
「訪問看護を始めたいのですが、指示書はどうすればいいですか?」「特別訪問看護指示書はいつ発行してもらえますか?」「指示書に有効期限があることを知らなかった」。医師・ケアマネジャー・医療機関事務担当者・ご家族から、指示書に関する問い合わせはとても多くいただきます。
訪問看護の指示書は、看護師が医療処置を安全に行うための法的根拠です。種類を誤ったり、記載漏れがあったり、有効期限が切れたりすると、サービスの継続や保険請求に支障が出ます。この記事では、訪問看護で使う4種類の指示書について、種類・記載内容・有効期限・交付フロー・よくある疑問まで、宮崎市OUR訪問看護ステーションが現場の視点から正直に解説します。
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訪問看護指示書とは?:なぜすべての訪問看護に必要なのか
訪問看護指示書とは、主治医(保険医)が訪問看護ステーションに対して発行する「訪問看護の実施を指示する公式文書」です。
訪問看護は医療行為を含む専門的なサービスです。看護師が医師の指示なく医療処置を行うことは法律上認められていないため、医療保険・介護保険を問わず、訪問看護を利用するすべての方に主治医の指示書が必要です。
根拠となる法令・省令:
- 医療保険の場合:健康保険法に基づく訪問看護療養費の算定要件として指示書が必要
- 介護保険の場合:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第69条「主治の医師との関係」により、主治医から文書(指示書)で指示を受け、その指示に基づいて訪問看護を提供することが義務付けられている
訪問看護ステーションは指示書を受け取ってはじめてサービスを開始でき、発行された指示書は5年間の保管義務があります。
4種類の指示書:用途・有効期間・発行者の違い
訪問看護で使用する指示書は4種類あり、患者の状態と提供するサービスによって使い分けます。
| 指示書の種類 | 発行者 | 有効期間 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 訪問看護指示書(基本) | 主治医 | 最長6ヶ月 | すべての訪問看護の基本 |
| 特別訪問看護指示書 | 主治医 | 最長14日(月1回原則) | 急性増悪・退院直後・終末期 |
| 精神科訪問看護指示書 | 精神科担当医師 | 最長6ヶ月 | 精神疾患のある方への訪問看護 |
| 在宅患者訪問点滴注射指示書 | 主治医 | 最長7日 | 週3日以上の点滴注射が必要な方 |
訪問看護指示書(基本)
すべての訪問看護の起点となる指示書です。医療保険・介護保険を問わず、訪問看護を利用するすべての方にこの指示書が必要です。
- 有効期間:最長6ヶ月(医師が期間を指定。3ヶ月または6ヶ月ごとに更新するケースが多い)
- 発行者:主治医(保険医)
- 費用:医師が「訪問看護指示料 300点(3,000円相当)」を1月1回を限度に算定できます。患者自己負担は保険の種別・割合により1〜3割
特別訪問看護指示書
急性増悪・退院直後・終末期など、週4日以上・毎日の訪問が必要な状態のとき、基本の指示書に追加して発行される指示書です。
- 有効期間:最長14日以内
- 発行頻度:原則として月1回まで。ただし以下の場合は月2回まで発行可能
– 気管カニューレを使用している状態 – 真皮を超える褥瘡(DESIGN-R分類で深達度D3以上に相当)がある状態
- 費用:特別訪問看護指示加算として 100点を追加算定可能
詳細はこちら:特別訪問看護指示書の発行条件・記載内容・ケアマネへの伝え方については、当ステーションの別記事「特別訪問看護指示書とは?発行条件・有効期間・週3回以上を可能にする仕組みをわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
精神科訪問看護指示書
統合失調症・双極性障害・重度のうつ病など精神疾患のある患者に対して、精神科専門の訪問看護を提供するための専用指示書です。
- 有効期間:最長6ヶ月
- 発行者:精神科(または心療内科)を担当する医師
- この指示書で算定できるもの:「精神科訪問看護基本療養費」(精神科専門の加算が付く)
- 注意:認知症を主たる傷病名とする場合は、原則としてこの指示書の対象外です。通常の訪問看護指示書を使用します
在宅患者訪問点滴注射指示書
在宅で週3日以上の点滴注射が必要な患者に対して、点滴の内容・量・実施方法を指示する書類です。
- 有効期間:最長7日間(週をまたぐ場合は都度発行が原則)
- 発行者:主治医
- 使い方:基本の訪問看護指示書とセットで使用します。この指示書単独では使えません
- 週3日未満の点滴指示は、基本の訪問看護指示書の「留意事項及び指示事項」欄に記載することで対応可能です
訪問看護指示書(基本)の記載内容と確認ポイント
厚生労働省が定める訪問看護指示書の標準様式には、以下の項目が含まれます。記載漏れや不備があると、訪問看護ステーションがサービスを開始・継続できなくなることがあります。
