスです。2025年現在、医療技術の進歩や在宅医療へのシフトが進む中で、その役割はますます重要になっています。
訪問看護の対象となるのは、赤ちゃんから高齢の方まで年齢を問いません。医師が訪問看護の必要性を認めた方が利用できます。具体的には、病気やケガで療養中の方、認知症や精神疾患を抱えている方、医療的ケアが必要な子どもたち、そして、人生の最期を自宅で迎えたいと願う方々などが挙げられます。
訪問看護で「できること」
- 健康状態の観察と管理: 体温、血圧、脈拍などのバイタルチェック、全身状態の確認。
- 医療的処置: 医師の指示に基づき、点滴管理、傷の処置、人工呼吸器や胃ろう、気管切開の管理、吸引など。
- 日常生活のケア: 清潔ケア(入浴介助、清拭、排泄介助)、食事の介助、床ずれ予防と処置。
- リハビリテーション: 身体機能の維持・向上を目指した運動、関節可動域訓練、嚥下訓練など。
- 服薬管理と指導: 薬の飲み忘れ防止、副作用の観察、飲み方や保管方法のアドバイス。
- 精神的ケアと相談: 不安や悩みへの傾聴、精神的なサポート。ご家族への相談対応も含まれます。
- 緊急時の対応: 体調の急変時における初期対応や医療機関との連携。
- ご家族への支援: 介護方法のアドバイス、精神的な負担の軽減、介護用品の選び方など。
訪問看護で「できないこと」
一方で、訪問看護にはできないこともあります。誤解されやすい点を明確にしておきましょう。
- 家事代行: 掃除、洗濯、料理といった家事そのものは訪問看護のサービスには含まれません。ただし、身体介護の一環として、利用者の食事準備や片付けを一部手伝うことはあります。
- 金銭管理: 利用者の代わりに金銭の管理や買い物を行うことは、原則としてできません。
- 医療行為以外の専門外サービス: 美容サービスやペットの世話など、医療・介護の専門範囲外のサービスは提供できません。
- 緊急性の低い対応: 重大な体調不良や事故以外の、軽微な相談などで頻繁に駆けつけるといった対応は難しい場合が多いです。
訪問看護は、医療と介護の狭間で多岐にわたるサポートを提供しますが、その範囲には限界があります。何ができて、何ができないのかを事前に理解しておくことが、安心して利用するための第一歩と言えるでしょう。
訪問看護をどうやって使う?利用開始までのステップと具体的な流れ【実体験に基づくアドバイス】
訪問看護サービスを利用したいと思った時、まず何から始めれば良いのか迷いますよね。ここでは、利用開始までの具体的なステップと、スムーズに進めるための実体験に基づいたアドバイスをご紹介します。
ステップ1:まずは相談から
体調に不安がある、あるいは介護が必要と感じたら、まずはかかりつけ医や地域包括支援センター、または居宅介護支援事業所のケアマネージャーに相談しましょう。地域の社会福祉協議会なども相談窓口になります。ケアマネージャーは、訪問看護だけでなく、介護保険サービス全体の専門家ですので、あなたの状況に合わせた最適なサービスプランを一緒に考えてくれます。正直なところ、この最初の相談が一番重要です。ここで遠慮せず、困っていることを全て話すようにしてください。
ステップ2:主治医の指示書が必要
訪問看護を利用するには、医師による「訪問看護指示書」が必須です。この指示書には、病名、現在の症状、必要な医療処置、注意点などが詳しく記載されます。ケアマネージャーが主治医と連携し、指示書作成の手続きを進めてくれるのが一般的です。医師が指示書を出すことで、医療保険または介護保険が適用され、費用負担が軽減されます。
ステップ3:訪問看護ステーションの選定
