
「物忘れがひどくなった気がするのに、本人が『病院には行かない』と言って聞かない」「要介護認定の話をしただけで怒り出してしまう」。認知症が疑われる家族への対応で、こうした”動かせなさ”に悩むご家族は少なくありません。
ケアマネジャーもついていない、病院にもかかっていない。そんな「どこの制度にも乗っていない」段階だからこそ使えるのが、認知症初期集中支援チームです。この記事では、このチームの対象者・支援内容・支援期間と、宮崎市での実際の相談先を、OUR訪問看護ステーションの視点も交えて解説します。
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認知症初期集中支援チームとは。受診・介護サービスにつながっていない人を訪問支援する専門職チーム
認知症初期集中支援チームとは、認知症が疑われるのに医療機関を受診していない人や、介護サービスの利用を拒否・中断している人の自宅に、医療・介護の専門職が訪問して早期の支援につなげる公的な仕組みです。
介護保険法に基づく地域支援事業の一つで、全国の市区町村に設置が進められています。厚生労働省は、認知症になっても本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、早期診断・早期対応を行う体制としてこのチームを位置づけています(認知症初期集中支援チームについて(厚生労働省老健局))。
2024年1月には「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」(令和5年法律第65号)も施行され、認知症の人が尊厳を保持しながら希望を持って暮らせる社会づくりが、国の方針として明確に位置づけられました。初期集中支援チームは、その理念を「まだ誰にもつながっていない人」に届けるための具体的な窓口の一つです。
チームが対象とする3つのケース
認知症初期集中支援チームが訪問の対象とするのは、おおむね40歳以上で在宅生活をしている方のうち、次のいずれかに当てはまるケースです。
- 認知症について医療機関を受診していない、または受診を中断している
- 介護保険サービスなど各種サービスの利用を拒否している、または利用を中断している
- その他、本人の状態への対応にご家族が悩んでいる
認知症の診断は何科?受診の流れ・検査・診断後にすべきことを解説でも触れていますが、「どこに相談すればいいかわからない」という段階であれば、まずは受診の相談から始められます。初期集中支援チームは、その一歩さえ踏み出せない「受診・サービス拒否」の状況にこそ力を発揮する仕組みです。
認知症初期集中支援チームが行う支援内容。訪問・受診同行・サービス調整・家族支援の4つ
認知症初期集中支援チームの支援内容は、受診への同行、サービス利用の調整、家族への相談支援、生活環境の改善提案の4つに大きく分けられます。
| 支援内容 | 具体的に行うこと |
| アセスメント(訪問評価) | 本人の生活状況・認知機能・身体状況・家族関係を自宅訪問で確認する |
| 医療機関受診へのつなぎ | 必要に応じて受診に同行し、専門医療機関(認知症疾患医療センター等)への紹介も行う |
| サービス利用の促しと調整 | 介護保険の申請、デイサービス・訪問看護などの利用に向けた調整を行う |
| 家族への相談支援 | 対応に悩む家族の話を聞き、心理的サポートと今後の見通しを一緒に整理する |
| 生活環境改善の提案 | 転倒・火の元・金銭管理など、生活上のリスクに応じた環境調整を提案する |
チームは医療・介護の専門職で構成されており、必要に応じて認知症に詳しい医師(認知症サポート医)の助言を受けながら、チーム員会議で方針を検討します。「どう対応すべきかわからない」状態を、専門職が一緒に整理してくれる点が、家族だけで抱え込む状況との大きな違いです。
支援の流れ。相談からチーム員会議、支援終了まで最長6ヵ月
認知症初期集中支援チームの支援は、相談受付からアセスメント・チーム員会議・初期集中支援の実施という流れで進み、おおむね6ヵ月以内を目安に行われます。
- 相談を受け付ける:家族・地域包括支援センター・ケアマネジャー・医療機関・民生委員などから相談が入ります
- 初回訪問・アセスメント:チーム員が自宅を訪問し、本人・家族の状況を確認します
- チーム員会議の開催:医療・介護の専門職と、必要に応じて認知症サポート医を交えて支援方針を検討します
- 初期集中支援の実施:受診同行・サービス調整・家族支援などを、おおむね6ヵ月を目安に集中的に行います