標準様式に記載される主な12項目
- 患者氏名・生年月日・住所
- 主たる傷病名(複数記載可。訪問看護の対象となるすべての傷病を記載)
- 現在の病状・治療状態(特記すべき病状・経過)
- 治療中の薬剤の用量・用法(訪問看護師が管理・確認する薬剤)
- 日常生活自立度(障害高齢者の日常生活自立度ランク・認知症高齢者の日常生活自立度)
- 褥瘡の深さ(DESIGN-R分類で記載)
- 装着・使用医療機器等(人工呼吸器・在宅酸素・CVポート・留置カテーテル等)
- 訪問看護指示期間(開始日〜終了日を明記)
- 疾患・状態(医療保険で週4日以上の訪問を可能にする別表7・別表8の該当疾患・状態の有無)
- 留意事項および指示事項(処置内容・リハビリ指示・感染予防・緊急時対応等の具体的内容)
- 在宅患者訪問点滴注射指示(週3日以上の点滴が必要な場合のみ記載)
- 緊急時の連絡先・医師の所属・氏名・押印
記載漏れ・不備が起きやすい箇所
現場でよく見られる記載不備をまとめます。これらの不備は受け取り後の訪問看護ステーションから問い合わせが生じ、開始が遅れる原因になります。
| 不備の種類 | 具体的な内容 | 対処のポイント |
|---|---|---|
| 指示期間の記載漏れ | 開始日または終了日が空欄 | 訪問看護ステーションへの連絡→FAXで修正版を再送 |
| 傷病名の不足 | 主傷病以外(高血圧・糖尿病・心不全等)が記載されていない | 訪問看護で管理する処置・薬剤に関係するすべての傷病名を記載 |
| 留意事項が空欄 | 処置内容・リハビリ内容が未記載 | 訪問看護師に「何をしてほしいか」を具体的に記載(最も多い不備) |
| 医療機器の記載なし | 人工呼吸器・CVポート等が未記載 | 管理・処置が必要なすべての医療機器を記載 |
| 別表7疾患の記載なし | 医療保険での週4日以上訪問が必要なのに疾患・状態欄が空 | 医療保険適用の根拠となるため必ず確認・記載 |
| 押印漏れ・署名のみ | 署名はあるが印鑑がない | 標準様式では押印(または署名と押印の両方)が必要 |
現場から:「傷病名は記載されているが留意事項欄が空欄」というケースが最もよく見られます。留意事項欄は訪問看護師が「何を・どのように行うか」の根拠になるため、具体的に記載していただくよう医師にお伝えください。
精神科・点滴注射指示書の追加注意点
精神科訪問看護指示書では、傷病名欄に「精神疾患名」が明記されている必要があります。「神経症」「不眠症」だけでは精神科訪問看護として算定できない場合があるため、診断名を正確に記載します。
在宅患者訪問点滴注射指示書では、点滴薬剤名・規格・用量・投与方法・投与日数を具体的に記載します。「適宜」「指示通り」では不備とみなされる場合があります。
指示書の交付フローと有効期限の管理
指示書の発行・更新フロー
- 訪問看護の利用が決まる(ケアマネジャー・退院支援室・利用者家族から訪問看護ステーションへ連絡)
- 訪問看護ステーションから主治医へ指示書の交付を依頼(依頼書・FAX・電話。標準様式の空欄書式を同封することが多い)
- 主治医が指示書を記載・発行(FAXまたは原本を訪問看護ステーションへ送付)
- 訪問看護ステーションが内容を確認・受理(不備があれば医療機関へ問い合わせ・修正依頼)
- 訪問看護の開始
有効期限切れを防ぐ管理のポイント
有効期限が切れると、その期間中のサービス提供が保険請求できなくなります。特に長期利用の方では「ずっと継続しているから大丈夫」と更新が見落とされやすいため注意が必要です。
- 更新依頼のタイミング:有効期限の2週間前を目安に、訪問看護ステーションから医療機関へ依頼するのが標準的な運用です
- 台帳管理:訪問看護ステーション側で有効期限を一覧化し、期限前にアラートをかける管理を行っています
- ケアマネジャーへの共有:更新のタイミングを介護保険のサービス担当者会議等で共有しておくと連携がスムーズです
FAXや電子対応について
- FAXでの受け取りは広く行われています。FAX受信後、後日原本を郵送または直接受け取るケースが多いです
- 2024年現在、訪問看護指示書の完全電子化(電子署名付き文書のみでの保管)は標準的ではありません。医療機関との運用ルールに従って原本管理を行ってください
- FAXで受け取った指示書のコピーを利用する場合でも、原本との照合・保管が必要です
ケアマネジャー・医療機関事務・ご家族からよく聞かれること
ケアマネジャーへ
指示書の依頼は訪問看護ステーションが行うのが基本です。 ケアマネジャーは訪問看護の導入調整を行いますが、指示書の交付依頼(医師へのFAX・電話)は訪問看護ステーションが直接行います。ケアマネジャーが動いていただくよりも、ステーションから医師へ直接連絡するほうがスムーズです。
ただし、主治医との関係性・情報共有はケアマネジャーの連携力が大きく影響します。「指示書がなかなか出てこない」場合は、ケアマネジャーを通じて主治医へ状況を伝えていただくことが助けになる場合があります。