ケアマネージャーが、あなたのニーズに合った複数の訪問看護ステーションを紹介してくれます。ここで大切なのは、いくつかの事業所の情報を比較検討することです。サービス内容、料金体系、緊急時の対応、スタッフの専門性や雰囲気などを確認しましょう。可能であれば、事前に事業所を見学したり、担当者と面談したりすることをおすすめします。実は、この段階で「なんとなく良さそう」と決めてしまうと、後でミスマッチを感じることもあるんです。具体的なケア内容や、気になる点を遠慮なく質問してみましょう。
ステップ4:契約とサービス開始
選んだ訪問看護ステーションと契約を締結し、いよいよサービスの利用開始です。契約時には、サービス内容、利用料金、緊急時の連絡方法など、重要な事項が説明されますので、不明な点がないか十分に確認してください。契約後、ケアプランに基づいて訪問看護師が定期的に自宅を訪問し、必要なケアを提供します。サービス開始後も、ケアマネージャーや訪問看護師と密に連携を取りながら、困りごとがあればその都度相談し、状況に合わせてケアプランを見直していくのが一般的です。

訪問看護を利用するメリット・デメリット【利用者の生の声とエピソード】
訪問看護は、自宅での療養を支える強力な味方ですが、当然ながらメリットとデメリットの両面があります。ここでは、利用者の生の声や具体的なエピソードを交えながら、それぞれの側面を見ていきましょう。
◯ 訪問看護を利用するメリット
- 住み慣れた自宅での安心感: 「病院のベッドではなく、自分の家で過ごせるのが何より嬉しいです。使い慣れた食器で食事をしたり、愛着のある家具に囲まれたりするだけで、心が落ち着きます」(70代男性・脳梗塞後遺症)。住み慣れた環境は、精神的な安定に大きく貢献します。
- 専門的な医療ケア: 「退院後も人工肛門の管理が必要で不安でしたが、毎日看護師さんが来てくれて、処置だけでなく、自分でもできるように指導してくれたおかげで、自信がつきました」(60代女性・がん)。高度な医療処置が必要な場合でも、専門職が自宅で対応してくれるため安心です。
- ご家族の負担軽減: 「認知症の母を一人で見ているのですが、訪問看護師さんが週に数回入浴介助をしてくれるので、その間は自分の時間を持てて、とても助かっています。精神的な相談にも乗ってくれて、本当に心の支えです」(50代女性・介護者)。介護者の身体的・精神的負担を軽減し、ゆとりを生み出します。
- きめ細やかな個別ケア: 「私の場合、日によって体調の波が激しいのですが、担当の看護師さんは毎回じっくり話を聞いて、その日の状態に合わせてケアの内容を調整してくれます。まるで家族のように親身になってくれるんです」(80代女性・慢性疾患)。病院では難しい、個人の生活スタイルや体調に合わせた柔軟なケアが期待できます。
◯ 訪問看護を利用するデメリット
- 費用負担: 「医療保険が適用されるので助かるのですが、利用回数が増えるとやはり自己負担額が気になります。自費サービスも利用したいけど、そこまで手が回らないのが正直なところです」(70代男性・介護者)。利用頻度やサービス内容によっては、費用負担が大きくなる場合があります。
- サービス提供時間の制約: 「体調が悪くなった時にすぐに来てもらいたいのですが、訪問時間は事前に決まっているので、その場ですぐに対応してもらえないこともあります。緊急時対応の範囲も事業者によって違うので、事前にしっかり確認すべきだと感じました」(60代女性・慢性疾患)。24時間対応を謳っていても、すぐに駆けつけられないケースや、対応範囲に限りがあることもあります。
- 事業者とのミスマッチ: 「担当の看護師さんとの相性が合わず、正直ケアを受けにくいと感じたことがあります。言い出しにくくて我慢していましたが、もっと早く事業所に相談すべきでした」(80代女性・独居)。スタッフとの人間関係は非常に重要です。相性が合わない場合は、早めに相談し、交代や事業所の変更を検討することも大切です。
これらの声からも分かるように、訪問看護は多くのメリットをもたらしますが、利用する上での注意点も存在します。メリットとデメリットを理解し、ご自身の状況に合わせて賢く活用することが重要です。