- 医療・介護サービスへの引き継ぎ:受診や介護サービスにつながった段階で、通常のケアマネジャー・地域包括支援センターの体制に支援を引き継ぎます
支援が終了した後も、状態が変化した場合には再度相談することができます。「一度きりで終わり」ではなく、必要なときにまた頼れる仕組みとして設計されています。
宮崎市での相談先。地域包括支援センターを通じて野崎病院のチームにつながる
宮崎市では、認知症初期集中支援チームは一般財団法人弘潤会・野崎病院内に設置されており、平成28年度から宮崎市の委託を受けて運営されています(宮崎市認知症初期集中支援チーム(一般財団法人弘潤会))。
直接チームに連絡することもできますが、基本的な相談の入口は、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターです。宮崎市内には19か所の地域包括支援センターが設置されており、居住地区によって担当が決まっています(地域包括支援センター(宮崎市))。担当がわからない場合は、宮崎市地域包括ケア推進課(0985-21-1773)に問い合わせると案内してもらえます。
宮崎市の地域包括支援センターとは?訪問看護につなぐ相談窓口の使い方で解説しているとおり、地域包括支援センターは要介護認定の有無を問わず相談できる総合窓口です。「認知症かもしれないが、本人が病院を嫌がる」という段階で、まず電話してよい場所だと考えてください。
なお、宮崎市には認知症の方やご家族を見守る「認知症地域支援推進員」が8名配置されており、地域包括支援センター等と協力して相談・支援にあたっています(認知症地域支援(宮崎市))。初期集中支援チームと役割が重なる部分もあるため、どちらに相談すればよいか迷う場合も、まずは地域包括支援センターに聞けば整理してもらえます。
地域包括支援センター・ケアマネジャー・初期集中支援チームの違い
| 地域包括支援センター | 認知症初期集中支援チーム | ケアマネジャー | |
| 対象 | 65歳以上の高齢者全般 | 受診・サービス利用につながっていない人(40歳以上) | 要介護1〜5の認定を受けた人 |
| 役割 | 総合相談・ケアマネ支援・権利擁護 | 受診・サービスへの早期のつなぎ | ケアプラン作成・サービス調整 |
| 利用のきっかけ | 要介護認定の有無を問わず | 受診拒否・サービス拒否・家族の困りごと | 要介護認定後 |
| 期間 | 継続的 | 最長6ヵ月(集中的) | 継続的 |
認知症初期集中支援チームは、ほかの制度の「手前」にあるのではなく、他の制度にまだつながれていない人を一時的に専門職がサポートし、つなぐ役割を担っています。
OURが感じる、受診・サービス拒否が起きやすい場面と訪問看護の役割
OUR訪問看護ステーションでも、ケアマネジャーや地域包括支援センターを通じて、初期集中支援チームが関わった後にご依頼をいただくケースがあります。現場で感じるのは、本人が拒否するのは「認知症であること」そのものより、「急に知らない人に生活を管理されること」への抵抗感であることが多いという点です。
いきなり介護サービスを提案するのではなく、まずは顔の見える関係を作りながら少しずつ関わりを広げていく進め方が、結果的に本人の受け入れやすさにつながります。初期集中支援チームの訪問も、こうした「段階を踏む」支援のひとつです。訪問看護が介入する段階になったときも、同じ考え方で、医療的な処置だけでなく本人のペースに合わせた関わりを大切にしています。
認知症介護で「もう限界」と感じたとき。家族が知っておくべき相談先と訪問看護の役割では、家族が疲弊する前にできる具体的な相談先を整理しています。本人の受診拒否に悩んでいる段階は、家族にとっても孤独で疲弊しやすい時期です。一人で抱え込まず、早い段階で専門職につながることをおすすめします。
こんな状況の方は、まず地域包括支援センターへのご相談をおすすめします。
- 物忘れが心配なのに、本人が受診を拒否している
- 要介護認定やデイサービスの話をすると怒ってしまう
- 一人暮らしで、生活上の心配事(火の元・金銭管理など)が増えてきた
- ケアマネジャーも訪問看護も、まだどこにもつながっていない
地域包括支援センターや初期集中支援チームと連携した後、実際の在宅療養や医療的なケアが必要になった際には、OUR訪問看護ステーションにもご相談ください。
FAQ
Q1. 認知症初期集中支援チームは誰が利用できますか?