また、介護保険の訪問看護では、指示書は主治医意見書とは別の文書です。主治医意見書があっても指示書がなければ訪問看護は開始できません。この点は混同されやすいため、ご注意ください。
医療機関事務担当者へ
訪問看護指示料の算定は、1回につき300点(3,000円相当)を1月1回を限度に算定できます。特別訪問看護指示書には特別訪問看護指示加算100点を加算できます(令和6年度診療報酬改定後の点数は最新の告示・通知でご確認ください)。
標準様式以外の書式については、定められた記載項目が満たされていれば必ずしも標準様式でなくても差し支えありませんが、訪問看護ステーション側の保険請求に支障が出ないよう、標準様式に準じた書式を推奨します。
指示書の交付依頼が重なる時期(退院が集中する時期・月初など)に複数のステーションからFAXが届く場合、処理漏れや混在が起きやすくなります。ステーション名と患者名を記録に残す運用を整えると連携トラブルを防げます。
利用者・ご家族へ
指示書の費用(訪問看護指示料)は医療保険が適用されます。患者自己負担は1〜3割です。別途費用が発生するものではありません。
「主治医に指示書を頼みにくい」とおっしゃるご家族もいらっしゃいますが、訪問看護を開始・継続するための正式な手続きですので、遠慮なく主治医に伝えてください。「訪問看護ステーションから指示書の用紙が届く予定です」とお伝えいただくだけで構いません。
もし「指示書が必要なことを主治医が知らない」「手続きがわからない」という場合は、訪問看護ステーション(OUR)に連絡いただければ手順をご案内します。
よくある質問
訪問看護指示書は医師以外が発行できますか?
保険診療上、訪問看護指示書を発行できるのは保険医(医師)のみです。歯科医師は限定的な条件下で例外があります。柔道整復師・鍼灸師・看護師・ケアマネジャーは発行できません。指示書がない状態でサービスを提供した場合、保険請求ができなくなります。
有効期間中に病状が大きく変わった場合はどうなりますか?
有効期間内であっても、急性増悪・入院・転院・主たる傷病名の変更が生じた場合は新たな指示書の発行が必要です。急性増悪の場合は「特別訪問看護指示書」の発行も検討します。入院中は指示書の効力が一時停止するため、退院時には新たな指示書(または再確認の指示書)を取得します。
複数の訪問看護ステーションを利用する場合、指示書は何枚必要ですか?
1枚の訪問看護指示書をコピーして複数のステーションが保持することが可能です。 ただし保険上の利用制限があります。医療保険の訪問看護は原則として1か所の訪問看護ステーションのみ(難病等の特定条件下では複数可)、介護保険では複数ステーションの同時利用が可能です。詳細は訪問看護ステーションまたはケアマネジャーにご確認ください。
退院当日から訪問看護を始めるには指示書をどう準備しますか?
退院日当日からの開始には、入院先の主治医に退院前に指示書を作成してもらう必要があります。病院の退院支援室・医療ソーシャルワーカー(MSW)を通じて、退院前に訪問看護ステーションと主治医をつなぐ「退院前カンファレンス」を設定するとスムーズです。当日の朝FAXで指示書を受け取り、午後から訪問を開始するケースも実際にあります。早めのご連絡をお願いします。
主治医が遠方で指示書の取得が難しい場合はどうすればいいですか?
郵送・FAX・電子データ(記録保管条件付き)での受け取りが可能なため、遠方の主治医でも指示書の発行は可能です。ただし病状が急変した際の対応や往診の調整を考えると、近隣の在宅対応医(在宅療養支援診療所等)への主治医変更・併診を検討する価値があります。宮崎市内の在宅診療医との連携についてはOURにご相談ください。
認知症の方に精神科訪問看護指示書を使えますか?
認知症を主たる傷病名とする場合は、原則として精神科訪問看護指示書の対象外です。通常の訪問看護指示書(基本)を使用します。ただし、認知症に加えて統合失調症・双極性障害など別の精神疾患がある場合や、精神科・心療内科が主治医として診療している場合は、担当医師に確認が必要です。
まとめ
- 訪問看護を開始するには主治医からの訪問看護指示書(基本)が必ず必要
- 4種類(基本・特別・精神科・点滴注射指示書)を状況に応じて使い分ける
- 有効期限(最長6ヶ月/14日/7日)の管理は訪問看護ステーションが行うが、医療機関・ケアマネとの連携が不可欠
- 記載漏れで多いのは「指示期間」「留意事項」「別表7記載」の3点
- 介護保険の訪問看護でも指示書は必須(主治医意見書とは別の文書)
- 指示書の手続きで迷ったときは訪問看護ステーションに相談するのが最短
指示書は訪問看護の「法的根拠」であり「医療安全の起点」です。主治医・ケアマネジャー・医療機関事務・訪問看護ステーションが正確な情報を共有し、スムーズに連携することが利用者さんの安心につながります。ご不明な点はいつでもOUR訪問看護ステーションにご相談ください。
この記事を監修した人
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
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