訪問看護ステーションの選び方とよくある失敗例・対策方法
数ある訪問看護ステーションの中から、自分やご家族に最適な場所を選ぶのは一見難しそうに感じるかもしれません。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、後悔のない選択ができます。2025年現在、訪問看護のニーズは多様化しており、賢い選び方がこれまで以上に重要です。
最適なステーションを選ぶためのチェックリスト
- 専門性: ご自身の疾患や状態(がん、精神疾患、小児、終末期など)に特化した専門性を持っているか。
- 対応時間と緊急体制: サービス提供時間外や夜間・休日の緊急時訪問に対応しているか。24時間連絡体制があるか。
- スタッフの質と人数: 経験豊富なスタッフが揃っているか。スタッフの入れ替わりが激しくないか。また、十分な人数のスタッフがいて、安定したサービス提供が見込めるか。
- 料金体系: 医療保険・介護保険の自己負担額以外に、自費サービスや交通費など、追加費用が発生しないか明確か。
- 地域連携: 医師やケアマネージャー、他の介護サービス事業者との連携がスムーズか。
- 情報共有と相談体制: 利用者やご家族との情報共有が密に行われ、安心して相談できる雰囲気があるか。
- 事業所の雰囲気: 実際に訪問看護ステーションを訪れたり、スタッフと面談したりして、雰囲気や対応が良いか。
よくある失敗例と対策方法
- 失敗例1:情報不足でミスマッチ
- 状況: ケアマネージャーに紹介された一つのステーションの情報を鵜呑みにして契約してしまい、後になってサービス内容やスタッフの質に不満を感じた。
- 対策: 複数のステーションから情報を取り寄せ、料金体系、緊急時対応、専門性などを比較検討しましょう。可能であれば、ステーションの担当者との面談を依頼し、疑問点はその場で解消しておくのが賢明です。実は、私自身も以前、家族のために訪問看護ステーションを探した際、情報収集不足で最初の選択がミスマッチだった経験があります。その時は、緊急時の連絡体制や、週末の対応について詳しく確認しなかったため、実際に困ってしまいました。この経験から、事前の徹底した情報収集がいかに大切かを痛感しました。
- 失敗例2:緊急時に対応が遅れた
- 状況: 夜間に急に体調が悪くなった際、契約していたステーションが24時間対応を謳っていたものの、連絡がつかなかったり、すぐには駆けつけてもらえなかったりした。
- 対策: 契約時に、具体的な緊急時対応の手順、連絡方法、駆けつけまでの目安時間などを書面でしっかり確認しましょう。24時間対応は、「連絡が取れる」という意味合いが強く、「いつでも駆けつけられる」とは限らないケースもあるので、その点も明確にしておくべきです。
- 失敗例3:担当スタッフとの相性が合わない
- 状況: 担当になった看護師や療法士と、性格やケアの進め方で合わない部分があり、ストレスを感じてしまった。
- 対策: 人間同士なので相性があるのは当然です。もし合わないと感じたら、遠慮なくケアマネージャーや事業所の責任者に相談しましょう。担当者の交代や、場合によっては事業所の変更も可能です。我慢し続けると、心身の負担が大きくなってしまいます。
これらの失敗例と対策を参考に、あなたにとって最適な訪問看護ステーションを見つけてください。
訪問看護のトレンドとサービスの比較:あなたに合ったケアを見つける
日本の訪問看護業界は、多様化するニーズに応えるべく、様々なトレンドとサービスの進化を見せています。これらの情報を知ることで、ご自身に最も適したケアを見つけるヒントになるでしょう。
訪問看護トレンド
- 精神科訪問看護のニーズ拡大: 社会全体のストレス増大や精神疾患への理解が進む中で、精神科に特化した訪問看護の需要が高まっています。精神科看護師が、自宅での服薬管理、症状の観察、生活指導、社会復帰支援などを行い、安定した生活をサポートします。