在宅で生活している40歳以上の方で、認知症が疑われるが医療機関を受診していない、または介護サービスの利用を拒否・中断している、あるいは家族が対応に悩んでいるケースが対象です。要介護認定の有無は問いません。すでに診断を受けている方でも、サービスにつながっていない場合は対象になります。
Q2. 費用はかかりますか?
チームが訪問して相談・調整を行うこと自体に費用はかかりません。ただし、実際に医療機関を受診した場合の診察費や、介護保険サービスを利用した際の自己負担(原則1〜3割)は別途かかります。
Q3. 本人が「受診したくない」「サービスは使わない」と言っていても利用できますか?
はい。本人が受診やサービス利用を拒否している状況こそ、このチームが想定している典型的なケースです。まずは家族だけで相談することもできます。チームが本人との関わり方を一緒に考えてくれます。
Q4. 要介護認定を受けていないと相談できませんか?
要介護認定は不要です。むしろ、認定を受ける前の「まだどの制度にもつながっていない」段階こそ、このチームが力を発揮する場面です。
Q5. 相談するとどのくらいの期間、支援を受けられますか?
アセスメントからチーム員会議、支援の実施まで、おおむね6ヵ月を目安に集中的な支援が行われます。期間内に受診や介護サービスの利用につながった場合は、その後は通常のケアマネジャーや地域包括支援センターの体制に引き継がれます。支援終了後に状態が変化した場合は、再度相談することもできます。
Q6. 認知症初期集中支援チームと地域包括支援センターは何が違いますか?
地域包括支援センターは65歳以上の高齢者全般を対象にした総合相談窓口で、継続的に関わります。認知症初期集中支援チームは、受診やサービス利用につながっていない人に対象を絞り、最長6ヵ月の集中的な支援でその「つながっていない」状態を解消することに特化しています。多くの地域で、地域包括支援センターが相談の入口となり、必要に応じて初期集中支援チームにつなぐ形で運用されています。
Q7. 訪問看護とはどう関係しますか?
認知症初期集中支援チームが受診やサービスへのつなぎを行った後、在宅での医療的なケアや服薬管理、ご家族の負担軽減が必要な場合に、訪問看護の利用が検討されることがあります。OUR訪問看護ステーションも、地域包括支援センターやケアマネジャーと連携しながら、本人のペースに合わせた関わりを行っています。
Q8. 宮崎市ではどこに連絡すればいいですか?
お住まいの地域を担当する地域包括支援センターへの相談が基本の窓口です。宮崎市内に19か所あり、居住地区によって担当が決まっています。担当がわからない場合は、宮崎市地域包括ケア推進課(0985-21-1773)に問い合わせると案内してもらえます。
まとめ:「受診・サービス拒否」で止まっている段階こそ、相談してよいタイミング
- 認知症初期集中支援チームは、受診やサービス利用につながっていない人を専門職が訪問支援する公的な仕組み
- 対象は40歳以上で在宅生活をしている人。要介護認定の有無は問わない
- 支援内容は受診同行・サービス調整・家族支援・環境改善提案の4つ。おおむね6ヵ月を目安に集中的に行われる
- 宮崎市では野崎病院内にチームが設置されており、お住まいの地域の地域包括支援センターが相談の入口になる
- 「本人が拒否している」状態は珍しいことではなく、このチームが想定している典型的な相談内容そのもの
今日できる一歩:お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに、「認知症かもしれないが、本人が受診やサービスを拒否している」とそのまま伝えて電話してみましょう。
宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応
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☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時
参考文献一覧
- 認知症初期集中支援チームについて(厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000035310.pdf
- 共生社会の実現を推進するための認知症基本法(令和5年法律第65号・厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82ab9328&dataType=0&pageNo=1
- 地域包括支援センター(宮崎市)https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/gurumin/center/
- 認知症地域支援(宮崎市)https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/gurumin/dementia/219608.html
- 宮崎市認知症初期集中支援チーム(一般財団法人弘潤会)https://www.koujunkai.jp/intensive
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監修:中田富久(認定作業療法士・OUR代表) 執筆:OUR訪問看護ステーション 看護・リハビリチーム