コラム一覧に戻る
ともにつくるケアノート— あなたらしさを支える訪問看護のかたち —

高次脳機能障害の遂行機能障害とは?段取りが組めなくなる症状を解説

「料理の手順がバラバラになってしまう」「何から手をつければいいか分からず、作業が止まってしまう」一つひとつの動作はできるのに、全体の流れがうまく組み立てられない。これは高次脳機能障害の遂行機能障害でよく見られる症状です。

この記事では、遂行機能障害とはどのような症状か、生活の中での具体的な現れ方と対応方法を解説します。

遂行機能障害とは、目標に向けて計画・実行・修正するプロセスがうまくいかなくなる症状です

厚生労働省・国立障害者リハビリテーションセンターの高次脳機能障害診断基準では、遂行機能障害は記憶障害・注意障害・社会的行動障害と並ぶ代表的な認知障害のひとつとされています。遂行機能とは、目的を設定し、計画を立て、実行し、結果を確認して必要なら修正するという一連の脳の働きを指します。

一つひとつの動作はできても、全体の手順を組み立てることが難しくなります

包丁を使う、鍋を火にかけるといった個別の動作自体はできても、「何を」「どの順番で」「どのタイミングで」行うかを組み立てることが難しくなります。そのため、料理、買い物、外出の準備、仕事の段取りなど、複数の手順を要する活動で困難が現れやすくなります。

「何をすればいいか分からない」という状態は、意欲の低下と誤解されやすい症状です

遂行機能障害があると、次に何をすべきか自分で判断できず、行動が止まってしまうことがあります。この様子は、周囲から見ると「やる気がない」「怠けている」と誤解されがちですが、実際には脳の機能的な問題によって「次の一手」が見えなくなっている状態です。

対応の基本は、手順を可視化し、一度に一つの指示にとどめることです

作業の手順を紙に書き出して順番に示す、チェックリストを使って一つずつ確認しながら進める、一度に複数の指示を出さず「まずこれをやりましょう」と一つずつ伝える、といった工夫が有効とされています。急かさず、本人のペースで一つずつ完了させることを大切にします。

見通しが立てにくいことへの不安が、意欲低下や苛立ちにつながることもあります

「うまくできない」という経験が積み重なると、新しいことへの挑戦を避けるようになったり、自信を失ったりすることがあります。失敗を責めるのではなく、できたことに目を向けて伝えることが、意欲を保つうえで大切な関わり方です。

訪問看護・リハビリでは、実生活に近い場面で遂行機能を評価し訓練します

遂行機能の評価には、遂行機能の行動評価法(BADS)など、日常生活に近い課題を用いた神経心理学的検査が使われます。リハビリでは、実際の調理や外出準備といった生活場面を通じて、手順を整理する練習を行うことがあります。OURでは、その方の自宅の環境や生活パターンに合わせて、具体的な手順の組み立て方を一緒に考えます。

よくある質問

遂行機能障害があると仕事に戻るのは難しいですか?

業務内容や症状の程度によります。手順が明確でルーティン化された業務であれば継続できることも多く、複雑な判断や段取りが必要な業務は調整が必要になることがあります。職場と相談しながら復帰の形を検討します。

本人に「手伝おうか」と声をかけるタイミングが分かりません。

本人が困っている様子(手が止まる、同じ動作を繰り返すなど)が見られたときに、「次は〇〇をしましょうか」と具体的に声をかけると、本人も受け入れやすくなります。

家族が先回りして全部やってしまうのは良くないですか?

できる部分まで手伝ってしまうと、本人の力を発揮する機会を奪い、かえって機能低下を早めることがあります。手順を示しながら、できるところは本人にやってもらうという関わり方が基本です。

遂行機能障害は改善しますか?

損傷の程度や部位、リハビリの取り組みによって経過は異なります。手順を整理する練習を重ねることで、生活上の対応力が高まることが期待できます。

まとめ

今日できる一歩:普段行っている家事や作業の手順を、簡単な箇条書きにして紙に書き出してみてください。手順を可視化することが、生活の中でできる最初の工夫になります。

宮崎市全域、国富町、高岡町、綾町対応

“あなたらしい”在宅生活を、24時間・365日サポートします

☎ 0985-77-8266受付時間:9時〜17時

参考文献一覧

  • 「高次脳機能障害」診断基準(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部、国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 高次脳機能障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)

次に読まれている記事

この記事を監修した人

OUR
TEAM

OUR訪問看護ステーション

看護・リハビリチーム

看護師7名・理学療法士1名・作業療法士3名 / 宮崎市

宮崎市を中心に24時間・365日の訪問看護を提供。在宅透析・人工呼吸器・CV管理などの高度医療処置から生活期リハビリまで対応。「あなたらしさをともにつくる」を理念に、認定作業療法士・中田富久が代表を務め、医師・ケアマネジャーと連携し利用者一人ひとりの在宅生活を支援している。帝人ファーマ「みんなの訪問看護アワード2026」大賞受賞。