- 医療的ケア児への支援強化: 重度の障がいを持つ医療的ケア児が自宅で過ごせるよう、人工呼吸器や胃ろうなどの医療的ケアを専門に行う訪問看護ステーションが増えています。多職種連携を強化し、地域全体で子どもと家族を支える動きが加速しています。
- 看取りケアの充実: 病院ではなく住み慣れた自宅で最期を迎えたいと願う方が増え、終末期医療や看取りケアに特化した訪問看護サービスが注目されています。痛みや苦痛の緩和、ご家族への精神的サポートなど、質の高いケアが提供されています。
- ICT(情報通信技術)の活用: オンラインでの健康相談、遠隔モニタリングシステム、スマートフォンアプリを通じた情報共有など、ICTを活用した効率的かつ質の高いサービス提供が進んでいます。これにより、利用者と医療従事者のコミュニケーションが円滑になり、より迅速な対応が可能になっています。
あなたに合ったケアを見つけるための比較ポイント
様々な訪問看護サービスの中から、ご自身に最適なケアを見つけるためには、以下の視点を持って比較検討することが大切です。
- ニーズとの合致: 医療的ケアが中心なのか、リハビリが中心なのか、精神的なサポートが重要なのか、看取りを希望しているのかなど、ご自身の最も優先したいニーズを明確にしましょう。その上で、そのニーズに特化した専門性を持つステーションを選ぶと良いでしょう。
- 事業所の強み: 各ステーションがどのような分野に強みを持っているか(例:がん看護、小児看護、認知症ケア、リハビリテーションなど)を確認しましょう。事業所のウェブサイトやパンフレット、ケアマネージャーからの情報が参考になります。
- 地域での評判と実績: 同じ地域で利用している方の口コミや、ケアマネージャーからの評判も重要な情報源です。長年の実績があるか、地域に根差した活動をしているかなども確認ポイントです。
- 提供体制の柔軟性: ご自身のライフスタイルや、急な体調変化に対応できる柔軟なサービス提供体制があるかを確認しましょう。訪問時間帯の融通が利くか、緊急時対応がどの程度手厚いかなども確認が必要です。
特定のランキング形式で「おすすめ」を示すのではなく、これらの比較ポイントを参考に、ご自身やご家族にとって最適な「おすすめ」を見つける手助けになれば幸いです。
FAQ
- Q: 訪問看護を始めるのに必要な費用は?
A: 訪問看護の費用は、医療保険または介護保険が適用されるかによって大きく異なります。適用される場合、自己負担割合(1割~3割)に応じて費用が決まります。適用外のサービスや自費の訪問看護については別途費用が発生することがあるため、事前に担当のケアマネージャーや訪問看護ステーションに具体的な費用を確認することが大切です。
- Q: 訪問看護のデメリットや注意点は何ですか?
A: 主なデメリットとしては、サービス提供時間の制約(1回あたりの訪問時間や回数)、緊急時対応の範囲(24時間対応でもすぐに駆けつけられない場合がある)、事業者によって提供されるケアの質や専門性の違いが挙げられます。また、利用を始める際は、ご自身の具体的なニーズと事業所のサービス内容が合致しているか、費用体系は明確かなどをしっかり確認することが重要です。
- Q: 初心者が訪問看護で失敗しないコツは?
A: 失敗しないためには、まずご自身の具体的なニーズを明確にすること、そして複数の訪問看護ステーションの情報を集め、費用、サービス内容、緊急時対応、スタッフの専門性などを比較検討することが大切です。ケアマネージャーと密に連携し、疑問や不安があれば遠慮なく質問しましょう。また、可能であれば事前に相談や見学を行い、スタッフの対応や施設の雰囲気を直接確認するのも良い方法です。
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